探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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4.この際、探偵は誰でもいい

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 状況を整理したいのか、妙に口調がゆっくりな真美子。隣にいる香純は真美子に合わせて頷くだけだ。ここに来てから、ほとんど言葉を交わしていないし、本人も言葉を発していないのではないか。いや、そんなことはないのだろうが、それくらいに香純の影が薄く思えた。

「いるじゃないか……たった1人だけ」

 榎本はここぞとばかりに言葉を漏らし、そして何事もなかったかのように「さてと」と話を次に移した。

「可能性という意味なら、1人だけじゃないと思うけどなぁ」

 近くにいる蘭にしか聞こえないくらいの声で呟く安楽。

「……言いたいことがあるならはっきりと言いなさいよ」

 まるで蘭に代弁を頼んでいるようなら態度に、思わず声を荒げてしまった蘭。榎本が咳払いをしたことにより、なんとなく話が流れてしまった。

「それじゃあ、第二の事件について考えてみようか。現場となったのは――加能亜純さんの部屋だった。扉は内側から施錠されており、窓にいたっては鍵がかかっていたことに加えて、さらにその外から板が打ち付けられていた。考えるまでもなく密室だったわけだ。この、一見して不可能に見える犯行なんだが、ある人物からすれば、さほど密室を作り上げること自体は難しくなかったはずなんだ。そして、その人物は、第一の事件で神楽坂を殺害できた人物と同一人物ということになる」

 榎本の中ではすでに事件が完結してしまっているのだろう。こちらの理解が追いつく前に、次へ次へと進まれてしまうものだから、頭がこんがらがってきた。

「ちょっと待って。密室を作り上げるのは難しくない――なんて言うけど、だったら実際、どうやって密室を作り上げたの?」

 英梨の反論は、おおよそ想定の範囲だったのであろう。眼鏡のブリッジを指で押し上げると、榎本は言い放った。

「そんなの簡単さ。犯人は部屋が密室となる前から部屋の中に潜んでいただけなんだ」

 自信有りげに放たれた榎本の決定打であったが、ある意味それは拍子抜けの推理だった。

「ここの各部屋は、中からツマミを回して鍵をかけるタイプで、外から鍵をかける手段はない。部屋割りを決めて、それぞれが部屋に向かった時、当たり前だけど部屋の鍵は開いていたはずだ。だから、それ以前に部屋に入り、潜むことは充分に可能だ。後は目的の相手――加能さんを殺害すれば、密室殺人現場のできあがりだ」

 そこですかさず手を挙げたのは菱田だった。安楽は首を傾げたりはするものの、基本的に榎本の推測を黙って聞くスタイルを貫いている。
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