探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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3.深まる謎と疑惑

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 英梨の答えに、安楽は分かりやすく「うーん」と唸ってみせる。

「だとしたら、犯人の動機はなんなんだ? 最初に殺害されたのは神楽坂さん。安曇野大学側の人間。そして次に殺されたのが加能さん。蘭と同じ大学の人間。お互いの大学のミス研はSNSで繋がっている程度で、面識はなかった。だとしたら、なぜ面識のない2人が立て続けに殺されなければならなかったんだ?」

 言われてみればその通りである。もちろん、中には無差別で殺人を犯すような人もいるだろう。しかし、もしそのような猟奇的な思考を持っている人間がいたとして、わざわざこんな孤島で殺人を繰り返すだろうか。ただ人を殺したいのであれば、疑いがかけられる心配の薄い、まるで見知らぬ人を、通り魔的に殺害したほうが良さそうだが。

「蘭、もしかして、このメンバーの中に、生き別れの兄弟がいる人とかいないだろうね? 確率的には低いけど、ミステリの動機としては良く見るから」

 あぁ、またちょっと変な方向にスイッチが入ってしまっている。こればかりは仕方がないのかもしれないが、いちいち脱線されていたらたまらない。

「いや、イッ君がどうしても気になるなら、榎本さん達にも聞いてみるけど」

 少なくとも、こちらの大学側に、そんな経歴を持っている人はいない。むろん、蘭の知る限りということになってはしまうが、さすがにそれはないだろう。

「あぁ、あとでいいから頼む。さて、動機については後に回すとして、第二の事件で解決しておくべき問題がある」

 安楽はそう言うと「部屋は同じ構造のようだから、蘭の部屋で話そう」と、リネン室を後にする。いくら幼馴染とはいえ、そして間借りしている部屋だとはいえ、乙女の部屋に入ろうとするとは何事か。

「……密室よね?」

 廊下に出るなり英梨が問い、安楽は満足そうに頷いてみせた。

「ご名答。状況的に見てみれば分かるんだが、あの部屋は間違いなく密室だったんだ。まぁ、余計な前提が加わってくれたから、結果的に密室になっただけだろうけど」

 断りもなにもなく、当たり前のように部屋へと入ろうとする安楽。地下にもっとも近い部屋だから覚えやすいというのもあるのだろう。それにしたって、検証の場として使っていいなんて言っていないし、断りくらい入れて欲しいものだ。

「まず、前提から。菱田さんの提案で、事件が起きる前に俺は彼と部屋の窓の外側に板を打ち付ける作業を行った。手分けして回るのも危険だったから、2人で一緒に作業したんだ。その時、間違いなく現場となった部屋の板も打ち付けた。俺自身が打ち付けたんだから間違いない。そして、彼女の様子を見に行くために部屋の外に向かった時は、確かに板は打ち付けられたままだった。それにくわえて窓には内側から鍵がかかっていたんだ。つまり、外から部屋に出入りすることは不可能だ」
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