助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

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おっさん、綾華のご学友を見つける

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 今さら焦ったところでもう遅い、俺をこんな状態にしたのは君なんだよ綾華。

「あそこにいる女の子の様子が変ですの」

 綾華の視線の先には顔を真っ赤にして今にも泣きそうな女の子がいた。
 微妙に身体をゆすり場所を移動しようしているが、非力な女の子がすし詰め状態の電車内を移動できるわけがない。

 ……あぁ、あれは完璧に触られてるな。

 周りの大人たちはスマホをいじってたり、立ち寝状態で気づいていない。
 そもそも、女子高生くらいの背丈では満員電車の大人の男たちの背丈の中に埋没しやすく、何かされていたとしても気づかれにくい。女の子が体を揺すっていたとしても電車の揺れの方が強く無言のSOSはかき消されてしまう。

 女の子と同じ視線の綾華だからこそ電車が揺れた拍子に隙間が出来て気づけたのだろう。

 気づけたのはいいが、さてどうしよう。

 若い頃の俺なら正義感に駆られて痴漢を捕まえただろう。
 実際、捕まえたこともある。だが、その後の助けた女性と駅員の対応がひどかった。
 痴漢してたのがイケメンで、助けたのが三段腹の若ハゲの俺だったいうことから人を見た眼で判断し、途中から俺が痴漢をしたんじゃないのかと疑われた。

 結局、イケメンが罪を認めて解決したが、冤罪をかぶせようとした助けた女性と駅員からは謝罪されなかった。
 まあ、変に正義感に駆られて行動するとロクな結果にならない良い教訓だと今は納得しているが、当時の事を思い出すと今もイライラする。

 というか、イライラしてきた。

 今回も倫理上、助けてあげるべきなのだろうが面倒ごとになる。
 だが、女の子を助けて痴漢を捕まえたら、俺は女の子と一緒に駅長室へ同行することになるだろう。
 警察が呼ばれて状況説明などで時間がかかる。

 そうすれば、一緒にいる綾華が学校に遅刻することになる。
 普段から綾華が電車通学をしていれば一人で行かせることも可能だが、今回が初めての電車通学。
 恐らく、学校の最寄り駅から学校までの道順も分からないだろう。
 ましてや、一人で行動させている時に事故でもあったら四条総裁に申し訳が立たない。

 と、言う事でここは女の子には泣いて我慢してもらおう。

 第一、女性専用車両があるのに男が沢山いる満員電車に乗ってきて痴漢に遭うなんて自業自得だ。
 次回はキチンと女性専用車両に乗るんだぞ。
 そう心の中で女の子にアドバイスを送っていると、綾華がふと気づいた表情で言ってきた。

「あら、あの子はわたくしと同じクラスの方ですわ」
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