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大精霊
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トアイトンの迷宮中層。フェリックたちは目の前に立ちはだかったオーガとギガスと睨み合っていた。オーガは人間を襲うヒト型の魔獣だ。人間を襲ってくるが知能は低く、動きものろい。人間がオーガを倒すことはさして難しくない。
だが、問題はギガスだ。巨大な体躯をしており、体力も多い。一撃で仕留めるのはかなり難しくなっている。しかし。
「Aランク程度の魔獣か。私の敵ではない」
カレンはそう言って弓を精一杯引く。
公式ギルドで、魔獣にはランク付けがされている。最高SSSランクで最低がBランクだ。その中でオーガは最低のBランク、ギガスはひとつ上のAランクだ。
そして、カレンは精一杯引いた弓を放す。すると、オーガとギガスは動きがのろいため避けることができない。カレンの放った矢はオーガとギガスに刺さる。
すると、その刺さった部分からオーガとギガスの身体は凍っていき、そのまま動かなくなってしまった。
「おお、氷結魔法! さすがだな!」
「カレンさんの氷結魔法は相当な強さを誇りますよ!」
「さすがカレンだね!」
「お見事なのだ!」
フェリックたち観戦組から歓声が上がる。
「これくらいのことは造作もない。さぁ残ったオーガもかかってくるがよい」
カレンがそう言うと残った5体程のオーガは一斉にかかってくる。が、同じように氷結魔法を纏った矢に射抜かれ、凍ってしまった。
「中層ももう出てくる気配は無さそうだな。残るは下層。下層には少し強めの敵も出てくるだろう。気をつけた方がいい」
「なぁ、ひとついいか?」
フェリックが手を挙げて言う。
「なんだ? フェリック殿」
「⋯⋯なんか俺、お前たちのパーティーの連携とか見たかったんだけど、カレンしか活躍してなくないか?」
言われてみればそうである。上層も中層もカレンが全て倒してしまって、ローレイン、シャロリン、エリアンはフェリックと同じように観戦しているといった感じだったのだ。
そう言われると、カレンは大袈裟に笑ってみせた。
「言われてみればそうだな。だがフェリック殿。これは私たちが決めたことなのだ」
「決めたこと?」
フェリックがジト目で聞き返す。カレンは「ああ」といって続けた。
「私はオールラウンダーに活躍できる。だが、ローレイン、シャロリン、エリアンは別だ」
「どういうことだ?」
「ローレインは一時的に強力な治癒魔法を使える。しかし、残念なことにその一時を過ぎると敵まで回復させてしまう」
「⋯⋯へ?」
フェリックは拍子抜けした声を上げる。だが、カレンは続けた。
「シャロリンは昼間はとても元気で近距離戦を得意とし、強いのだが、残念なことに昨日のように夜になると使えなくなる」
「ってことは⋯⋯」
「ああ、お察しの通り、エリアンも一時的に強い防御壁を張れるが、これまた一時を過ぎると、長い休憩をしないと使えなくなる」
「お前ら中途半端過ぎなんだよ!?」
フェリックが悲鳴ともつかない叫びを上げる。まぁ今の話を聞けば無理はないだろう。
「はっはっはっ! そうなのだよ、フェリック殿の言う通り、我々のパーティーは中途半端なのだ。だからその一時で決着をつけるようにしている」
「⋯⋯なるほどねぇ」
フェリックは深いため息を吐いた。
魔王を倒したパーティーにいると聞いて期待してたが、その期待は大幅に外れてしまった。
「す、すみません! 本当に一時的には使えるんですが、前に試したところ相手を回復させてしまって⋯⋯」
ローレインが必死に頭を下げてくる。
「⋯⋯まぁでも全く何もできないよりはマシだからな。下層で、見せてくれればそれでいいよ」
「す、すみません⋯⋯」
ローレインが頭を下げるだけで、シャロリンやエリアンはケロッとしていた。
「さて、下層へと行こうか」
そうしてフェリックたちは強敵の待つ下層へと降りていった。
△▼△
下層に降りてからというもの、フェリックたちは順調に歩みを進めていた。敵が出ることは疎か、下層は妙な静けさを誇っていた。
カレンによると、このトアイトンの迷宮の下層には、Aランクだが、ほとんどSランクに近い魔獣などが出てくることもあるらしいが、今はそんなに気配も無かった。
「なーんだ、Sランクの魔獣どころか、Bランク程度の魔獣すら出てこないじゃないか」
「そうだね~。でも、逆にこの静けさが怪しいよ」
「まぁ、こんな王都の近くにSランク程のドラゴンなどがいれば、とっくに誰かが見つけて話題になっているだろうからな」
カレンが顎に手を当てながら言う。
それからしばらく進んだフェリックたちは、広い間に出た。
その広い間はとてもとても美しく、下層だというのに陽の光が差し、明るかった。フェリックたちはしばらくその間を歩き回ったりしたりした。そこであることに気付く。
「⋯⋯もしかしてここ、最下層?」
「ふむ。そうかもしれんな」
そう。この間を散策して気づいたことだが、ここには下へ続く階段が無い。つまりはここが最下層ということとなる。
「ずいぶん早く着きましたねー」
ローレインが辺りを見回しながら言う。ここにいる全員Sランク程の魔獣が出てくると噂されていたため身構えていたが、それも出てこないで最下層に着いたため、拍子抜けである。
「どうするカレン、このまま上層へと戻るか?」
「それもひとつの案だな。早めに切り上げるのもありなのかもしれん」
「そうだな。ん?なんだあれ?」
フェリックは視界の端に映った物の方へと駆け寄る。それを手に取りフェリックはまじまじと見る。
「綺麗な石だな。なぁカレン。この石なんかに使えないか?」
そこには、綺麗な大きい水晶玉のようなものが転がっていた。紫色に輝いており、妙な威圧感を放っているように思えた。
フェリックが触れると、その紫色の石は大きな輝きを放った。
「なんだフェリック殿·····、そ、それは·····!」
カレンの顔が驚愕の顔に変わる。どうやらフェリックの持っている水晶玉のような石を見て驚いているらしい。
「なんだカレン、そんなに驚いて」
「驚くのも無理はない。フェリック殿、お前の持っているその石は"大精霊石"と呼ばれる石だ」
「大精霊石?」
フェリックは初めて聞く言葉に首を傾げる。
前にいたパーティーではそんな言葉が飛び交うことはなかった。
「知らないのか?大精霊石とは触れたものに精霊を宿す代物だ」
「え? 触れた者に精霊を宿すって、まさか⋯⋯」
フェリックが顔を引きつらせながらそう言ったときだった。
突然、ごうという地響きが辺り一面から鳴り響いた。不意なことに、フェリックたちは身構える。
すると、フェリックたちの前方の地面から何かが噴き出した。噴き出したというのは語弊ある。何かが飛び出してきた。
その飛び出してきたものは、両手両足を地面に着いた四足歩行で、目は殺意に満ち溢れたような目をして、皮膚は黒くゴツゴツとしている。つまりこれは――。
「⋯⋯ウ、ウソだろ。まさかこいつ⋯⋯」
「⋯⋯ああ、間違いない、これはSランクの魔獣"ヴリトラ"だ」
フェリックたちの前にいきなり現れたのは、Sランクの魔獣"ヴリトラ"だった。こちらを睨み、喉を鳴らしている。
「おいおいまずいんじゃないのかこれ⋯⋯。しかもなんで地面から出てくんだよ⋯⋯」
「やばいよ!どうするのこれ!」
シャロリンが焦った様子で言う。
しかし、パーティーのリーダーカレンは、あくまで落ち着いていた。
「大丈夫だ。フェリック殿、さっきフェリック殿が触れた石のことを覚えているよな?」
「あ、ああ。大精霊石っていう石だろ?」
「そうだ。それに触れた者は精霊が宿る、つまり、フェリック殿にはもう精霊が宿っているのだ」
カレンの言うことに、フェリックは目を剥く。
「お、俺に精霊が!? と、突然そんなこと言われてもな」
「信じられないかもしれないが、事実だ。精霊を召喚するには、意識を集中させる必要がある」
「意識を集中·····か」
「そうだ。フェリック殿、意識を精霊にだけ向けるイメージでやってみてくれ」
カレンがそう言い終わった直後、しびれを切らしたヴリトラがフェリックはたちを襲った。一同はすんでのところで避ける。
「⋯⋯意識を精霊だけに向けるイメージ·····よしっ」
そう言ってフェリックが目をつぶり意識を集中させる。しかし、辺りに精霊らしきものは出てこない。
「フェリック殿! 精霊が姿を現すまで何度も試すのだ!」
またもヴリトラが襲ってくる。今度は口から光線のようなものを発射した。
「バリアなのだー!」
と、それをエリアンが防御壁をはり防ぐ。
「ナイスだエリアン! よし!次こそは!」
また意識を集中させる。が、何も起こらない。ヴリトラは連続攻撃を仕掛けてくる。
「くそっ! なんで出てこないんだ!」
ヴリトラは暴走状態にあるため、攻撃を止めない。一同は避けるのに精一杯で攻撃をすることが出来ない。
フェリックは頭をフル回転させ考える。そしてすぐに思いついたことを口にした。
「これで出なかったらもう俺は止めるぞ!精霊!何でもいいから出てこい!」
フェリックが渾身の力で意識を集中させる。すると、フェリックから黒い煙のようなものが出始める。次第にそれは人型の形をしていき、悪魔のような形相をした精霊へと変わった。
「こ、これは⋯⋯!」
「やったぞフェリック殿! 成功だ!」
精霊は勢いよくヴリトラへと近づいていき、ヴリトラの顔面を思いきり殴り飛ばした。
ヴリトラは過激に飛んでいき、壁に激突したかと思うと、そのまま動かなくなってしまった。
「え、倒したのか⋯⋯?」
フェリックが警戒しながらヴリトラに近づいていき、ちょんちょんと触れる。
しかし、ヴリトラはビクともしなかった。
「倒したんだ。やった! Sランクの魔獣を倒したぞ!」
フェリックたち一同は大いに喜んだ。そして、それも束の間、ヴリトラの素材をたくさん剥ぎ取った。
「さて、素材も剥ぎ取ったことだ。そろそろ地上へと戻ろう。そしてこれをギルテリッジの武具屋へと持っていこうではないか」
「そうだな。そしたらかなり強い武器とか防具が作れるな」
「すごく楽しみです!」
そうしてフェリックたちは上層へと無事戻り、ギルテリッジの武具屋へと向かった。
だが、問題はギガスだ。巨大な体躯をしており、体力も多い。一撃で仕留めるのはかなり難しくなっている。しかし。
「Aランク程度の魔獣か。私の敵ではない」
カレンはそう言って弓を精一杯引く。
公式ギルドで、魔獣にはランク付けがされている。最高SSSランクで最低がBランクだ。その中でオーガは最低のBランク、ギガスはひとつ上のAランクだ。
そして、カレンは精一杯引いた弓を放す。すると、オーガとギガスは動きがのろいため避けることができない。カレンの放った矢はオーガとギガスに刺さる。
すると、その刺さった部分からオーガとギガスの身体は凍っていき、そのまま動かなくなってしまった。
「おお、氷結魔法! さすがだな!」
「カレンさんの氷結魔法は相当な強さを誇りますよ!」
「さすがカレンだね!」
「お見事なのだ!」
フェリックたち観戦組から歓声が上がる。
「これくらいのことは造作もない。さぁ残ったオーガもかかってくるがよい」
カレンがそう言うと残った5体程のオーガは一斉にかかってくる。が、同じように氷結魔法を纏った矢に射抜かれ、凍ってしまった。
「中層ももう出てくる気配は無さそうだな。残るは下層。下層には少し強めの敵も出てくるだろう。気をつけた方がいい」
「なぁ、ひとついいか?」
フェリックが手を挙げて言う。
「なんだ? フェリック殿」
「⋯⋯なんか俺、お前たちのパーティーの連携とか見たかったんだけど、カレンしか活躍してなくないか?」
言われてみればそうである。上層も中層もカレンが全て倒してしまって、ローレイン、シャロリン、エリアンはフェリックと同じように観戦しているといった感じだったのだ。
そう言われると、カレンは大袈裟に笑ってみせた。
「言われてみればそうだな。だがフェリック殿。これは私たちが決めたことなのだ」
「決めたこと?」
フェリックがジト目で聞き返す。カレンは「ああ」といって続けた。
「私はオールラウンダーに活躍できる。だが、ローレイン、シャロリン、エリアンは別だ」
「どういうことだ?」
「ローレインは一時的に強力な治癒魔法を使える。しかし、残念なことにその一時を過ぎると敵まで回復させてしまう」
「⋯⋯へ?」
フェリックは拍子抜けした声を上げる。だが、カレンは続けた。
「シャロリンは昼間はとても元気で近距離戦を得意とし、強いのだが、残念なことに昨日のように夜になると使えなくなる」
「ってことは⋯⋯」
「ああ、お察しの通り、エリアンも一時的に強い防御壁を張れるが、これまた一時を過ぎると、長い休憩をしないと使えなくなる」
「お前ら中途半端過ぎなんだよ!?」
フェリックが悲鳴ともつかない叫びを上げる。まぁ今の話を聞けば無理はないだろう。
「はっはっはっ! そうなのだよ、フェリック殿の言う通り、我々のパーティーは中途半端なのだ。だからその一時で決着をつけるようにしている」
「⋯⋯なるほどねぇ」
フェリックは深いため息を吐いた。
魔王を倒したパーティーにいると聞いて期待してたが、その期待は大幅に外れてしまった。
「す、すみません! 本当に一時的には使えるんですが、前に試したところ相手を回復させてしまって⋯⋯」
ローレインが必死に頭を下げてくる。
「⋯⋯まぁでも全く何もできないよりはマシだからな。下層で、見せてくれればそれでいいよ」
「す、すみません⋯⋯」
ローレインが頭を下げるだけで、シャロリンやエリアンはケロッとしていた。
「さて、下層へと行こうか」
そうしてフェリックたちは強敵の待つ下層へと降りていった。
△▼△
下層に降りてからというもの、フェリックたちは順調に歩みを進めていた。敵が出ることは疎か、下層は妙な静けさを誇っていた。
カレンによると、このトアイトンの迷宮の下層には、Aランクだが、ほとんどSランクに近い魔獣などが出てくることもあるらしいが、今はそんなに気配も無かった。
「なーんだ、Sランクの魔獣どころか、Bランク程度の魔獣すら出てこないじゃないか」
「そうだね~。でも、逆にこの静けさが怪しいよ」
「まぁ、こんな王都の近くにSランク程のドラゴンなどがいれば、とっくに誰かが見つけて話題になっているだろうからな」
カレンが顎に手を当てながら言う。
それからしばらく進んだフェリックたちは、広い間に出た。
その広い間はとてもとても美しく、下層だというのに陽の光が差し、明るかった。フェリックたちはしばらくその間を歩き回ったりしたりした。そこであることに気付く。
「⋯⋯もしかしてここ、最下層?」
「ふむ。そうかもしれんな」
そう。この間を散策して気づいたことだが、ここには下へ続く階段が無い。つまりはここが最下層ということとなる。
「ずいぶん早く着きましたねー」
ローレインが辺りを見回しながら言う。ここにいる全員Sランク程の魔獣が出てくると噂されていたため身構えていたが、それも出てこないで最下層に着いたため、拍子抜けである。
「どうするカレン、このまま上層へと戻るか?」
「それもひとつの案だな。早めに切り上げるのもありなのかもしれん」
「そうだな。ん?なんだあれ?」
フェリックは視界の端に映った物の方へと駆け寄る。それを手に取りフェリックはまじまじと見る。
「綺麗な石だな。なぁカレン。この石なんかに使えないか?」
そこには、綺麗な大きい水晶玉のようなものが転がっていた。紫色に輝いており、妙な威圧感を放っているように思えた。
フェリックが触れると、その紫色の石は大きな輝きを放った。
「なんだフェリック殿·····、そ、それは·····!」
カレンの顔が驚愕の顔に変わる。どうやらフェリックの持っている水晶玉のような石を見て驚いているらしい。
「なんだカレン、そんなに驚いて」
「驚くのも無理はない。フェリック殿、お前の持っているその石は"大精霊石"と呼ばれる石だ」
「大精霊石?」
フェリックは初めて聞く言葉に首を傾げる。
前にいたパーティーではそんな言葉が飛び交うことはなかった。
「知らないのか?大精霊石とは触れたものに精霊を宿す代物だ」
「え? 触れた者に精霊を宿すって、まさか⋯⋯」
フェリックが顔を引きつらせながらそう言ったときだった。
突然、ごうという地響きが辺り一面から鳴り響いた。不意なことに、フェリックたちは身構える。
すると、フェリックたちの前方の地面から何かが噴き出した。噴き出したというのは語弊ある。何かが飛び出してきた。
その飛び出してきたものは、両手両足を地面に着いた四足歩行で、目は殺意に満ち溢れたような目をして、皮膚は黒くゴツゴツとしている。つまりこれは――。
「⋯⋯ウ、ウソだろ。まさかこいつ⋯⋯」
「⋯⋯ああ、間違いない、これはSランクの魔獣"ヴリトラ"だ」
フェリックたちの前にいきなり現れたのは、Sランクの魔獣"ヴリトラ"だった。こちらを睨み、喉を鳴らしている。
「おいおいまずいんじゃないのかこれ⋯⋯。しかもなんで地面から出てくんだよ⋯⋯」
「やばいよ!どうするのこれ!」
シャロリンが焦った様子で言う。
しかし、パーティーのリーダーカレンは、あくまで落ち着いていた。
「大丈夫だ。フェリック殿、さっきフェリック殿が触れた石のことを覚えているよな?」
「あ、ああ。大精霊石っていう石だろ?」
「そうだ。それに触れた者は精霊が宿る、つまり、フェリック殿にはもう精霊が宿っているのだ」
カレンの言うことに、フェリックは目を剥く。
「お、俺に精霊が!? と、突然そんなこと言われてもな」
「信じられないかもしれないが、事実だ。精霊を召喚するには、意識を集中させる必要がある」
「意識を集中·····か」
「そうだ。フェリック殿、意識を精霊にだけ向けるイメージでやってみてくれ」
カレンがそう言い終わった直後、しびれを切らしたヴリトラがフェリックはたちを襲った。一同はすんでのところで避ける。
「⋯⋯意識を精霊だけに向けるイメージ·····よしっ」
そう言ってフェリックが目をつぶり意識を集中させる。しかし、辺りに精霊らしきものは出てこない。
「フェリック殿! 精霊が姿を現すまで何度も試すのだ!」
またもヴリトラが襲ってくる。今度は口から光線のようなものを発射した。
「バリアなのだー!」
と、それをエリアンが防御壁をはり防ぐ。
「ナイスだエリアン! よし!次こそは!」
また意識を集中させる。が、何も起こらない。ヴリトラは連続攻撃を仕掛けてくる。
「くそっ! なんで出てこないんだ!」
ヴリトラは暴走状態にあるため、攻撃を止めない。一同は避けるのに精一杯で攻撃をすることが出来ない。
フェリックは頭をフル回転させ考える。そしてすぐに思いついたことを口にした。
「これで出なかったらもう俺は止めるぞ!精霊!何でもいいから出てこい!」
フェリックが渾身の力で意識を集中させる。すると、フェリックから黒い煙のようなものが出始める。次第にそれは人型の形をしていき、悪魔のような形相をした精霊へと変わった。
「こ、これは⋯⋯!」
「やったぞフェリック殿! 成功だ!」
精霊は勢いよくヴリトラへと近づいていき、ヴリトラの顔面を思いきり殴り飛ばした。
ヴリトラは過激に飛んでいき、壁に激突したかと思うと、そのまま動かなくなってしまった。
「え、倒したのか⋯⋯?」
フェリックが警戒しながらヴリトラに近づいていき、ちょんちょんと触れる。
しかし、ヴリトラはビクともしなかった。
「倒したんだ。やった! Sランクの魔獣を倒したぞ!」
フェリックたち一同は大いに喜んだ。そして、それも束の間、ヴリトラの素材をたくさん剥ぎ取った。
「さて、素材も剥ぎ取ったことだ。そろそろ地上へと戻ろう。そしてこれをギルテリッジの武具屋へと持っていこうではないか」
「そうだな。そしたらかなり強い武器とか防具が作れるな」
「すごく楽しみです!」
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