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はがれた化けの皮
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「夜分遅くに申し訳ありません。ご協力感謝します」
普段は滅多にしない敬礼なんてものをして、あくまでも真面目な刑事として夫婦を出迎えようとした。しかし、裏口を開けると同時にまばゆい光がいくつも点灯し、思わず光を遮ろうとした彼の腕が、何者かに強く掴まれる。
「いやいや、こちらこそ犯人逮捕にご協力ありがとうございます――ってか? まさか、こうも簡単に引っかかってくれるとはなぁ」
光の輪の向こうから聞こえた声。光を見ないようにして目をこらすと、そこにいたのは捜査第六課きっての問題児――田之上竜司だった。
何がどうなっているのかは分からないが、いつの間にか廃屋の周りには投光器が設置され、しかも数人の捜査員が事前に待機していたようである。
「申し訳ないけど、ちょっと泳いでもらったんだよねぇ。僕の中じゃ、君が犯人である可能性がかなり強かったからさぁ。そうしたら、この近所に住む夫婦にコンタクトを取ったなんて情報が入ったから、悪いけど先回りさせてもらったよぉ」
続いて光の輪の中から姿を現したのは桂だった。全く気付かなかったが、どうやら完全にマークされていたようだ。
しかし。しかしだ――。犯人は凡場透ということで意見が一致したのではなかったのか。これから逮捕に向けて動き出す予定ではなかったのか。
それを彼に伝えてきたのは、目の前で不気味な笑みを浮かべている田之上自身だった。
「マジ、この人が犯人だったの? ちょっと信じられないんだけど……」
「まぁ、お前がパトロンに体を張って手に入れてくれた解剖結果が決め手になったな」
最初から田之上の隣にいたのであろう。きっと、先ほどのか細い声も彼女のしわざだ。雅が汚れたものを見るような視線を向けてくる。もはや、それにさえ興奮してしまいそうな自分がいた。
「――あなた、まだ分かっていないの? スクラップの連中に嵌められたのよ。それを疑いもせずにノコノコ次の犯行に及ぶなんて、愚かの極みね」
少し遠巻きに状況を眺めているような立ち位置で腕を組んでいるのは、捜査一課の進藤警部だった。これだけの捜査員を動員したり、投光器を用意したりできたのは、彼女の協力があったからだろう。自分をマークしていた捜査員辺りも、きっと捜査一課から借り出された人足だったに違いない。
「ちなみに、君が付け狙っていた夫婦は捜査一課が保護したってさ。残念なことにここには来ないし、君が凶行に及ぶこともできない。観念するんだね」
桂の言葉に田之上が頷き、手錠を取り出した。そして、それをおもむろに彼の腕へとはめる。
「カップル連続猟奇殺人の容疑で逮捕だ。よくもまぁ、俺達の身近にいながらこんなことをしてくれたな……」
田之上は必要以上に顔を近づけくる。ガンを飛ばすとは、田之上のような仕草のことを指すのだろう。彼はなんだか妙に冷静だった。その態度が面白くなかったのか、田之上は改めて声を荒げる。
「なんか言ったらどうなんだ? 堀口よぉ!」
その言葉に彼――堀口誠はニタリと笑みを浮かべたのであった。
普段は滅多にしない敬礼なんてものをして、あくまでも真面目な刑事として夫婦を出迎えようとした。しかし、裏口を開けると同時にまばゆい光がいくつも点灯し、思わず光を遮ろうとした彼の腕が、何者かに強く掴まれる。
「いやいや、こちらこそ犯人逮捕にご協力ありがとうございます――ってか? まさか、こうも簡単に引っかかってくれるとはなぁ」
光の輪の向こうから聞こえた声。光を見ないようにして目をこらすと、そこにいたのは捜査第六課きっての問題児――田之上竜司だった。
何がどうなっているのかは分からないが、いつの間にか廃屋の周りには投光器が設置され、しかも数人の捜査員が事前に待機していたようである。
「申し訳ないけど、ちょっと泳いでもらったんだよねぇ。僕の中じゃ、君が犯人である可能性がかなり強かったからさぁ。そうしたら、この近所に住む夫婦にコンタクトを取ったなんて情報が入ったから、悪いけど先回りさせてもらったよぉ」
続いて光の輪の中から姿を現したのは桂だった。全く気付かなかったが、どうやら完全にマークされていたようだ。
しかし。しかしだ――。犯人は凡場透ということで意見が一致したのではなかったのか。これから逮捕に向けて動き出す予定ではなかったのか。
それを彼に伝えてきたのは、目の前で不気味な笑みを浮かべている田之上自身だった。
「マジ、この人が犯人だったの? ちょっと信じられないんだけど……」
「まぁ、お前がパトロンに体を張って手に入れてくれた解剖結果が決め手になったな」
最初から田之上の隣にいたのであろう。きっと、先ほどのか細い声も彼女のしわざだ。雅が汚れたものを見るような視線を向けてくる。もはや、それにさえ興奮してしまいそうな自分がいた。
「――あなた、まだ分かっていないの? スクラップの連中に嵌められたのよ。それを疑いもせずにノコノコ次の犯行に及ぶなんて、愚かの極みね」
少し遠巻きに状況を眺めているような立ち位置で腕を組んでいるのは、捜査一課の進藤警部だった。これだけの捜査員を動員したり、投光器を用意したりできたのは、彼女の協力があったからだろう。自分をマークしていた捜査員辺りも、きっと捜査一課から借り出された人足だったに違いない。
「ちなみに、君が付け狙っていた夫婦は捜査一課が保護したってさ。残念なことにここには来ないし、君が凶行に及ぶこともできない。観念するんだね」
桂の言葉に田之上が頷き、手錠を取り出した。そして、それをおもむろに彼の腕へとはめる。
「カップル連続猟奇殺人の容疑で逮捕だ。よくもまぁ、俺達の身近にいながらこんなことをしてくれたな……」
田之上は必要以上に顔を近づけくる。ガンを飛ばすとは、田之上のような仕草のことを指すのだろう。彼はなんだか妙に冷静だった。その態度が面白くなかったのか、田之上は改めて声を荒げる。
「なんか言ったらどうなんだ? 堀口よぉ!」
その言葉に彼――堀口誠はニタリと笑みを浮かべたのであった。
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