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3.深まる謎と疑惑
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「榎本って、いつも眉間にシワを寄せて、難しそうな顔してるけど、根は優しいよね」
すると、榎本はそれを鼻で笑って「今さら気づいたのか。僕は昔からそうだぞ」と、今度はうっすらと笑みを浮かべた。
「さて、問題はどんな理由をつけて細川のところに向かうか――だが」
榎本と真美子の会話を盗み聞きしているような形になっている蘭だったが、思わず真美子と目が合ってしまう。
「あ……朝方ばたばたしてたし、御幸さんと天野さんって、まだメイクできてないよね? だったら、榎本も一緒について行くって形で出たら自然じゃない?」
真美子につられるようにして、榎本の視線も蘭に集められる。ちょうど自分がすっぴんのままだったことが気になっていたわけだが、タイミングがあまりにも良すぎた。
「さっき、糸井田達もメイクをしに2人で部屋に戻ったんだったな。うん、単独で行動することにはならないし、俺がどちらかに頼まれたという形にすれば、自然とここを離れる口実になるか。よし、彼に提案してこよう。そっちは準備を頼む」
お互い、このように口裏を合わせないと食堂を出られないというのは不便だが、しかし全員で集まっていればリスクを減らせるというのも事実だ。手間ではあるが、菱田とてやりたくてやっているわけではない。彼のことを邪険にするのは違う気がする。
「分かった。それじゃあ、準備するね」
真美子がその場を離れると、少し離れた席から代わりに香純がやってきた。さっきまでは英梨と話をしていたようだが。
「あの、私達――これからどうなるんでしょうね?」
漠然とした不安。本人でさえ他人に説明するのは難しい――そんな、あまりにも漠然とした不安感が香純から漂ってくる。迎えが来るまで日にちがあるし、その日になっても嵐が収まらなければ迎えは来ないかもしれない。彼女にとっては、きっと拠り所となっていたであろう麗里が死んでしまったから、どうしていいのか分からないのであろう。
「私がイッ君……あ、安楽と一緒にいると事件に巻き込まれるって話はしたと思うけど、その話には続きがあったりするんだよね」
蘭はバケットにバターを塗る安楽のほうへと視線をやる。バターナイフにバターを乗せ、軽く伸ばすと、新たにひとかけのバターを乗せる。そしてまたバケットに伸ばす。
「それは、こうして私がここにいるってこと。彼、事件に巻き込まれる自分の体質は分かってて、だから好きでもないのに探偵小説とか推理小説とか読み漁ってね。その知識だけで事件を何度か解決に導いているのよ」
すると、榎本はそれを鼻で笑って「今さら気づいたのか。僕は昔からそうだぞ」と、今度はうっすらと笑みを浮かべた。
「さて、問題はどんな理由をつけて細川のところに向かうか――だが」
榎本と真美子の会話を盗み聞きしているような形になっている蘭だったが、思わず真美子と目が合ってしまう。
「あ……朝方ばたばたしてたし、御幸さんと天野さんって、まだメイクできてないよね? だったら、榎本も一緒について行くって形で出たら自然じゃない?」
真美子につられるようにして、榎本の視線も蘭に集められる。ちょうど自分がすっぴんのままだったことが気になっていたわけだが、タイミングがあまりにも良すぎた。
「さっき、糸井田達もメイクをしに2人で部屋に戻ったんだったな。うん、単独で行動することにはならないし、俺がどちらかに頼まれたという形にすれば、自然とここを離れる口実になるか。よし、彼に提案してこよう。そっちは準備を頼む」
お互い、このように口裏を合わせないと食堂を出られないというのは不便だが、しかし全員で集まっていればリスクを減らせるというのも事実だ。手間ではあるが、菱田とてやりたくてやっているわけではない。彼のことを邪険にするのは違う気がする。
「分かった。それじゃあ、準備するね」
真美子がその場を離れると、少し離れた席から代わりに香純がやってきた。さっきまでは英梨と話をしていたようだが。
「あの、私達――これからどうなるんでしょうね?」
漠然とした不安。本人でさえ他人に説明するのは難しい――そんな、あまりにも漠然とした不安感が香純から漂ってくる。迎えが来るまで日にちがあるし、その日になっても嵐が収まらなければ迎えは来ないかもしれない。彼女にとっては、きっと拠り所となっていたであろう麗里が死んでしまったから、どうしていいのか分からないのであろう。
「私がイッ君……あ、安楽と一緒にいると事件に巻き込まれるって話はしたと思うけど、その話には続きがあったりするんだよね」
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