巣喰RAP【スクラップ】 ―日々の坂署捜査第六課―

鬼霧宗作

文字の大きさ
81 / 95
はがれた化けの皮

3

しおりを挟む
「夜分遅くに申し訳ありません。ご協力感謝します」

 普段は滅多にしない敬礼なんてものをして、あくまでも真面目な刑事として夫婦を出迎えようとした。しかし、裏口を開けると同時にまばゆい光がいくつも点灯し、思わず光を遮ろうとした彼の腕が、何者かに強く掴まれる。

「いやいや、こちらこそ犯人逮捕にご協力ありがとうございます――ってか? まさか、こうも簡単に引っかかってくれるとはなぁ」

 光の輪の向こうから聞こえた声。光を見ないようにして目をこらすと、そこにいたのは捜査第六課きっての問題児――田之上竜司だった。

 何がどうなっているのかは分からないが、いつの間にか廃屋の周りには投光器が設置され、しかも数人の捜査員が事前に待機していたようである。

「申し訳ないけど、ちょっと泳いでもらったんだよねぇ。僕の中じゃ、君が犯人である可能性がかなり強かったからさぁ。そうしたら、この近所に住む夫婦にコンタクトを取ったなんて情報が入ったから、悪いけど先回りさせてもらったよぉ」

 続いて光の輪の中から姿を現したのは桂だった。全く気付かなかったが、どうやら完全にマークされていたようだ。

 しかし。しかしだ――。ということで意見が一致したのではなかったのか。これから逮捕に向けて動き出す予定ではなかったのか。

 それを彼に伝えてきたのは、目の前で不気味な笑みを浮かべている田之上自身だった。

「マジ、この人が犯人だったの? ちょっと信じられないんだけど……」

「まぁ、お前がパトロンに体を張って手に入れてくれた解剖結果が決め手になったな」

 最初から田之上の隣にいたのであろう。きっと、先ほどのか細い声も彼女のしわざだ。雅が汚れたものを見るような視線を向けてくる。もはや、それにさえ興奮してしまいそうな自分がいた。

「――あなた、まだ分かっていないの? スクラップの連中に嵌められたのよ。それを疑いもせずにノコノコ次の犯行に及ぶなんて、愚かの極みね」

 少し遠巻きに状況を眺めているような立ち位置で腕を組んでいるのは、捜査一課の進藤警部だった。これだけの捜査員を動員したり、投光器を用意したりできたのは、彼女の協力があったからだろう。自分をマークしていた捜査員辺りも、きっと捜査一課から借り出された人足だったに違いない。

「ちなみに、君が付け狙っていた夫婦は捜査一課が保護したってさ。残念なことにここには来ないし、君が凶行に及ぶこともできない。観念するんだね」

 桂の言葉に田之上が頷き、手錠を取り出した。そして、それをおもむろに彼の腕へとはめる。

「カップル連続猟奇殺人の容疑で逮捕だ。よくもまぁ、俺達の身近にいながらこんなことをしてくれたな……」

 田之上は必要以上に顔を近づけくる。ガンを飛ばすとは、田之上のような仕草のことを指すのだろう。彼はなんだか妙に冷静だった。その態度が面白くなかったのか、田之上は改めて声を荒げる。

「なんか言ったらどうなんだ? 堀口よぉ!」

 その言葉に彼――はニタリと笑みを浮かべたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

7月は男子校の探偵少女

金時るるの
ミステリー
孤児院暮らしから一転、女であるにも関わらずなぜか全寮制の名門男子校に入学する事になったユーリ。 性別を隠しながらも初めての学園生活を満喫していたのもつかの間、とある出来事をきっかけに、ルームメイトに目を付けられて、厄介ごとを押し付けられる。 顔の塗りつぶされた肖像画。 完成しない彫刻作品。 ユーリが遭遇する謎の数々とその真相とは。 19世紀末。ヨーロッパのとある国を舞台にした日常系ミステリー。 (タイトルに※マークのついているエピソードは他キャラ視点です)

処理中です...