助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

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おっさん、綾華をデートに誘う

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 言うなら今しかないが、上手く言えるだろうか。
 今までの恋愛では誘っても断られたばかりだった。
 若い頃は仲間内でのノリも手伝い勢いで出来たが、女性をデートに誘うなど十年以上ぶりだ。

 この機を逃して、廊下でわざわざ呼び止めてまで誘う勇気なんて俺にはない。

「綾華さん」
「はい、なんでございましょう?」
「あー、その、なんだ」

 胃が重い。

 今まで断られまくった悪夢が俺の中に甦ってくる。
 良太は綾華が即OKしてくれることを前提としているが現実はそんなに甘くないだろう。
 そんな前提が成り立っていれば、勝率ゼロなんてありえない。

 お情けですら付き合ってもらえなかった俺だ。

 思えば綾華との会話は出会いを除けば四条家の敷地内のみ。
 他人の目を気にしないで済む空間のみだった。
 二人きりの空間なら相手しか見えないが、一歩外に出れば嫌が応にも周囲の視線を感じるし気にする。
 他人に恋人を誇りたい奴ほど、家の中と外で恋人に対する態度が違うと聞くし、ダサい恋人にはあからさまに冷たい態度を取ると聞く。ましてや、一緒にお出かけする事すら嫌がるみたいだ。

 果たして綾華もそうでないと言い切れるだろうか?

 あぁ、なんだか喉が渇いた。

「あのな、その、今度、俺の洋服でも一緒に買いに行ってくれないかな?」
「えぇ、喜んでご一緒いたしますわ」

 言い切れたよ、まさかの二言返事で快諾。

 さっきまでの俺の苦悩は一体。

 にしてもやばいぞ、九分九厘、断られるだろうと思い全くのノープラン。
 買い物場所なんて調査もしていないし考えていなかった。

 俺がよく行くのはシモムラかウニクロ。

 でもお嬢様がそんなところ頃を喜ぶだろうか。
 俺が困っていると綾華の方が言葉を続けてきた。

「わたくしが若宮様のご洋服をコーディネートさせていただいてよろしいのですか?」
「えぇ、よろしいですよ」

 緊張のあまり変な言葉遣いになる俺にクスリと微笑み、綾華はしばし思案顔になった。

 にしても、まさか快諾してくれるとは思わなかった。

 綾華には恋愛フィルターがかかっているが、周りの目は冷静だ。いや、冷淡だ。
 綾華は絶世の美少女でセレブなお嬢様、上流階級でも上位の存在。
 そんな美少女の隣をこんなおっさんが歩けば、大抵の連中は、あからさまな侮蔑の視線を不釣り合いな俺に向けてくるだろう。

 ヤダなぁ、今からでもやっぱ無しと取り消そうかな。

「そうですわね、ではミッドランドタウンにでも参りましょうか。わたくしが友人たちと時々買い物をする場所ですの」

 待って、それって高確率で綾華様のご学友に出会うのでは?
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