探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

文字の大きさ
45 / 98
3.深まる謎と疑惑

3.深まる謎と疑惑 1

しおりを挟む
【1】

「電話は繋がらない。嵐のせいで船も出せない。なんか、本当にテンプレの推理小説みたいになってきたね」

 リネン室に向かう道中で英梨が呟いた。このテンプレのミステリを呼び寄せてしまったことに、多少なりとも責任を感じている蘭は、少しばかり気の利いたことを言ったつもりだった。

「でも、どんな三文小説でも、必ず最後には探偵が解決する。だから、この事件もきっと――」

 その探偵役が蘭の言葉を隣から喰った。

「いや、最近のは探偵そのものが犯人だったり、全員が死んでしまったあとに犯人がほくそ笑む――なんて結末の推理小説も増えてる。だから油断は禁物だ。もっと言ってしまえば、この状況で犯人を探し出そうなんて、次のターゲットは自分にして下さいと言っているようなものなんだ。いざとなった時、自分の身は自分で守ってくれよ」

 せっかく、少しでも英梨の不安を緩和できればと思ったが、安楽がそれを邪魔した。少しは気を遣えないのだろうか。

 外は相変わらずの嵐で薄暗いが、しかし時刻は7時を過ぎようとしていた。あの後、今後の方針を決めるということで食堂に集まったものの、菱田が示した指針は、嵐が止み、予定通り船が迎えに来るまで、可能な限りみんなでひとつの場所に集まっておく――というものだった。その意見に異論をとなえる者はいなかったが、しかし諸手を挙げて賛同する者もいなかった。起きていることが非現実的すぎて、頭の処理が追いつかない。重要な判断は他人任せにするのがもっとも簡単だ。

 もう一度、現場を調べておきたい。そう、安楽が言い出した――正確には蘭がそう言わせたのがついさっきのこと。危険を伴うかもしれないから、単独での行動は認めないと菱田が言い出したものだから、蘭が同行者として立候補した。その際、英梨もまた挙手したゆえに、こうして3人でリネン室へと向かうことになった。蘭は安楽の幼馴染であるし、例えジンクスに過ぎずとも、このような事態を引き起こした責任のようなものを感じていたから、こうして安楽と行動を共にするが、英梨はどんな気持ちで同行しようと考えたのか。そこまでほじくり返す気にはなれなかった。

 リネン室の前にたどり着くと、安楽がドアノブに手を伸ばし、そしてゆっくりと扉を開ける。そこにはすでに麗里の遺体がないとわかっているだろうに、随分と慎重だった。

「まずは、ざっと事件を振り返ってみようか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

死霊術士が暴れたり建国したりするお話

はくさい
ファンタジー
 多くの日本人が色々な能力を与えられて異世界に送りこまれ、死霊術士の能力を与えられた主人公が、魔物と戦ったり、冒険者と戦ったり、貴族と戦ったり、聖女と戦ったり、ドラゴンと戦ったり、勇者と戦ったり、魔王と戦ったり、建国したりしながらファンタジー異世界を生き抜いていくお話です。  ライバルは錬金術師です。  ヒロイン登場は遅めです。  少しでも面白いと思ってくださった方は、いいねいただけると嬉しいです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...