24 / 95
明け方のラブホテルにて
5
しおりを挟む
「それはそうと、お上の方々の中では、六課にさっさと丸投げしてしまえ――なんて話も出てるみたいです。お手上げになるとすぐに誰かのせいにしたがる風潮。自分はあまり好きじゃありません」
凡場はそう言って眉を潜ませた。彼なりに考えるところがあるのだろう。組織の人間として、組織を疑うのはよろしくないが、それくらいの反骨精神がないとノンキャリアは務まらないだろう。
「同感ね――。まさか、私達が今回の事件を解決できないとでも思っているのかしら? さっさと六課に丸投げとか、私のプライドが許さないんだけど」
実際問題として、いまだにカップル連続殺人事件の犯人は捕まっていない。それらしい容疑者でさえ捜査線上には上がっていないのが現状。それでも亜紀が口早に吐き出した言葉は、いわば第一課をまとめる人間としてのプライドそのものだったのかもしれない。
スクラップ……日々の坂署捜査第六課。問題を起こした人間ばかりで組織されている六課は、おおやけには存在していないことになっている。本署のほうではほとんど都市伝説扱いのようだし、日々の坂署では認識している署員は多いものの、同じ警察機構として認めている者は少ない。言わば日々の坂署において、第六課とは流刑島のようなもの。誰も近寄らないし、誰も関わらない。日々の坂署に存在するはずなのに、誰もが存在しないものとして扱っているといったところだ。
ただ、何の意図もなく六課が存在しているというわけでもない。都市伝説であれ、秘密裏であれ、意図があるからこそ六課は存在する。本来ならば懲戒免職となってもおかしくないような人間ばかりが集められた第六課は、欠陥はあるものの上の連中が手放したくない優秀な人材を集めた部署――というのが有力な情報だった。
「相変わらずスクラップはお嫌いですか――。そこまで悪い連中じゃないし、進藤警部はキャリアアップして、いずれこっちを離れるんだから、もう少し友好的に……」
「――何か言った?」
凡場の言葉はしっかりと聞こえていたが、あえて遮ってまで聞き返してやった。凡場は苦笑いを浮かべつつ「いえ、なにも」と一言。
面倒ごとを六課に押し付けることで、完全なるスケープゴートとする。その考え方自体が亜紀は気に入らなかったが、まるで自分達には荷が重いと判断されたようで面白くなかった。どこのお偉い様が決定するのかは分からないが、一課から六課へと事件が丸投げされるのは、捜査一課の敗北宣言に等しいと言っても過言ではないだろう。
全く見えてこない犯人像。増え続ける犠牲者。日々の坂市民から……そして、全国から向けられる不信の目。
「リア充爆発しろ、か……」
亜紀はぽつりと呟くと、鑑識課が慌ただしく行き交う現場を見て、小さく溜め息を漏らした。
現場には朝日が昇るまで赤色灯が踊っていたのだった。
凡場はそう言って眉を潜ませた。彼なりに考えるところがあるのだろう。組織の人間として、組織を疑うのはよろしくないが、それくらいの反骨精神がないとノンキャリアは務まらないだろう。
「同感ね――。まさか、私達が今回の事件を解決できないとでも思っているのかしら? さっさと六課に丸投げとか、私のプライドが許さないんだけど」
実際問題として、いまだにカップル連続殺人事件の犯人は捕まっていない。それらしい容疑者でさえ捜査線上には上がっていないのが現状。それでも亜紀が口早に吐き出した言葉は、いわば第一課をまとめる人間としてのプライドそのものだったのかもしれない。
スクラップ……日々の坂署捜査第六課。問題を起こした人間ばかりで組織されている六課は、おおやけには存在していないことになっている。本署のほうではほとんど都市伝説扱いのようだし、日々の坂署では認識している署員は多いものの、同じ警察機構として認めている者は少ない。言わば日々の坂署において、第六課とは流刑島のようなもの。誰も近寄らないし、誰も関わらない。日々の坂署に存在するはずなのに、誰もが存在しないものとして扱っているといったところだ。
ただ、何の意図もなく六課が存在しているというわけでもない。都市伝説であれ、秘密裏であれ、意図があるからこそ六課は存在する。本来ならば懲戒免職となってもおかしくないような人間ばかりが集められた第六課は、欠陥はあるものの上の連中が手放したくない優秀な人材を集めた部署――というのが有力な情報だった。
「相変わらずスクラップはお嫌いですか――。そこまで悪い連中じゃないし、進藤警部はキャリアアップして、いずれこっちを離れるんだから、もう少し友好的に……」
「――何か言った?」
凡場の言葉はしっかりと聞こえていたが、あえて遮ってまで聞き返してやった。凡場は苦笑いを浮かべつつ「いえ、なにも」と一言。
面倒ごとを六課に押し付けることで、完全なるスケープゴートとする。その考え方自体が亜紀は気に入らなかったが、まるで自分達には荷が重いと判断されたようで面白くなかった。どこのお偉い様が決定するのかは分からないが、一課から六課へと事件が丸投げされるのは、捜査一課の敗北宣言に等しいと言っても過言ではないだろう。
全く見えてこない犯人像。増え続ける犠牲者。日々の坂市民から……そして、全国から向けられる不信の目。
「リア充爆発しろ、か……」
亜紀はぽつりと呟くと、鑑識課が慌ただしく行き交う現場を見て、小さく溜め息を漏らした。
現場には朝日が昇るまで赤色灯が踊っていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
7月は男子校の探偵少女
金時るるの
ミステリー
孤児院暮らしから一転、女であるにも関わらずなぜか全寮制の名門男子校に入学する事になったユーリ。
性別を隠しながらも初めての学園生活を満喫していたのもつかの間、とある出来事をきっかけに、ルームメイトに目を付けられて、厄介ごとを押し付けられる。
顔の塗りつぶされた肖像画。
完成しない彫刻作品。
ユーリが遭遇する謎の数々とその真相とは。
19世紀末。ヨーロッパのとある国を舞台にした日常系ミステリー。
(タイトルに※マークのついているエピソードは他キャラ視点です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる