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3.深まる謎と疑惑
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幼い頃の誘拐事件は、彼の地頭が良かったおかげで解決できたし、その後の窃盗事件については、すっかり推理小説マニアとなっていた彼の知識が、事件を解決に導いた。他の事件だってそう。彼は巻き込まれてしまった自分の体質を呪いながらも、なんとか事件を解決へと導く。
「えっ――あの人が。その、あんまり頼りにはならなそうだけど」
香純は外見よりも内面で人を見るのか。確かに、頼りにならない時はとことんならないし、いざとなっても文句や愚痴混じりで事件を解決しようとするのだから、決して格好のいいものではない。
「小説とかドラマに出てくる探偵とは別物だからね。必死になって、なんとか事件を解決するっていうか、いつもギリギリの一杯一杯なんだよ」
ぼんやりと眺める蘭の視線の先では、バターナイフにバターが乗せられ、それが伸ばされ、またひとかけのバターがバターナイフに――。
「ちょっとそこ! バター塗りすぎだろ! 高血圧になる! 高血圧に!」
延々とバケットにバターを塗り続ける安楽に、思わず立ち上がって注意する蘭。食堂の視線を一同に集めてしまった。
「――そんな細かいことを言うな。頭を回転させるには脂肪分が必要なんだよ。脂肪分が。その、主にトランス脂肪酸的なやつが」
「それを言うなら糖分じゃないの? 糖分」
蘭の言葉は聞こえていないとばかりにバケットを頬張ってしまった安楽。それを見ていた菱田が吹き出した。笑った彼を見たのは久方ぶりではないか。
「悪い、不謹慎なのは分かっているけど、笑ってしまった。君達は本当に面白いコンビだな」
どうやら、安楽と蘭のやり取りが面白かったらしい。笑わせようとしてやったわけではないから、なんだか恥ずかしい。
「別に笑うことが不謹慎というわけじゃないさ。それよりも空気がギスギスするほうが良くないと思う。あなたは良くやってくれているとは思うが、もう少し肩の力を抜いたほうがいい」
榎本がフォローを入れたところで、菱田もようやく冷静になれたようだった。ややうつむくと「あぁ、そうだな」とこぼしてから続ける。
「みんな、すまない。少しばかり自己中心的に物事を見ていたようだ。変な空気にして申し訳なかったよ」
菱田が頭を下げる。どうやら、蘭と安楽の漫才もどきから、場の空気が変わってくれたようだ。そこに榎本がすかさず続ける。
「さて、少し和やかになったところで、こちらのお嬢さん方のお色直しをしに、少し僕達は離れるよ」
菱田にはすでに了解をとっていたのであろう。それでも「気をつけて行ってきてくれ」との言葉まで引き出せたのは、蘭と安楽の掛け合いがあったからかもしれない。バターは世界すらをも救う。
「えっ――あの人が。その、あんまり頼りにはならなそうだけど」
香純は外見よりも内面で人を見るのか。確かに、頼りにならない時はとことんならないし、いざとなっても文句や愚痴混じりで事件を解決しようとするのだから、決して格好のいいものではない。
「小説とかドラマに出てくる探偵とは別物だからね。必死になって、なんとか事件を解決するっていうか、いつもギリギリの一杯一杯なんだよ」
ぼんやりと眺める蘭の視線の先では、バターナイフにバターが乗せられ、それが伸ばされ、またひとかけのバターがバターナイフに――。
「ちょっとそこ! バター塗りすぎだろ! 高血圧になる! 高血圧に!」
延々とバケットにバターを塗り続ける安楽に、思わず立ち上がって注意する蘭。食堂の視線を一同に集めてしまった。
「――そんな細かいことを言うな。頭を回転させるには脂肪分が必要なんだよ。脂肪分が。その、主にトランス脂肪酸的なやつが」
「それを言うなら糖分じゃないの? 糖分」
蘭の言葉は聞こえていないとばかりにバケットを頬張ってしまった安楽。それを見ていた菱田が吹き出した。笑った彼を見たのは久方ぶりではないか。
「悪い、不謹慎なのは分かっているけど、笑ってしまった。君達は本当に面白いコンビだな」
どうやら、安楽と蘭のやり取りが面白かったらしい。笑わせようとしてやったわけではないから、なんだか恥ずかしい。
「別に笑うことが不謹慎というわけじゃないさ。それよりも空気がギスギスするほうが良くないと思う。あなたは良くやってくれているとは思うが、もう少し肩の力を抜いたほうがいい」
榎本がフォローを入れたところで、菱田もようやく冷静になれたようだった。ややうつむくと「あぁ、そうだな」とこぼしてから続ける。
「みんな、すまない。少しばかり自己中心的に物事を見ていたようだ。変な空気にして申し訳なかったよ」
菱田が頭を下げる。どうやら、蘭と安楽の漫才もどきから、場の空気が変わってくれたようだ。そこに榎本がすかさず続ける。
「さて、少し和やかになったところで、こちらのお嬢さん方のお色直しをしに、少し僕達は離れるよ」
菱田にはすでに了解をとっていたのであろう。それでも「気をつけて行ってきてくれ」との言葉まで引き出せたのは、蘭と安楽の掛け合いがあったからかもしれない。バターは世界すらをも救う。
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