探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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3.深まる謎と疑惑

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「力を合わせてどうすんだ? その団結したメンバーの中に人殺しがいるのに? しかも、第一の事件と第二の事件において、巧妙に人を殺した狡猾なやつが混じってるんだ。それなのに、みんな仲良しこよしをするのか?」

 言い返す言葉が見当たらないのか、そこで菱田が言葉に詰まった。それを見た細川は鼻で笑うと、改めて廊下のほうへと向き直る。そして、安楽のほうをちらりと見ると、声のトーンを戻しながら言った。

「ご覧の通り、俺にはもう戻れる場所がない。それでも、引き留めてくれてありがとう。まぁ、部屋には鍵がかかるし、そうそうベッタベタな展開にもならないはずだ。だから、俺は部屋にこもるよ。ただ、安楽君――もし、俺でもなにか力になれることがあったら遠慮なく言ってくれ。君の申し出ならば、俺も応えるからさ」

 その言葉は素直な細川の気持ちなのか。それとも菱田に対する当てつけなのか。はたまた細川としては味方を作っておきたかったのか。安楽に対してそう言い残すと、細川は廊下のほうへと姿を消した。

 しんと静まり返ったエントランス。自然と蘭達から向けられた視線に「まぁ、意見がくいちがうことくらいあるさ」とだけ漏らし、菱田は食堂へと戻った。続いて食堂に戻ると、テーブルの上にスープと焼いたバケットが並べられていた。スープはカップに入っているし、バケットにいたっては、キッチンペーパーの上に並べられているだけだが、朝食としては上等だ。しっかりと細川の分まで用意されているのが、なんだか寂しく見えた。

 真美子と香純は食堂の隅に立って、心配そうに菱田の言葉を待っているようだった。榎本だけは着席し、バケットにバターを塗って頬張っていた。バケットなんて地下になかったから、誰かがあらかじめ買っておいたものなのだろう。

「食える時に食っておいたほうがいい。スープも冷めたらまずくなるからな」

 一口を飲み込んだ榎本は、蘭達の姿を見るなりそう一言。彼も細川と同様に、いいや、ここにいる誰よりも亜純達の死体を目にすることになったであろうに、食事はしっかりと食べられるらしい。もしかして、彼女達の遺体をあんな風にしたのは――というところまで考えて、蘭は首を横に振った。

「――食べないのか? このスープなんて、限られた食材だけで作られたはずなのに、店で出てくるレベルだぞ」

 スープを口に運び、それを褒めちぎる榎本。その時に気づいてしまった。香純の目が真っ赤になってしまっていることに。少しでも榎本のことを疑った自分が恥ずかしくなった。彼は行動は、彼女達を気遣ってのものなのだ。
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