助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

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おっさん、痴漢を見つける

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……マジか。よくよく女の子を見ればなるほど白菊女学園の制服だ。
 しかも、見てたら女の子と目が合ってしまった。潤んだ目が助けを求めている。
 俺と目が合ったということは当然俺と向かい合わせの綾華とも目があったという事。

 ここで見て見ぬフリをすれば、綾華が痴漢に遭っている女の子を見捨てたという噂がたつだろう。
 痴漢という存在を知らない綾華が女の子の合っている状況を理解できていないとしてもだ。
 しかも、当の綾華は中年男性に幸せそうに密着し電車に揺られている。

 これで綾華の悪評が立たないわけがない。

 ただでさえ、前回の買い物が原因で駆け巡っているであろう下世話な噂に今回のがプラスされる。
 綾華の評判が駄々下がりになる事は明白。

 はぁ、しょうがない、助けるか。
 一度決めたことをひっくり返されると更にイラつくな。
 前回も今回もすべて痴漢のせいだ。

「綾華、俺の後についてきてくれ。ちょっと、強引に移動するからはぐれないでな」

 俺が強引に体を動かして移動すると何人かが俺を睨んできた。
 こんな満員電車で強引な移動をすれば当たり前の反応。
 だからこそ、痴漢どもも安心してやるんだろうけど。

 睨まれた人にひたすら頭を下げつつ、女の子の元へ着く直前で不自然な奴にぶつかった。
 強引にわきを通ろうとすると、俺の行先にずれてくる。まるで俺を通すまいとしているようだ。
 そのせいで、女の子が俺の視界から完全に消えてしまった。

 移動する俺を迷惑に思っての嫌がらせじゃない、明らかな進路妨害。
 これはアレだ、噂に聞く痴漢仲間の壁役か?
 ふと、視線が合うと不敵にこっちを見てニヤケてきた。

 確定だな、か弱い女の子に寄ってたかってこいつらは。
 ホント、イライラする。ただでさえ、面倒くさいのに手間かけさせんな。

 「邪魔だ、どけ」

 低めのドスの利いた声で脅してはみたが、壁役は相変わらずニヤケながら動こうとしない。

 もう、実力行使あるのみだ。俺は壁役のみぞおちに容赦なく拳を突き入れた。

 満員電車で踏ん張りも効かない状態だから、大した威力ではないが体を鍛えてない奴には有効みたいだった。
 壁役の顔が歪み、よろけて他の乗客に倒れ掛かる。
 壁役がどいたおかげで目の前に先ほどの泣き顔の女の子が現れた。
 女の子の下の方を見れば、見事に痴漢の手の平がぴったりとくっついているのが分かる。

 痴漢は触ることに夢中なのか壁役が倒れたことに気づいていないが、女の子は助けを求める涙目で俺を見てきた。

 カッとなり、痴漢の手首を思いっきり掴んだ。
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