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迫る毒牙

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 被害者は曽我孝仁と笹野仁美。正確な年齢は覚えていなかったが、まだ若かったはずだ。実際に現場を見たわけではないが、現場は散々たるものだったらしい。

 これまでの被害者も酷い有様で発見されたが、今回の被害者は目を覆いたくなるような姿で発見されたそうだ。二人とも黒焦げになっているのは、これまでの事件と同じなのであるが、男性の遺体の口に、何かが詰め込まれていたらしい。なぜか、それだけは全く焼けておらず、男性が焼き殺されてから詰められたものだろうとのこと。細切れにされていたせいで、何の肉なのかは断定できないが、とにかく豚や牛などといった通常の食卓で見られるような肉ではなかったそうだ。後の調べで、それは被害者女性の子宮であることが判明。

 現場にはトレードマークとも言えるプレートも残されており、これまでの事件の犯人と同一であると捜査一課は判断を下したらしい。

 遺体はまだ司法解剖に回されている最中らしく、正確な死亡時刻や直接の死因などは調査中とのこと。恐らくは焼死で、死亡時刻は深夜となるのであろうが。

 今回も女性の遺体からは子宮が取り出され、また現場からは犯人のものと思われる精液も見つかった。女性は犯人に乱暴をされた後に殺害され、子宮を取り出されたようである。

 男性のほうは刃物で動きを封じられた後に焼死させられたのであろうとの見解が出ている。黒焦げになった遺体に、焼かれた様子のない子宮が詰め込まれていたということは、男性が絶命した後……それも、遺体の火が完全に消えてから、犯人の手によって口内に子宮が詰め込まれていたことになる。

 燃えた人の体が、どれだけの時間を経て黒焦げになるのかは知らないが、犯人は男性の遺体の火が消えるまで、その場でずっと待っていたと考えられる。基本的な手口は全く同じであるが、回数を重ねていくうちに、その残虐性が増しているような印象があった。

「全く……。犯人の奴もいい加減にしてくれねぇかなぁ。この事件が終わらない限り、おちおち眠れたもんじゃねぇ」

 田之上は眠いまぶたをこすりながら、マスコミ陣から見つからないように駐車場を遠回りして裏口から署内へと入る。

 少し気を利かせて、桂の手伝いをしてやろうなんて思ったのが間違いだった。おかげさまで昨夜はほとんど徹夜であり、家には風呂に入りに帰っただけである。それほどまでに、独身者のリストアップには時間を要していた。
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