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■負傷と大群
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しおりを挟む街へたどり着くのは容易じゃなかった。ガルパスのやつが、コルロルはアルスト山にいると報告したのだろう。軍の飛行船が頭上を飛び交った。俺たちはなるべく木に覆われた道を選んで通り、姿を隠しながら目的地を目指した。
「いいかコルロル、君は懸賞金を掛けられた国際的指名手配犯だ」、太い木の根が突出するでこぼこの道を、注意しながら歩く。限られた道を進むのでは、街へつくまでしばらくかかりそうだ。
「それがなに?」、コルロルは図体がでかい分、俺以上に歩きづらいようだった。枝に顔を叩かれたり、足の鉤爪が木の根の隙間にはまったり、さっきからイライラしている。
「想像してみろよ、街につけば、待ち構えている軍の攻撃で、君は集中砲火だ。なにか対策はあるのか?」
「とりあえず、それまでには翼を回復させとくよ」、歩き出して数時間。驚くべきことに、コルロルの焼けた翼は回復しつつあった。焼野原の荒れた大地に、新芽が顔を出すように、傷ついた羽は抜け落ち、新しい羽が芽生え始めていた。
「傷の再生が早いな」
「これも僕がなかなか死なない理由のひとつみたいだからね。人間ほど回復に時間がかからないんだ」
「それは良かったが、飛べるようになったとしても、攻撃を避けるのは容易じゃないぞ。今まで国が君に手を出せなかったのは、単純に居場所が分からないという理由からだ。どこにいるかも分からないやつを捕まえるのは難しい。でも今回は違う。君が来ると想定した上で、あちらさんは罠を張り、対策を練ることができる。万全体制だ」
納得したようにコルロルは頷く。「たしかに分が悪い」
「分が悪いどころじゃないよ。こっちには向こうの情報もないんだ。レーニスはどこにいて、何人の兵が動員されていて、どんな武器が揃えられているか。この道に地雷や爆薬が仕掛けられている可能性だってゼロじゃないんだ」
「いたぞー!」、男の声が響く。木々に視界を邪魔された向こうに、ライフルを構えた数人の兵の姿が見えた。
「地上にもいたのか」、言い終わらないうちに、銃声が数発。「おっと」、ぐんと腹から引っ張られる。コルロルに抱えられ、飛び上がっていた。翼を使ってというよりは、脚力で跳躍したらしい。
自分が立っていた場所が、すーっと眼下へ離れたかと思うと、着地したのは数人の兵隊の前だった。ずうん、と地面が揺れ、男たちは叫びおののく。こちらに向けられたライフルをコルロルの手が掴む。男は慌てて発砲したが、銃身はアルミのようにぐにゃりと曲がって銃口は上を向いていた。
そこから放たれた銃弾は、木の葉を貫いて天へと向かう。軍帽をかぶるその男は、目を見開いてコルロルを見上げるばかりだ。恐怖で硬直してしまっている。その後ろで、仲間が叫び声をあげながら銃を構えたが、すでにコルロルの触覚が、地面を這って男の足元まで迫っていた。
触覚に足をとられ、逆さまに持ち上がった男たちの手から、ライフルが滑り落ちていく。一人はそれでも銃を持ち続け、がむしゃらに連続して発砲したが、あらぬ方向へ飛んでいく。一発は命中する軌道を奔ったのだけど、コルロルは首を振ってあっさりかわしてしまった。
男はそれでも引き金を引き続ける。引き金が空っぽの音を立てる。彼はやがて白目を向いて気を失った。腕がだらりと垂れ下がり、くたびれた人形のようになる。
「……君が臆病な理由が、俺にはさっぱり分からないよ」、すべてが終わり静かになってから、俺は呆けて呟いた。「むしろ君と対面した人間の方がかわいそうだ」
「僕は強いんだ。鍛えたからね。レーニスも助けられる」
どうやら圧勝したときのみふんぞり返る質らしい。あの弾がかすりでもしてたら騒いでいたんだろう。つまり、極端に打たれ弱いってことだ。
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