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迫る毒牙
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さすがは田之上と一緒に六課の古株をやっている雅である。その意見には田之上も同意であるし、むしろ先に田之上が口にしていたものと、ほとんど同じものだった。
「それができれば苦労はしないんだ。残念なことに六課の進言を一課が受け入れるとは思えない。一応、凡場君にもお願いしてみたけど、丁重にお断りされたよ。時間はかかるかもしれないけど、一人でも多くの対象者から効率よく聞き込みをする以外、楽をする手段はないってことだね」
桂はそう言って苦笑い。自然と溜め息が漏れてしまう田之上。
「勘弁してくれよ……。大体、女の子宮を取り出して、男の死体の口に詰め込むようなサイコなやつが、昭和の刑事みたいに足を使うだけの捜査法で見つかるかねぇ。靴の底を擦り減らすだけで褒められる時代じゃねぇんだしよ」
六課が手柄を立てたところで、それは全くの無意味に終わる。思わずそう付け足してやろうと思った田之上だが、それをなんとか飲み込んだ。それを自ら口にしてしまうと、本格的に仮病で休みたくなってしまっただろうから。
「最愛の人が殺される場面を見せつけられるなんて酷ですよね。同姓として同情しますよ」
「そうだよねぇ。子宮を切り取られるって、考えただけでも痛いんだけど……」
堀口が呟くと、雅が両腕をさすりながら身震いをした。
「なんにせよ、何もしなければ犠牲者がさらに増えるかもしれないんだ。どれだけ時間がかかろうが、どれだけ地道な作業であろうが、やらなくちゃいけないんだよね。まぁ、どれだけ上の人間が黙って目を瞑ってくれているかは分からないけどね」
桂の決意は固く、どれだけ愚痴を漏らそうが、方針の転換をするつもりはなさそうだ。六課は六課らしく、周囲から白い目で見られつつ、税金泥棒をしていればいいのに。
――リストアップした膨大な人数の警察関係者に、片っ端から事件当時のアリバイを聞いて回る。全員が当時の行動を覚えているわけでもないだろうし、証言の裏を取るにしても時間がかかる。今から効率よく聞き込みを行ったところで、犯人らしき人物が浮かび上がってくるのには数年を要することであろう。これだから地道な作業は嫌なのだ。
誰も桂の方針に賛成はしなかった。異議を唱えもしなかった。どちらかといえば熱心に事件を追っている様子の堀口でさえ、その表情にはわずかに苦笑いが浮かんでいた。
「それができれば苦労はしないんだ。残念なことに六課の進言を一課が受け入れるとは思えない。一応、凡場君にもお願いしてみたけど、丁重にお断りされたよ。時間はかかるかもしれないけど、一人でも多くの対象者から効率よく聞き込みをする以外、楽をする手段はないってことだね」
桂はそう言って苦笑い。自然と溜め息が漏れてしまう田之上。
「勘弁してくれよ……。大体、女の子宮を取り出して、男の死体の口に詰め込むようなサイコなやつが、昭和の刑事みたいに足を使うだけの捜査法で見つかるかねぇ。靴の底を擦り減らすだけで褒められる時代じゃねぇんだしよ」
六課が手柄を立てたところで、それは全くの無意味に終わる。思わずそう付け足してやろうと思った田之上だが、それをなんとか飲み込んだ。それを自ら口にしてしまうと、本格的に仮病で休みたくなってしまっただろうから。
「最愛の人が殺される場面を見せつけられるなんて酷ですよね。同姓として同情しますよ」
「そうだよねぇ。子宮を切り取られるって、考えただけでも痛いんだけど……」
堀口が呟くと、雅が両腕をさすりながら身震いをした。
「なんにせよ、何もしなければ犠牲者がさらに増えるかもしれないんだ。どれだけ時間がかかろうが、どれだけ地道な作業であろうが、やらなくちゃいけないんだよね。まぁ、どれだけ上の人間が黙って目を瞑ってくれているかは分からないけどね」
桂の決意は固く、どれだけ愚痴を漏らそうが、方針の転換をするつもりはなさそうだ。六課は六課らしく、周囲から白い目で見られつつ、税金泥棒をしていればいいのに。
――リストアップした膨大な人数の警察関係者に、片っ端から事件当時のアリバイを聞いて回る。全員が当時の行動を覚えているわけでもないだろうし、証言の裏を取るにしても時間がかかる。今から効率よく聞き込みを行ったところで、犯人らしき人物が浮かび上がってくるのには数年を要することであろう。これだから地道な作業は嫌なのだ。
誰も桂の方針に賛成はしなかった。異議を唱えもしなかった。どちらかといえば熱心に事件を追っている様子の堀口でさえ、その表情にはわずかに苦笑いが浮かんでいた。
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