55 / 95
すれ違う狂気
8
しおりを挟む
「大ヒントって言われてもねぇ……。捜査一課の皆様が身を粉にしても犯人の糸口さえ掴めていないのに、万年定時退社の俺達に何が分かるのかってことだよな」
田之上は煙草を地面に放り投げ、足で火を揉み消すと、けだるそうに欠伸をしてみせた。
「そうそう、これで事件を解決したとしても、どうせ手柄は一課のものだし。もう帰ってダラダラしようよぉ」
そう言いながら、鏡をバッグから取り出すと、自分の顔を角度を変えつつ確認する雅。化粧崩れがないか確認しているのだろうが、改めて女性とは大変だなと思う。
「確かに、二人の言うことにも一理ある。それは、警察のシステム不備とも言えるかもしれないね。でも、そもそもこれは田之上が買った喧嘩だろう? もう少し頭を使って考えてみてよ」
いよいよ愚痴が大半を占めてきた田之上と雅を諭すかのように言うと、桂は小さく溜め息を漏らしつつ続ける。
「とにかく、僕達次第で中畑という男の人生が大きく左右されるんだ。また捜査一課は冤罪を作り上げようとしているし、何よりも都合が悪くなった時、それを押し付けられるのは僕達なんだよ? そうなるのが嫌だから、例え一課の手柄になるとしてもやるんだよ。余計な火の粉が飛んでこないようにするためにもね」
警察の焦りが、ろくに証拠もないような一般人を犯人に仕立て上げようとしている。それは紛れもない事実であり、間違っていようものなら大問題だ。いや、中畑が犯人でないことは明白であり、すでに警察は大きな過ちを犯してしまったのかもしれない。
「さて、そろそろ次の現場に向かうとするかねぇ。問題のラブホテル――あそこに行けば、僕の推測の裏付けもできると思うんだ」
桂はそう言うと、軽くステップを踏みながら、しかも鼻歌まじりで覆面パトカーへと向かう。ボロボロの軽自動車であり、申し訳程度に赤色灯が助手席の足元に転がっているという質素なものである。
「桂の奴、完全にスイッチが入りやがったな。このままじゃ俺達の体がもたない。それに、もう昼飯時だからよ、どっかで飯を食って行こうぜ。堀口のおごりで」
腕時計に視線を落とすと、確かに昼飯時だった。そこで田之上にしれっとたかられていることに気づいた堀口。
「いやいや、自分のを買う分しか余裕がないですよ!」
残念ながらそれは事実であり、堀口は基本的に必要最低限のお金しか持ち歩かない。なんというか、余計なお金が入っていることが気持ち悪いのだ。
田之上は煙草を地面に放り投げ、足で火を揉み消すと、けだるそうに欠伸をしてみせた。
「そうそう、これで事件を解決したとしても、どうせ手柄は一課のものだし。もう帰ってダラダラしようよぉ」
そう言いながら、鏡をバッグから取り出すと、自分の顔を角度を変えつつ確認する雅。化粧崩れがないか確認しているのだろうが、改めて女性とは大変だなと思う。
「確かに、二人の言うことにも一理ある。それは、警察のシステム不備とも言えるかもしれないね。でも、そもそもこれは田之上が買った喧嘩だろう? もう少し頭を使って考えてみてよ」
いよいよ愚痴が大半を占めてきた田之上と雅を諭すかのように言うと、桂は小さく溜め息を漏らしつつ続ける。
「とにかく、僕達次第で中畑という男の人生が大きく左右されるんだ。また捜査一課は冤罪を作り上げようとしているし、何よりも都合が悪くなった時、それを押し付けられるのは僕達なんだよ? そうなるのが嫌だから、例え一課の手柄になるとしてもやるんだよ。余計な火の粉が飛んでこないようにするためにもね」
警察の焦りが、ろくに証拠もないような一般人を犯人に仕立て上げようとしている。それは紛れもない事実であり、間違っていようものなら大問題だ。いや、中畑が犯人でないことは明白であり、すでに警察は大きな過ちを犯してしまったのかもしれない。
「さて、そろそろ次の現場に向かうとするかねぇ。問題のラブホテル――あそこに行けば、僕の推測の裏付けもできると思うんだ」
桂はそう言うと、軽くステップを踏みながら、しかも鼻歌まじりで覆面パトカーへと向かう。ボロボロの軽自動車であり、申し訳程度に赤色灯が助手席の足元に転がっているという質素なものである。
「桂の奴、完全にスイッチが入りやがったな。このままじゃ俺達の体がもたない。それに、もう昼飯時だからよ、どっかで飯を食って行こうぜ。堀口のおごりで」
腕時計に視線を落とすと、確かに昼飯時だった。そこで田之上にしれっとたかられていることに気づいた堀口。
「いやいや、自分のを買う分しか余裕がないですよ!」
残念ながらそれは事実であり、堀口は基本的に必要最低限のお金しか持ち歩かない。なんというか、余計なお金が入っていることが気持ち悪いのだ。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
パクチーの王様 ~俺の弟と結婚しろと突然言われて、苦手なパクチー専門店で働いています~
菱沼あゆ
キャラ文芸
クリスマスイブの夜。
幼なじみの圭太に告白された直後にフラれるという奇異な体験をした芽以(めい)。
「家の都合で、お前とは結婚できなくなった。
だから、お前、俺の弟と結婚しろ」
え?
すみません。
もう一度言ってください。
圭太は今まで待たせた詫びに、自分の弟、逸人(はやと)と結婚しろと言う。
いや、全然待ってなかったんですけど……。
しかも、圭太以上にMr.パーフェクトな逸人は、突然、会社を辞め、パクチー専門店を開いているという。
ま、待ってくださいっ。
私、パクチーも貴方の弟さんも苦手なんですけどーっ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる