巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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迫る毒牙

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「ちぃーす」

 六課へと入ると、そこにはすでに桂の姿があった。

「やぁ、おはよう。田之上」

 コーヒーメーカーからカップにコーヒーを注ぎつつ口を開く桂。何時間もかけて淹れられたコーヒーは、さぞ凝縮されていることであろう。

「お前、昨日は帰るとばかり思ったにドMか? 何連泊目だよ」

 田之上はそう言うと、長ソファーに腰をかけて煙草に火を点ける。一度家に帰って眠るのと、ここで寝て起きるのとでは、やはり大きな違いがある。家で寝たほうが、疲れが取れたような気がするから不思議だ。

「帰ろうとは思ったんだけどねぇ。また新しい犠牲者が出てしまったし、進藤警部の推測も間違っていたわけで。一刻も早く事件を解決しなければ、犠牲者が増える一方だと思ってさぁ」

 随分と濃いであろうコーヒーを飲み干すと、冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出す桂。彼がアルコールを口にしない光景というのは、実のところかなりレアだった。

 昨日は早くに……といっても日付は変わっていたものの、家に帰ることが出来た田之上。雅や堀口も一時的に帰宅したわけだが、桂だけは徹夜をしていたようだ。

「でも、ようやくリストアップ作業が終わったよ。これも、田之上達のお力添えがあったからだ。後は片っ端から事件当日のアリバイを洗えばいい」

 恐らく眠いのであろう。欠伸を必死に噛み殺しながら、桂は辞典ほどの厚みがある資料をデスクの上で整えた。

「まさか、警察関係の独身者一人ずつに、事件当時のアリバイを聞いて回るつもりかよ? そんなことしてたら、何年かかるか分からねぇぞ。あれだ桂。ひと段落したんなら寝ろ。な? お前、しばらく寝てないから変なテンションになってんだよ」

 堪ったものではない。本当に堪ったものではない。ここ数日、朝から晩までリストアップ作業にあたり、それがようやく終わったと思ったら、今度はリストアップした人間に事件当時のアリバイを聞いて回ろうというのだ。桂はナチュラルハイというやつにでもなっているのだろうか。

「時間はかかるかもしれないけど、これくらいしか犯人を絞り込む材料が無いんだよ。地道に聞き込みをして、犯人らしき人物を絞っていくしかないんだ。ちなみに、僕は正気だよ。ちょっとだけ眠いけどね」

 田之上はくわえた煙草を、思わず床に落としてしまいそうになった。正気で言っているのであればドMなんてものじゃない。

「そんなの、捜査員を総動員して取り組む仕事じゃねぇか。俺達だけでやれる仕事じゃねぇよ」
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