巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

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はがれた化けの皮

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 これまでは発覚を恐れ、最大限の注意を払って犯行を繰り返してきたが、もはやその程度では気持ち良くなれないのである。もちろん、手口が大胆になればなるほど、犯行が表に露呈してしまう恐れがある。しかし、彼には確信があった。どれだけ大胆な行動に出ても、警察の目を欺ける自信もだ。

 気の早い下半身をいさめつつ、彼は車を近くの目立たぬ場所へと停める。

 廃屋はかなり昔から人の住まわぬ無人屋敷となっており、その不気味さから一時期心霊スポットのような扱いを受けていたらしく、中は荒れ放題である。ただ、流行りすたりというものがあるし、何よりも肝試しをするには建物自体が小さいためすっかり飽きられてしまい、いつしか廃屋の周りだけ時が止まったようになっていた。周辺の人間は、その外観の不気味さもあって、まず近寄らない。こんな夜遅くはなおさらだ。

 玄関の鍵は壊れているため、そのまま我が家のように玄関を開け放つと、犯行に必要な道具を廃屋の中に運び込んだ。真っ暗な廃屋の中で笑みを漏らす。

 もう少しで、例の快感を超える快感を味わうことができる。強要という形になってしまうが、嫌がる夫婦を脅し、目の前で無理矢理性行為にいたらせる。それはそれで妙な背徳感があるというか、想像しただけでゾクゾクとした。存分にそれを楽しんだ後は、妻のほうを犯して美味なる女の梨を食してやろう。メインディッシュである。

 彼が妄想の世界へと入り浸りつつあった時のことであった。

「あの、刑事さん……。言われた通り旦那を連れてきました」

 廃屋の外から女の声がした。随分とか細い声であったが、彼の耳が逃すわけがない。捜査協力のために、旦那さんを連れてどこどこの廃屋まで来てください――なんて無茶苦茶なお願いを、よくも聞いてくれたものだ。

 万が一にも人目につかぬように、裏口から声をかけるようにと、あらかじめ伝えておいた。律儀にも刑事さんの言うことを守って、裏口へと回ってくれたようだ。思わずスキップをしながら裏手に回る。

 さぁ、いよいよ始まるのだ。楽しい楽しい殺人劇が。主演、自分。監督、自分。脚本、自分。とある罪のない夫婦が性行為を強要され、挙げ句の果てに焼き殺されてしまう物語。いよいよ――開幕だ。

 彼は裏口へと歩み寄ると、ターゲットを招き入れるために、裏口をそっと開けた。もちろん、ニヤついた顔は隠して、いつも被っている仮面を装着する。真面目な刑事さん――まさか、カップル連続猟奇殺人鬼だなんて思えないほど、優しい優しい刑事さん。こちらが優位に立つまで、その仮面をしっかりと被っておかねばならない。
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