探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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2.長い夜の始まり

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「ちょっと、イッ君も何か言ってよ。もしくは、一緒に作業を手伝ってあげるとか」

 菱田と榎本達とやり取りを、少し離れたところで眺めていた女性陣と安楽。これからどうするべきか――という話し合いの場を食堂で設け、そのついでに簡単な夕食を済ませた。酒はあえて出していない。状況が状況だからと、菱田が地下室に置いてきたままになっている。酒がないことに文句の声が上がることはなかった。安楽はいまだに何かをぶつぶつ呟いていた。

「いやいや、外に出るって――雪山のペンションの話じゃねぇんだし。それこそ、チームを組んで外に出ようものなら、そのうちの誰かがはぐれたふりをして自分の頭を石で殴り、誰かに襲われたように見せかけたりするんだよ。だからチームで外に出るのはやめたほうがいい。絶対にやめたほうがいい」

 またなんの話か分からないのであるが、発作が出てしまっている安楽。榎本と細川は菱田がやろうとしていることに対して、全面的に反対しているようだし、せめて安楽だけでも一緒に行動させてやったほうがいい。しかし、そんな蘭の気遣いも、菱田が首を横に振ったことで無駄になる。

「いや、申し訳ないけど1人のほうが気が楽だ。君達は中で一緒にいればいい。そうすれば、俺が犯人に襲われることもない」

 その言い方に、やや声を震わせながら亜純が言う。こういう時、小柄なだけで小動物のように見えるのだから不思議だ。

「先輩、それってまるで、私達の中に――」

「いるでしょ、犯人。普通に考えて」

 真美子が遮った。いや、代弁したというべきか。朝からずっと崩れぬ化粧は、きっと何度も直してはいるのだろう。そんな真美子の発言を細川は鼻で笑う。

「いやいや、普通に考えてみろよ。神楽坂の悲鳴が聞こえた時、俺達はどこにいた? 俺、榎本、菱田さんと、そこの災厄コンビは地下室にいた」

 災厄コンビ――とは、間違いなく自分と安楽のことを指しているのであろう。その皮肉たっぷりの言い方に、思わず伝家の宝刀であるシャイニングウィザードが出そうになったが、ぐっと堪える。あの巨体に飛び膝蹴りは効きそうにない。しかし「じゃあ、女性陣はどこにいた?」と聞く細川の姿には変に腹が立つ。もし次があるならば、パトリオットミサイルを習得しておきたい。

「えっと、私と香純、それに天野さんと加能さんはみんなで食堂にいたよね」

 真美子が答えた。同じ大学であり、かつ近しい間柄だからこそ、英梨のことを天野、そして亜純のことを加能と呼ばれると新鮮に聞こえる。
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