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言われなくても分かってます
しおりを挟む麻実が気が付いたのは、5限目が始まってすぐのようだった。
問題の『昼休み』を気絶でスルー出来たのは幸いだった。
昼ごはんを食べ逃した悔しさを上回る歓びだ。
夜にでも圭に電話で問い詰めて、今後二度と騒動を起こさないよう厳重注意しよう。
そして今日はこのまま放課後まで教室に顔出さないで、今週いっぱいは体調不良で学校を休もう。
そうすれば、わたしの存在も今日の出来事も、すぐにみんな忘れてくれるはず・・・!
自分の計画に安心したわたしは、そのまま保健室で二度寝に突入した。
再び目が醒めた時、すでに夕方近くになっていた。
グランドからは、威勢のいい運動部の掛け声が聞こえてくる。
まずい。完璧に寝過ごした・・・!
目が醒めたきっかけは、盛大に鳴り響いた自分のお腹の音だった。
お腹空いた・・・早く教室行ってカバン取ってきて、さっさと帰ろう。
今ならもう、教室に人もいないだろう。
このまま誰にも会わずに帰れるといいな。
・・・なんて、世の中甘くないですよね、はい。
教室の自分の席の周りに、特進クラスの制服を着た女子生徒が数人。
誰を待っているのかは明らかである。
カバンを持って帰りたかったけど、これは諦めるしかあるまい。
麻実は気配を消して、そーっとそのまま教室を後に――
「広瀬さん、お身体の調子はいかが?倒れたと聞いて、心配してましたのよ」
一番会いたくなかった人物が、にっこりと上品に微笑む。
「ご、ごきげんよう宮森さん。おかげさまですっかり」
な、なにがお陰様じゃー!!すっかりなんて言ったら明日からの仮病が出来なくなるでしょー!
「そう。よかったわ」
笑みをそのままに、ゆったりとした動作でこちらに寄ってくる。
「ところで、圭さまのことですけど」
き、きたぁーー!!
見るからにお嬢様と分かる宮森華絵。この青葉学園のみならず、すべての圭さまファンクラブを取り仕切っている『総会長』様だ。圭とは幼稚園からの幼馴染。つまり私とも、小学校からの幼馴染。
わずか3歳で圭に一目ぼれして以来、齢17にして人生のほとんどを圭に捧げてると言っても過言ではない熱狂的な圭の信者である。
そんな神様仏様圭さまをいじめまくっていたわたしは、彼女からしたら殺したいくらいの天敵に違いない。
実際に、小学校の頃のわたしの村八分は、彼女によって扇動されていた。
一度、彼女と仲間たちに取り囲まれて手を出されそうになったことがあったが、すぐに駆け付けた圭にきつく怒られて以来、直接的な接触はほぼなかった。
「・・・なんでしょう」
「分かってはいるでしょうけど、圭さまとあなたでは、もう住む世界が違うの。昔のように、間違っても変な勘違いを起こさないで頂戴ね?」
分かっている。そんなこと、言われなくても自分が一番分かってる。
「ちょっとした気まぐれで声を掛けられたからって、図々しくも圭さまの横で昔のようにふんぞり返られたら、もう目も当てられませんもの。これはあなたの為の忠告よ。これ以上、惨めな思いしたくないでしょう?」
くすくすくす。馬鹿にしたような笑いが、彼女の後ろにいる女子達から漏れる。
視線を下にしたまま黙り込んだわたしに気が済んだのか、宮森さんはふんっと鼻を鳴らすと「もう済んだわ。行くわよ」と女子たちに声を掛ける。
「・・・そうそう。もし、あなたがまた圭さまとお話ししたいって思うのなら、ファンクラブに入りなさい。ファンクラブは同士ですもの。わたくしもあなたを、仲間として認めてあげてもよろしくてよ?」
そう言い残して、彼女たちは教室を去っていった。
「・・・・・」
誰も居なくなった教室の入り口で固まっていたわたしは、ぐっと拳を握り込む。
・・・分かってるよ。自分が圭にとてもひどいことしてたってことは。
側にいたいなんて考えてもいない。
こっそり静かに生きてきたつもりだ。圭にも、誰にも迷惑かけないように、息を潜めて。
それなのに。
それなのに―――!!
「圭め・・・許さんぞ・・・!!」
アイツが昼休みに騒動起こすから!!
ぜんっぶアイツのせいだ――――!!!!
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