探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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3.深まる謎と疑惑

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「ちょうど腹が減っていたところなんだ。いやいや、なかなかに気が利く方がいるじゃないか」

 それが彼の本心なのか、それとも彼女達のことを気遣ってなのか。どちらなのかは分からないが、安楽は手近にあった椅子に座る。その様子を横目で見ながら、榎本はやや声をひそめて真美子達へと言った。

「とりあえずみんなで食べよう。糸井田、小川。細川にもきっと悪気はないんだと思う。許してやってくれ」

 細川は部屋にこもり、残された重たい空気は榎本によって緩和された。そして、取り残されてしまったは菱田だった。菱田は咳払いをひとつすると、やや気まずそうに一番端っこの席に座った。それを見た真美子と香純も着席。最後に残った蘭と英梨が着席して、予定にはなかった朝食会が始まった。

 特になにかを話すこともなく、淡々と食事をする。スープはまだ暖かく、限られた材料で作られた割に美味しかった。優しい味とでも言おうか。バケットの焼き加減も程よい。久方ぶりにまともな朝食を食べた気がする。

「糸井田。ちょっといいか――」

 食事がひと段落ついたところで、榎本が真美子に声をかけた。たまたま近くにいた蘭だから聞こえた程度の抑えた声でだ。

「なに?」

 榎本に合わせて小声で問う真美子。榎本が菱田のことを気にしている様子から、どうやら彼に聞かれたくない話のようだった。

「後で朝食を細川のところに持って行ってやりたいんだ。用意してもらってもいいか?」

 もし、今の菱田がそんなことを知ったら、頭ごなしに怒鳴られるだけだ。明らかに菱田のことを避けた会話なのであろう。菱田とて良かれと思って仕切ろうとしているのだろうが、細川と口論したりと空回りしているような気がする。

「でも、細川が食べたくないって言ったのは間違いないし、持って行っても食べてくれないかも」

 今さらながらに気づいたのだが、真美子はばっちり化粧をしているようだった。いや、よくよく見回してみれば、香純も化粧をしているようだった。いつの間に化粧をしてきたのか。

「いや、俺達がすでに食べるから、毒なんて入っていないことを証明できてるだろ? それに、いくら鍵がかかるといっても、この状況で1人ってのは、色々とリスキーな気がするから、ちょっと説得したいんだ。それに、このスープ、本当に美味かったから」

 その言葉に真美子はくすりと笑う。
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