探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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4.この際、探偵は誰でもいい

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第一の事件。あの時は麗里を除く全員にアリバイがあった。だからこそ不可能犯罪というか、誰にも実行できなかった事件ということになる。

「確かに、俺達全員にアリバイがあった。そこで、俺も考えたんだが――もしかして、自動的に彼女を殺すような罠が、あのリネン室には仕組まれていたんじゃないだろうか?」

 榎本ばかりに格好はつけさせまいとばかりに、菱田が意見をする。それに頷きつつも、しかし最終的には否定する形になる榎本。

「ナタに結び付けられたピアノ線、その先は建て付けの緩い扉に繋がっていた。挙句の果てに、扉は嵐のせいで勝手に開くようになっていた。これらの条件だけを見ると、ピアノ線と勝手に開いてしまう扉を利用して、何かしらの仕掛けが作れるように思えてしまう。でも、よくよく考えてみると、これらにはいくつかの条件が必要になってくる。第一に、扉の建て付けの問題。もし、立て付けの悪い扉を動力にするのであれば、犯人は事前に勝手口の扉の建て付けが悪いことを知っておく必要があった。それに加えて、天候は必ず嵐で風が吹いていなければならない。これらの条件を満たすのは、普通に考えて難しいんじゃないだろうか? あまりにもご都合主義だと思うんだ」

 勝手口の扉の建て付けが悪かったのも、風が吹き荒れる嵐となったのも、たまたまの偶然であって必然ではなかった。それを頼りに自動的に人を殺す装置なんて作れるわけがない。

「じゃあ、ナタに意味深に結びつけられていたピアノ線は――。あれこそ、犯人がなにかしらをした証拠になるんじゃないの?」

 そこで口を挟んだのは真美子だった。

「そう思わせることが犯人の狙いだったとしたら? アリバイのある人間が、なにかしらの仕掛けを施して神楽坂を殺した。そう思い込ませるために、意味ありげにピアノ線でナタと勝手口を繋いだんだとしたら?」

 人間は意味のないことを嫌う。だから、そこに意味をつけたがる。特に、人が殺された現場に残された意味深な痕跡には、なにかしらの意味を見出したくなるだろう。

「ここに集まるのは、ミス研の人間ばかり。それくらいは事前に知ることができたはずだ。だから、あそこで、それっぽい小道具……ピアノ線や建て付けの悪い扉を見た時点で、なにかしらの仕掛けがあると勘ぐってしまったわけか」

 菱田がぽつりと漏らすと、榎本が力強く頷いた。

「えっと、私達全員にはアリバイがあった。でも、仕掛けなどを施して、麗里が遠隔で殺害されたわけではない。となると――結局、私達には誰一人として麗里を殺せなかったってことにならない?」
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