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■負傷と大群
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しおりを挟む「いい作戦を思いついたよ。ほら、これはどう?」、男からとった軍帽を、三角の耳の間に乗せて、コルロルは目を輝かせた。「兵に変装して紛れ込むんだ。隙をついてレーニスを助ける」
「……いいアイデアだが、君の役割じゃない。俺がやる」
「え? ほら、服も着てみれば」
「いや、服の問題じゃない。役割の問題だ」
男から服を奪い、彼らが持っていたロープで四人の兵士を木の幹に縛り付ける。俺は軍服に着替え、最後に徽章の縫い付けられた軍帽を被ると、足を折って男達に問いかけた。
「君たちの街に、少女が連れてこられただろう? 髪は肩くらいで髪飾りをしてる。無愛想でちっとも笑わない女の子だ」
「喋れば、殺さないか?」、男は怯えた様子で確認する。俺は「もちろん」と答えた。
男の話は次のようなものだった。
レーニスは怪物コルロルの仲間であり、アルスト山でコルロルと落ち合うと、街を襲う画策をしていた。それを知ったガルパスがレーニスを捕らえ、兵はアルスト山へ駆り出された。レーニスは怪物の仲間として塔に隔離されたが、今夜火炙りの刑に処される。
話を聞いて、俺は舌を打った。「全てガルパスの筋書き通りってところか」
「火炙りだって? 火で焼いて殺すっていうのか? なんて残酷なことを思いつくんだ。正気の沙汰じゃない。ライアン、急ごう」
「悪く思わないでくれよ」、俺は男から奪った警棒で男たちの気を失わせてから、コルロルのあとを追った。坂を駆け降りてまっすぐ行けば、街に辿りつく、というところだった。
「ライアン、まずい」
コルロルが急に立ち止まる。俺はその背中にぶつかって顔をうつ。
「どうした?」、コルロルの向こうに、さきほどとは比べ物にならない数の兵士が見えた。やつらはライフルを携え、列をなして坂を登ってくる。
空を見上げる。「陽が沈み始めている」、レーニスの火炙りは、夜。「まだ飛べないか? いや、飛べば飛行船のやつらが撃ってくるか……」、俺は踵を返す。「一旦引こう!」、そうしてすぐ、はっとして立ち止まる。俺たちが今歩いてきた道を、軍服の群れが下りてきていた。「くそ。退路を絶たれたぞ」、もう一度空を仰ぐ。「そうか……。兵の半分は飛行船で先回りしてたんだ。最初から、はさみ撃ちにするつもりだったのか」
はじめから、ある程度の居場所は把握されていたのだろう。飛行船がコルロルの翼を封じ、空から見えないアルスト山から街までの道には、前後から大勢の兵を向かわせる。敵ながらいい策だ。
まるで四角い部屋の中に閉じ込められたみたいだ。左右の壁が押し寄せてきて、無情に潰されるように救いがない。
「僕一人を仕留めるのに、なんて数だ。あんな数を相手にしてたら、夜に間に合わない」
「そもそもあの数はいくら君でも無理だ。とりあえず身を隠そう。あの岩陰に隠れるんだ」
俺たちは岩陰に飛び込み、そこでやり過ごそうとした。兵の列が軌道を変更してくれれば助かったのだが、やはりこちらに進んでくる。その様子を岩陰から覗き、俺は突拍子もなくやってきた自分の終焉というものを、じりじり肌に感じ始めていた。
ここまでか。そう思った。
「あちらさんも威信をかけて君を捕まえるつもりらしいな。そもそも敵がでかすぎる。国を相手にするなんて。こんな大仕事はしたことがない」
「どうするライアン」、できるだけ翼を自分の身体に寄せて、コルロルは縮こまっている。
思わず顔が歪んだ。「どうする? って、俺に聞いてるのか?」
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