9 / 61
おっさん、四条家に引っ越す
しおりを挟む
広い、広すぎる、本当に俺はこの部屋に住んでいいのだろうか。
三人掛けのソファが二つに、モダンなリビングテーブル、特大の液晶テレビと冷蔵庫に北欧調のクローゼット。
リビングとは別に十二畳ほどの寝室、大きな窓からは日本庭園風の庭が見えた。
まるで、テレビでよく見る高級ホテルのスイートルーム。
俺が住んでいた六畳一間のボロアパートとは月とスッポン。
そんな部屋には不釣り合いな段ボールが四つほど置かれていた。
アパートで桜庭さんと一緒に荷造りした引っ越しの荷物だ。
綾華も来たがったが、さすがに散らかった一人暮らしの男部屋を見せたくなかったので桜庭さんに頼んだ。
綾華はすごい不満そうな顔をしていたが、お嬢様に見せていい部屋ではない。
それに男には女性に見られたくない品々があるし。
その埋め合わせというわけではないだろうが、綾華は荷解きを手伝う気満々だった。
何故かピンク色の花柄エプロンまでつけている。
「えーと、やっぱ手伝ってくれるのかな?」
「はい、当り前ですわ。アパートには連れて行ってくださらなかったのですから」
「いや、それはごめんね。でも、やっぱ、か弱い女の子に手伝ってもらうのは男として気が引けるというか。だから、荷解きも自分でやりたいんだが」
「そんな、か弱いだなんて……」
綾華は顔を赤くして、指をもじもじしながら俯いてしまった。
本当は見られたくない品があるんだ。なんて言えないもんなぁ。
桜庭さんには男同士共感してもらえたけど、さすがにお嬢様に見せていいもんじゃない。
「で、ですが、やはり若宮様のお世話をすると決めた以上、お手伝いさせて頂くのがわたくしの努めですわ」
いや、そんな妻の務めみたいに重く考えないでくれ。
てか、そんな大和撫子みたいな考えを持っている女子なんて絶滅危惧種並みの貴重さだぞ。
綾華は本当に悲しそうに上目遣いで俺の方を見てくる。
ヤバイ、恋愛感情抜きでもこの視線はヤバイ。
上手く断りたいのに、この可愛さの前では断れる気がしない。
「お嬢様、殿方の意思を尊重するのも淑女のマナーでございます。代わりに家の敷地のご案内をされてはどうでしょう?」
「でも、それは桜庭さんがお父様から頼まれていたのではなくて?」
「実は急用が入ってしまいまして。出来れば、代わりにご案内していただけると助かるのですが」
「そういうことでしたら、しょうがないですわね。若宮様、よろしいでしょうか?」
異論などあるはずがない、むしろ願ったり叶ったりである。
俺は目線で桜庭さんに礼をした。桜庭さんは温かい目を細めて返してくれた。
綾華は準備すると言って部屋を出て行った。
「さあ、お嬢様が戻ってくる前に手早く終わらしてしまいましょう。衣服は一通り洗濯させていただきますので、こちらへ。本類はそちらの本棚でいいですね。DVD類はTVボードでよろしいですね」
まだ足が痛む俺に代わって、桜庭さんはテキパキと動き三十分とかからず整理し終えた。
その手際の良さに呆然としていると、思い出したように最後の段ボールから雑誌数冊とDVDを取り出し俺の元へ寄ってきた。
綾華に見られたくなかった大人向けの本とDVDであり、桜庭さんは小声で話しかけてくる。
「若宮様、こちらはどこへ隠しましょう?」
「お嬢さんに絶対に見つからない場所がいいんですが」
「お嬢様の身長であれば棚の上とかなら絶対に見えませんし、届きませんが?」
「では、そこでお願いします」
桜庭さんは踏み台を持ってきて手早く本棚の上に置いてくれた。
踏み台を降りた後も綾華の目線の高さに腰をかがめて、見えないかチェックする入念ぶりは流石だ。
完璧に見えないことを確認すると、俺の方を見て右手の親指を立てた。
片付けの手際といい、隠すことの徹底ぶりといい桜庭さんマジ有能、四条グループのメイドたちを束ねる執事は伊達じゃない。
「色々とありがとうございます桜庭さん。そうだ、この家の敷地ってどのくらいあるんですか?」
「確か二千五百坪でございます」
「……は?」
三人掛けのソファが二つに、モダンなリビングテーブル、特大の液晶テレビと冷蔵庫に北欧調のクローゼット。
リビングとは別に十二畳ほどの寝室、大きな窓からは日本庭園風の庭が見えた。
まるで、テレビでよく見る高級ホテルのスイートルーム。
俺が住んでいた六畳一間のボロアパートとは月とスッポン。
そんな部屋には不釣り合いな段ボールが四つほど置かれていた。
アパートで桜庭さんと一緒に荷造りした引っ越しの荷物だ。
綾華も来たがったが、さすがに散らかった一人暮らしの男部屋を見せたくなかったので桜庭さんに頼んだ。
綾華はすごい不満そうな顔をしていたが、お嬢様に見せていい部屋ではない。
それに男には女性に見られたくない品々があるし。
その埋め合わせというわけではないだろうが、綾華は荷解きを手伝う気満々だった。
何故かピンク色の花柄エプロンまでつけている。
「えーと、やっぱ手伝ってくれるのかな?」
「はい、当り前ですわ。アパートには連れて行ってくださらなかったのですから」
「いや、それはごめんね。でも、やっぱ、か弱い女の子に手伝ってもらうのは男として気が引けるというか。だから、荷解きも自分でやりたいんだが」
「そんな、か弱いだなんて……」
綾華は顔を赤くして、指をもじもじしながら俯いてしまった。
本当は見られたくない品があるんだ。なんて言えないもんなぁ。
桜庭さんには男同士共感してもらえたけど、さすがにお嬢様に見せていいもんじゃない。
「で、ですが、やはり若宮様のお世話をすると決めた以上、お手伝いさせて頂くのがわたくしの努めですわ」
いや、そんな妻の務めみたいに重く考えないでくれ。
てか、そんな大和撫子みたいな考えを持っている女子なんて絶滅危惧種並みの貴重さだぞ。
綾華は本当に悲しそうに上目遣いで俺の方を見てくる。
ヤバイ、恋愛感情抜きでもこの視線はヤバイ。
上手く断りたいのに、この可愛さの前では断れる気がしない。
「お嬢様、殿方の意思を尊重するのも淑女のマナーでございます。代わりに家の敷地のご案内をされてはどうでしょう?」
「でも、それは桜庭さんがお父様から頼まれていたのではなくて?」
「実は急用が入ってしまいまして。出来れば、代わりにご案内していただけると助かるのですが」
「そういうことでしたら、しょうがないですわね。若宮様、よろしいでしょうか?」
異論などあるはずがない、むしろ願ったり叶ったりである。
俺は目線で桜庭さんに礼をした。桜庭さんは温かい目を細めて返してくれた。
綾華は準備すると言って部屋を出て行った。
「さあ、お嬢様が戻ってくる前に手早く終わらしてしまいましょう。衣服は一通り洗濯させていただきますので、こちらへ。本類はそちらの本棚でいいですね。DVD類はTVボードでよろしいですね」
まだ足が痛む俺に代わって、桜庭さんはテキパキと動き三十分とかからず整理し終えた。
その手際の良さに呆然としていると、思い出したように最後の段ボールから雑誌数冊とDVDを取り出し俺の元へ寄ってきた。
綾華に見られたくなかった大人向けの本とDVDであり、桜庭さんは小声で話しかけてくる。
「若宮様、こちらはどこへ隠しましょう?」
「お嬢さんに絶対に見つからない場所がいいんですが」
「お嬢様の身長であれば棚の上とかなら絶対に見えませんし、届きませんが?」
「では、そこでお願いします」
桜庭さんは踏み台を持ってきて手早く本棚の上に置いてくれた。
踏み台を降りた後も綾華の目線の高さに腰をかがめて、見えないかチェックする入念ぶりは流石だ。
完璧に見えないことを確認すると、俺の方を見て右手の親指を立てた。
片付けの手際といい、隠すことの徹底ぶりといい桜庭さんマジ有能、四条グループのメイドたちを束ねる執事は伊達じゃない。
「色々とありがとうございます桜庭さん。そうだ、この家の敷地ってどのくらいあるんですか?」
「確か二千五百坪でございます」
「……は?」
0
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる