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おっさん、四条家に引っ越す
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広い、広すぎる、本当に俺はこの部屋に住んでいいのだろうか。
三人掛けのソファが二つに、モダンなリビングテーブル、特大の液晶テレビと冷蔵庫に北欧調のクローゼット。
リビングとは別に十二畳ほどの寝室、大きな窓からは日本庭園風の庭が見えた。
まるで、テレビでよく見る高級ホテルのスイートルーム。
俺が住んでいた六畳一間のボロアパートとは月とスッポン。
そんな部屋には不釣り合いな段ボールが四つほど置かれていた。
アパートで桜庭さんと一緒に荷造りした引っ越しの荷物だ。
綾華も来たがったが、さすがに散らかった一人暮らしの男部屋を見せたくなかったので桜庭さんに頼んだ。
綾華はすごい不満そうな顔をしていたが、お嬢様に見せていい部屋ではない。
それに男には女性に見られたくない品々があるし。
その埋め合わせというわけではないだろうが、綾華は荷解きを手伝う気満々だった。
何故かピンク色の花柄エプロンまでつけている。
「えーと、やっぱ手伝ってくれるのかな?」
「はい、当り前ですわ。アパートには連れて行ってくださらなかったのですから」
「いや、それはごめんね。でも、やっぱ、か弱い女の子に手伝ってもらうのは男として気が引けるというか。だから、荷解きも自分でやりたいんだが」
「そんな、か弱いだなんて……」
綾華は顔を赤くして、指をもじもじしながら俯いてしまった。
本当は見られたくない品があるんだ。なんて言えないもんなぁ。
桜庭さんには男同士共感してもらえたけど、さすがにお嬢様に見せていいもんじゃない。
「で、ですが、やはり若宮様のお世話をすると決めた以上、お手伝いさせて頂くのがわたくしの努めですわ」
いや、そんな妻の務めみたいに重く考えないでくれ。
てか、そんな大和撫子みたいな考えを持っている女子なんて絶滅危惧種並みの貴重さだぞ。
綾華は本当に悲しそうに上目遣いで俺の方を見てくる。
ヤバイ、恋愛感情抜きでもこの視線はヤバイ。
上手く断りたいのに、この可愛さの前では断れる気がしない。
「お嬢様、殿方の意思を尊重するのも淑女のマナーでございます。代わりに家の敷地のご案内をされてはどうでしょう?」
「でも、それは桜庭さんがお父様から頼まれていたのではなくて?」
「実は急用が入ってしまいまして。出来れば、代わりにご案内していただけると助かるのですが」
「そういうことでしたら、しょうがないですわね。若宮様、よろしいでしょうか?」
異論などあるはずがない、むしろ願ったり叶ったりである。
俺は目線で桜庭さんに礼をした。桜庭さんは温かい目を細めて返してくれた。
綾華は準備すると言って部屋を出て行った。
「さあ、お嬢様が戻ってくる前に手早く終わらしてしまいましょう。衣服は一通り洗濯させていただきますので、こちらへ。本類はそちらの本棚でいいですね。DVD類はTVボードでよろしいですね」
まだ足が痛む俺に代わって、桜庭さんはテキパキと動き三十分とかからず整理し終えた。
その手際の良さに呆然としていると、思い出したように最後の段ボールから雑誌数冊とDVDを取り出し俺の元へ寄ってきた。
綾華に見られたくなかった大人向けの本とDVDであり、桜庭さんは小声で話しかけてくる。
「若宮様、こちらはどこへ隠しましょう?」
「お嬢さんに絶対に見つからない場所がいいんですが」
「お嬢様の身長であれば棚の上とかなら絶対に見えませんし、届きませんが?」
「では、そこでお願いします」
桜庭さんは踏み台を持ってきて手早く本棚の上に置いてくれた。
踏み台を降りた後も綾華の目線の高さに腰をかがめて、見えないかチェックする入念ぶりは流石だ。
完璧に見えないことを確認すると、俺の方を見て右手の親指を立てた。
片付けの手際といい、隠すことの徹底ぶりといい桜庭さんマジ有能、四条グループのメイドたちを束ねる執事は伊達じゃない。
「色々とありがとうございます桜庭さん。そうだ、この家の敷地ってどのくらいあるんですか?」
「確か二千五百坪でございます」
「……は?」
三人掛けのソファが二つに、モダンなリビングテーブル、特大の液晶テレビと冷蔵庫に北欧調のクローゼット。
リビングとは別に十二畳ほどの寝室、大きな窓からは日本庭園風の庭が見えた。
まるで、テレビでよく見る高級ホテルのスイートルーム。
俺が住んでいた六畳一間のボロアパートとは月とスッポン。
そんな部屋には不釣り合いな段ボールが四つほど置かれていた。
アパートで桜庭さんと一緒に荷造りした引っ越しの荷物だ。
綾華も来たがったが、さすがに散らかった一人暮らしの男部屋を見せたくなかったので桜庭さんに頼んだ。
綾華はすごい不満そうな顔をしていたが、お嬢様に見せていい部屋ではない。
それに男には女性に見られたくない品々があるし。
その埋め合わせというわけではないだろうが、綾華は荷解きを手伝う気満々だった。
何故かピンク色の花柄エプロンまでつけている。
「えーと、やっぱ手伝ってくれるのかな?」
「はい、当り前ですわ。アパートには連れて行ってくださらなかったのですから」
「いや、それはごめんね。でも、やっぱ、か弱い女の子に手伝ってもらうのは男として気が引けるというか。だから、荷解きも自分でやりたいんだが」
「そんな、か弱いだなんて……」
綾華は顔を赤くして、指をもじもじしながら俯いてしまった。
本当は見られたくない品があるんだ。なんて言えないもんなぁ。
桜庭さんには男同士共感してもらえたけど、さすがにお嬢様に見せていいもんじゃない。
「で、ですが、やはり若宮様のお世話をすると決めた以上、お手伝いさせて頂くのがわたくしの努めですわ」
いや、そんな妻の務めみたいに重く考えないでくれ。
てか、そんな大和撫子みたいな考えを持っている女子なんて絶滅危惧種並みの貴重さだぞ。
綾華は本当に悲しそうに上目遣いで俺の方を見てくる。
ヤバイ、恋愛感情抜きでもこの視線はヤバイ。
上手く断りたいのに、この可愛さの前では断れる気がしない。
「お嬢様、殿方の意思を尊重するのも淑女のマナーでございます。代わりに家の敷地のご案内をされてはどうでしょう?」
「でも、それは桜庭さんがお父様から頼まれていたのではなくて?」
「実は急用が入ってしまいまして。出来れば、代わりにご案内していただけると助かるのですが」
「そういうことでしたら、しょうがないですわね。若宮様、よろしいでしょうか?」
異論などあるはずがない、むしろ願ったり叶ったりである。
俺は目線で桜庭さんに礼をした。桜庭さんは温かい目を細めて返してくれた。
綾華は準備すると言って部屋を出て行った。
「さあ、お嬢様が戻ってくる前に手早く終わらしてしまいましょう。衣服は一通り洗濯させていただきますので、こちらへ。本類はそちらの本棚でいいですね。DVD類はTVボードでよろしいですね」
まだ足が痛む俺に代わって、桜庭さんはテキパキと動き三十分とかからず整理し終えた。
その手際の良さに呆然としていると、思い出したように最後の段ボールから雑誌数冊とDVDを取り出し俺の元へ寄ってきた。
綾華に見られたくなかった大人向けの本とDVDであり、桜庭さんは小声で話しかけてくる。
「若宮様、こちらはどこへ隠しましょう?」
「お嬢さんに絶対に見つからない場所がいいんですが」
「お嬢様の身長であれば棚の上とかなら絶対に見えませんし、届きませんが?」
「では、そこでお願いします」
桜庭さんは踏み台を持ってきて手早く本棚の上に置いてくれた。
踏み台を降りた後も綾華の目線の高さに腰をかがめて、見えないかチェックする入念ぶりは流石だ。
完璧に見えないことを確認すると、俺の方を見て右手の親指を立てた。
片付けの手際といい、隠すことの徹底ぶりといい桜庭さんマジ有能、四条グループのメイドたちを束ねる執事は伊達じゃない。
「色々とありがとうございます桜庭さん。そうだ、この家の敷地ってどのくらいあるんですか?」
「確か二千五百坪でございます」
「……は?」
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