47 / 98
3.深まる謎と疑惑
3
しおりを挟む
安楽のぶつぶつと独り言を交えての推理が、いよいよ気持ち悪く見えたのか、英梨が蘭にだけ聞こえるように「この人……なんか怖いんだけど」と耳打ちしてくる。それに対して苦笑いを浮かべるしかなかった。
「――本当だね? なんせあれだ。次に殺されるのは俺かもしれないんだ。だって、こうして現場調べてるもん。犯人からしたら、さぞ俺が邪魔な存在になってんじゃないの? どの探偵小説でも、そういうやつがいるにも関わらず、自分の計画だけを頑なに実行する犯人ばかりだから、最終的に謎を暴かれんじゃねぇの? あの、国民的キッズアニメのバイキンもさ、アンパン本人じゃなくて、アンパンの顔作ってるおっさんを殺れば、簡単に勝てるんじゃねぇか? もっと頭使えばいいのにっ!」
このような時、安楽は一種のトランス状態に入っている。ゆえに、時に乱心したようなことを口にしたり、妄言を口にしたりする。だから周囲から気持ち悪がられてしまうのであるが、背に腹はかえられない。
「あの、誰も食堂から出ていません。これは間違いないと断言できるわ」
英梨がやや強めの口調で返すと、安楽は何度か頷きつつ「まぁ、やっぱり気になるのはピアノ線だよなぁ」と、独り言を漏らしつつ勝手口のほうへ。
勝手口を開けるためかドアノブを握ったが、しかし外から打ちつけられているせいか開かない。壁に足をかけて踏ん張る安楽。
「あ、開かないっ! そうか、外から板が打ちつけられているのか! 誰だっ! そんなことをしたのは! 俺かっ! あぁ、俺だ! もう、俺の馬鹿!」
はたから見ていて、安楽の推理を華麗だとか、格好いいだとか、知的だとか思う人はいるのだろうか。残念ながら気味が悪い。いいや、気持ち悪い。英梨がドン引きしているのが空気で分かる。
「とにかく、俺達のアリバイは完璧だ。だとしたら、誰がどうやって、彼女を殺した? やっぱりここに残されているピアノ線がなにかしら関係してくるんじゃ――」
安楽はそこで考え込むような仕草をしたが、自分を納得させるかのように「とりあえずなんらかの仕掛けをなんらかして、やんわりと被害者を殺したってことにしておくか」と頷く。その、なんらか――の部分が大事なのではないかと思うのは蘭だけか。
「次は第二の現場となった部屋か――。いや、正直あそこには入りたくないな。うん、血まみれだったから。外から見ただけでも血まみれだったし、ちょっと中を調べるってのはねぇ」
ちらりと安楽が見てきたので「私だって友達が惨殺されたところになんて入りたくないからね」と釘を刺しておいた。それにくわえて、みずから口にしたことで思い知ってしまった。亜純が死んでしまったという事実。こういう時、人間というものは意外と涙が出ないものだなと実感していた。今はそれよりも、本能が生存を優先させようとしているのかもしれない。
「――本当だね? なんせあれだ。次に殺されるのは俺かもしれないんだ。だって、こうして現場調べてるもん。犯人からしたら、さぞ俺が邪魔な存在になってんじゃないの? どの探偵小説でも、そういうやつがいるにも関わらず、自分の計画だけを頑なに実行する犯人ばかりだから、最終的に謎を暴かれんじゃねぇの? あの、国民的キッズアニメのバイキンもさ、アンパン本人じゃなくて、アンパンの顔作ってるおっさんを殺れば、簡単に勝てるんじゃねぇか? もっと頭使えばいいのにっ!」
このような時、安楽は一種のトランス状態に入っている。ゆえに、時に乱心したようなことを口にしたり、妄言を口にしたりする。だから周囲から気持ち悪がられてしまうのであるが、背に腹はかえられない。
「あの、誰も食堂から出ていません。これは間違いないと断言できるわ」
英梨がやや強めの口調で返すと、安楽は何度か頷きつつ「まぁ、やっぱり気になるのはピアノ線だよなぁ」と、独り言を漏らしつつ勝手口のほうへ。
勝手口を開けるためかドアノブを握ったが、しかし外から打ちつけられているせいか開かない。壁に足をかけて踏ん張る安楽。
「あ、開かないっ! そうか、外から板が打ちつけられているのか! 誰だっ! そんなことをしたのは! 俺かっ! あぁ、俺だ! もう、俺の馬鹿!」
はたから見ていて、安楽の推理を華麗だとか、格好いいだとか、知的だとか思う人はいるのだろうか。残念ながら気味が悪い。いいや、気持ち悪い。英梨がドン引きしているのが空気で分かる。
「とにかく、俺達のアリバイは完璧だ。だとしたら、誰がどうやって、彼女を殺した? やっぱりここに残されているピアノ線がなにかしら関係してくるんじゃ――」
安楽はそこで考え込むような仕草をしたが、自分を納得させるかのように「とりあえずなんらかの仕掛けをなんらかして、やんわりと被害者を殺したってことにしておくか」と頷く。その、なんらか――の部分が大事なのではないかと思うのは蘭だけか。
「次は第二の現場となった部屋か――。いや、正直あそこには入りたくないな。うん、血まみれだったから。外から見ただけでも血まみれだったし、ちょっと中を調べるってのはねぇ」
ちらりと安楽が見てきたので「私だって友達が惨殺されたところになんて入りたくないからね」と釘を刺しておいた。それにくわえて、みずから口にしたことで思い知ってしまった。亜純が死んでしまったという事実。こういう時、人間というものは意外と涙が出ないものだなと実感していた。今はそれよりも、本能が生存を優先させようとしているのかもしれない。
1
あなたにおすすめの小説
死霊術士が暴れたり建国したりするお話
はくさい
ファンタジー
多くの日本人が色々な能力を与えられて異世界に送りこまれ、死霊術士の能力を与えられた主人公が、魔物と戦ったり、冒険者と戦ったり、貴族と戦ったり、聖女と戦ったり、ドラゴンと戦ったり、勇者と戦ったり、魔王と戦ったり、建国したりしながらファンタジー異世界を生き抜いていくお話です。
ライバルは錬金術師です。
ヒロイン登場は遅めです。
少しでも面白いと思ってくださった方は、いいねいただけると嬉しいです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ
ひるま(マテチ)
SF
空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。
それは王位継承戦に持ち出されたチェスゲームの中で、駒が取られると同事に現れたモンスターをモチーフとしたロボット兵”盤上戦騎”またの名を”ディザスター”と呼ばれる者。
彼ら盤上戦騎たちはレーダーにもカメラにも映らない、さらに人の記憶からもすぐさま消え去ってしまう、もはや反則レベル。
チェスの駒のマスターを望まれた“鈴木くれは”だったが、彼女は戦わずにただ傍観するのみ。
だけど、兵士の駒"ベルタ”のマスターとなり戦場へと赴いたのは、彼女の想い人であり幼馴染みの高砂・飛遊午。
異世界から来た連中のために戦えないくれは。
一方、戦う飛遊午。
ふたりの、それぞれの想いは交錯するのか・・・。
*この作品は、「小説家になろう」でも同時連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる