助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

文字の大きさ
2 / 61

おっさん、公園で倒れる

しおりを挟む
 おいおい、分かりやすい性格だな。

 とりあえず、軽くチャラ男の拳を避けた。ガキの頃、喧嘩してた連中と比べればチャラ男の殴り方は大振りで軌道が読みやすい。何回か殴ってきたが、一発も当たる事はなかった。

 このまま諦めてくれないかなぁ。

「あの、今、人を呼びます」

 後ろから少女が切羽詰まった声で言ってきた。
 極めて常識的な発想だが、君は大事な事を忘れている。
 周りの連中はさっさと逃げて誰もいないんだよ。

「いや、君も早く逃げてくれた方が助かるんだけど」
「喧嘩中にくっちゃべってんじゃねえよ!」

 肩で息をして汗だくになったチャラ男がズボンのポケットからナイフを取り出した。
 おいおい、刃物はヤバイって、これは流石に想定外。

 こういう場合は、さっさと逃げるに限るが、女の子を置いて逃げられんしな。
 ナイフ相手に無傷で勝つ、もしくは、女の子を引っ張りながら逃げきるなんて漫画のお話だ。
 それ以前にナイフを見せられて少女は立ち竦んでるし。

「下がってて、流石に危ないから」

 やむ得ず、少女を庇う形で立った俺の背中に、ポツリと少女の呟きが聞こえた。

「……お兄様?」

 ん、誰の事だ?
 意識をそらしたのがいけなかった。
 チャラ男が突き出してきたナイフへの対応が遅れた。

 左の太ももに激痛が走った。
 刺さったことにビビったのか、チャラ男は青ざめた表情で一目散に逃げて行った。
 チャラ男にとっても刺さるのは想定外だったらしい。

 逃げるなら最初からナイフなんて使うなよ。
 ヘタレめと思いながら、俺はその場に崩れ落ちた。

「あ、あの。今、きゅ、救急車を」
 
 少女が青ざめた顔で涙目で寄ってきた。
 俺は慌てて太ももをネクタイで縛って仮の止血をして、スーツの上着で隠した。
 高校生ガキの頃に刃物沙汰は何回か経験してるから俺は大丈夫だが、女の子にとってこの光景はトラウマになりかねない。

「ありがとう」

 少女を安心させるために、無理して笑顔を作ったが、こんなおっさんの笑顔なんて気持ち悪いだけか。

 てか、近くで見るとめちゃくちゃ可愛い。
 天使の輪が付いた黒髪と色白の滑らかな肌に、大きな黒い瞳に鼻筋の通った顔立ち。

 アイドル顔負けの清楚な美少女だ。

 そんな場違いな思いに気が緩んだのか、一気に眠気が襲ってきた。
 三日連続の徹夜明けに久々の喧嘩だ、流石に疲れて、意識が保たない

 ダメだ、だんだん視界が霞んできた。

 目を閉じ始めた俺に焦ったのか、少女は急いで携帯を取り出し、涙目で電話をかけ始めた。

 薄れていく意識の中で俺は思った。

 ヤバイ、上司にどう言い訳しよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...