巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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明け方のラブホテルにて

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「それはそうと、お上の方々の中では、六課にさっさと丸投げしてしまえ――なんて話も出てるみたいです。お手上げになるとすぐに誰かのせいにしたがる風潮。自分はあまり好きじゃありません」

 凡場はそう言って眉を潜ませた。彼なりに考えるところがあるのだろう。組織の人間として、組織を疑うのはよろしくないが、それくらいの反骨精神がないとノンキャリアは務まらないだろう。

「同感ね――。まさか、私達が今回の事件を解決できないとでも思っているのかしら? さっさと六課に丸投げとか、私のプライドが許さないんだけど」

 実際問題として、いまだにカップル連続殺人事件の犯人は捕まっていない。それらしい容疑者でさえ捜査線上には上がっていないのが現状。それでも亜紀が口早に吐き出した言葉は、いわば第一課をまとめる人間としてのプライドそのものだったのかもしれない。

 スクラップ……日々の坂署捜査第六課。問題を起こした人間ばかりで組織されている六課は、おおやけには存在していないことになっている。本署のほうではほとんど都市伝説扱いのようだし、日々の坂署では認識している署員は多いものの、同じ警察機構として認めている者は少ない。言わば日々の坂署において、第六課とは流刑島のようなもの。誰も近寄らないし、誰も関わらない。日々の坂署に存在するはずなのに、誰もが存在しないものとして扱っているといったところだ。

 ただ、何の意図もなく六課が存在しているというわけでもない。都市伝説であれ、秘密裏であれ、意図があるからこそ六課は存在する。本来ならば懲戒免職となってもおかしくないような人間ばかりが集められた第六課は、欠陥はあるものの上の連中が手放したくない優秀な人材を集めた部署――というのが有力な情報だった。

「相変わらずスクラップはお嫌いですか――。そこまで悪い連中じゃないし、進藤警部はキャリアアップして、いずれこっちを離れるんだから、もう少し友好的に……」

「――何か言った?」

 凡場の言葉はしっかりと聞こえていたが、あえて遮ってまで聞き返してやった。凡場は苦笑いを浮かべつつ「いえ、なにも」と一言。

 面倒ごとを六課に押し付けることで、完全なるスケープゴートとする。その考え方自体が亜紀は気に入らなかったが、まるで自分達には荷が重いと判断されたようで面白くなかった。どこのお偉い様が決定するのかは分からないが、一課から六課へと事件が丸投げされるのは、捜査一課の敗北宣言に等しいと言っても過言ではないだろう。

 全く見えてこない犯人像。増え続ける犠牲者。日々の坂市民から……そして、全国から向けられる不信の目。

「リア充爆発しろ、か……」

 亜紀はぽつりと呟くと、鑑識課が慌ただしく行き交う現場を見て、小さく溜め息を漏らした。

 現場には朝日が昇るまで赤色灯が踊っていたのだった。
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