72 / 98
4.この際、探偵は誰でもいい
4
しおりを挟む
「いや、それだけじゃ密室にはならないんじゃないか? 犯人は密室を作り上げた後、どうやって鍵のかかった部屋から外に出たんだ?」
榎本が提示したのは、あくまでも密室となり得た部屋に入る方法であり、その先――すなわち、密室からどのように出たのかまでは説明されていない。そこに菱田がすかさず突っ込んだ。すると、榎本は小さく鼻で笑う。別に他人を馬鹿にするようなものではなく、彼の癖のように見えた。それでも、中には自分を嘲っていると思う人がいるだろうから控えたほうがいいだろう。
「――その考え自体、少し方向性が違うんだよ。犯人は、密室となった部屋から出ていないんだ」
榎本の推測は、まだ全貌が見えてはこない。しかしながら、蘭の中でずっと引っかかっていた事象を、どうやら解決してくれるらしい。その引っかかっていたこととは、亜純の殺害現場にだけ見ることができた残虐性である。麗里は胸をナタでひと突き、細川は鈍器で頭を殴られる形で殺害された。それならばなぜ、亜純だけバラバラ死体にされねばならなかったのか。蘭の心情を読み取ったかのごとく榎本が続ける。
「もっと端的に言ってしまえば、僕が窓から部屋に入って、みんなで遺体を発見した時――あの時、まだ犯人は部屋の中にいたのさ。しかも大胆に堂々とね。加能さんの遺体だけバラバラになっていた理由も、おそらく部屋に犯人が潜伏したままであることを悟られないようにするためだ。あれだけ遺体がバラバラにされ、部屋中いたるところにばら撒かれた。当たり前だけど、人がバラバラにされてしまった現場を喜んで見たがる人間はいないだろう。それすなわち、じっくりと部屋を調べようとする人間もいないということだ。つまり、犯人はあえて加能さんの遺体をバラバラにすることで、部屋に潜伏している自分への注意を逸らそうとしたんだ。まさか、あんな血にまみれた部屋に、生きている人間が潜伏しているなんて思わないからね」
最後の悪あがきと言わんばかりに、弱々しい雷鳴が響いた。その距離は大分遠くなっており、嵐の集結を示していた。
「さて、とりあえず第二の事件までの僕の見解だ。ここまでで質問は?」
まだ腑に落ちない点は多くある。確かに、密室のトリックに関しては、榎本の言う通りにすれば可能だろう。しかし、まだ肝心の第一の事件が解決していない。仕掛けが施されていたわけではないと分かっただけで、根本的な解決にもなっていないだろう。それに、第二の事件についても矛盾が生じてくる。
「ひとつだけ――」
遠慮がちに手を挙げたは安楽だった。榎本と目を合わせると、小さく頷いてから発言する。
榎本が提示したのは、あくまでも密室となり得た部屋に入る方法であり、その先――すなわち、密室からどのように出たのかまでは説明されていない。そこに菱田がすかさず突っ込んだ。すると、榎本は小さく鼻で笑う。別に他人を馬鹿にするようなものではなく、彼の癖のように見えた。それでも、中には自分を嘲っていると思う人がいるだろうから控えたほうがいいだろう。
「――その考え自体、少し方向性が違うんだよ。犯人は、密室となった部屋から出ていないんだ」
榎本の推測は、まだ全貌が見えてはこない。しかしながら、蘭の中でずっと引っかかっていた事象を、どうやら解決してくれるらしい。その引っかかっていたこととは、亜純の殺害現場にだけ見ることができた残虐性である。麗里は胸をナタでひと突き、細川は鈍器で頭を殴られる形で殺害された。それならばなぜ、亜純だけバラバラ死体にされねばならなかったのか。蘭の心情を読み取ったかのごとく榎本が続ける。
「もっと端的に言ってしまえば、僕が窓から部屋に入って、みんなで遺体を発見した時――あの時、まだ犯人は部屋の中にいたのさ。しかも大胆に堂々とね。加能さんの遺体だけバラバラになっていた理由も、おそらく部屋に犯人が潜伏したままであることを悟られないようにするためだ。あれだけ遺体がバラバラにされ、部屋中いたるところにばら撒かれた。当たり前だけど、人がバラバラにされてしまった現場を喜んで見たがる人間はいないだろう。それすなわち、じっくりと部屋を調べようとする人間もいないということだ。つまり、犯人はあえて加能さんの遺体をバラバラにすることで、部屋に潜伏している自分への注意を逸らそうとしたんだ。まさか、あんな血にまみれた部屋に、生きている人間が潜伏しているなんて思わないからね」
最後の悪あがきと言わんばかりに、弱々しい雷鳴が響いた。その距離は大分遠くなっており、嵐の集結を示していた。
「さて、とりあえず第二の事件までの僕の見解だ。ここまでで質問は?」
まだ腑に落ちない点は多くある。確かに、密室のトリックに関しては、榎本の言う通りにすれば可能だろう。しかし、まだ肝心の第一の事件が解決していない。仕掛けが施されていたわけではないと分かっただけで、根本的な解決にもなっていないだろう。それに、第二の事件についても矛盾が生じてくる。
「ひとつだけ――」
遠慮がちに手を挙げたは安楽だった。榎本と目を合わせると、小さく頷いてから発言する。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
死霊術士が暴れたり建国したりするお話
はくさい
ファンタジー
多くの日本人が色々な能力を与えられて異世界に送りこまれ、死霊術士の能力を与えられた主人公が、魔物と戦ったり、冒険者と戦ったり、貴族と戦ったり、聖女と戦ったり、ドラゴンと戦ったり、勇者と戦ったり、魔王と戦ったり、建国したりしながらファンタジー異世界を生き抜いていくお話です。
ライバルは錬金術師です。
ヒロイン登場は遅めです。
少しでも面白いと思ってくださった方は、いいねいただけると嬉しいです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ
ひるま(マテチ)
SF
空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。
それは王位継承戦に持ち出されたチェスゲームの中で、駒が取られると同事に現れたモンスターをモチーフとしたロボット兵”盤上戦騎”またの名を”ディザスター”と呼ばれる者。
彼ら盤上戦騎たちはレーダーにもカメラにも映らない、さらに人の記憶からもすぐさま消え去ってしまう、もはや反則レベル。
チェスの駒のマスターを望まれた“鈴木くれは”だったが、彼女は戦わずにただ傍観するのみ。
だけど、兵士の駒"ベルタ”のマスターとなり戦場へと赴いたのは、彼女の想い人であり幼馴染みの高砂・飛遊午。
異世界から来た連中のために戦えないくれは。
一方、戦う飛遊午。
ふたりの、それぞれの想いは交錯するのか・・・。
*この作品は、「小説家になろう」でも同時連載しております。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる