助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

文字の大きさ
29 / 61

おっさん、雪菜に押し切られる

しおりを挟む
 ほどなく、最寄り駅に着いた。
 改札口を出ると白菊の生徒と思われる女生徒たちがチラホラ歩いていた。
 そうか、お嬢様校とはいえ、全員が金持ちの子供という訳では無いんだろうな。
 だからと言って、騒いで歩いている子はおらず上品な立ち振る舞いで歩いていた。

 九条さんは電車を降りた時点で気持ちを整えたのか泣きやんでいたが、顔色も良くなく足取りも重い。
 自然と俺と綾華の歩くペースは雪奈に合わせる形になる。

 まあ、このペースでも始業時間までは余裕だろな。
 やっぱ、時間に余裕を持って行動するって大事だよね。

 そんな場違いなことを考えているとか細い声が聞こえてきた。

「あ、あの申し訳ありません」

 その声に振り向くと九条さんが俺に頭を下げていた。

「え、いや、ちょっと謝れるような事されてないから頭をあげてよ」
「い、いえ、お礼が遅くなり申し訳ありません。わたくしは九条雪奈と申します。助けていただいてありがとう存じます。」
「あぁ、なんだそんな事か。気にしないでいいからとりあえず頭をあげて」

 通学路の往来で頭を下げられるなんて居心地が悪すぎる。
 慌てて周りを見てみたが、今のやり取りに気づいた人はいなさそうだった。
 九条さんが頭を上げるのを待って歩くように促す。
 お嬢様二人と一緒に俺が歩いているってだけでも奇異の視線を集めること間違いないのに、立ち止まりながら話していたら間違いなく職質ものだ。

「俺は若宮英二。ホント、気にしないでいいよ。男として当然の事っていうか、成り行きでっていうか」

 言えない。助けようか迷ったなんて。
 助けた理由が綾華の評判を気にしたからだなんて。

「いえ、このご恩は一生忘れません」

 いえ、忘れてください。
 そんな重いもん求めた訳じゃないから。

「わたくし、本当に怖かったのですのよ。護身術は嗜んでおりましたが、いざあの様な状況になると体がすくんでしまって。お恥ずかしい限りですわ」
「あー、普通はそうなるもんだから恥ずかしがることじゃないよ。いくら、普段から鍛えていても身がすくむ時はあるからなぁ」
「若宮様はお優しいんですのね」

 俺のをフォローと受け取ったのか、九条さんは恥ずかしそうに微笑みながら俺を見てきた。
 いや、フォローじゃなんだけどね。結局は胆力の問題でさ、いざという時に練習通りに身体が動くかなんてのは肝っ玉の小さい人には無理なんだよ。
 流石にお嬢様に対して肝っ玉がどうのこうのと言うのは気が引けるので黙るしかない。
 むしろ、正直にそう言ったら身体がすくんだのは九条さんの肝っ玉が小さかったらだよと同義だ。

「若宮様も武術の心得がございますの???」
「いや、俺のは我流かな」
 
 何か習っていたわけじゃなく、中高時代に良太とツルんで不良たちと喧嘩をしたから自然に腕っぷしだけは強くなっただけ。空手なり柔道の有段者相手だったら間違いなく撃沈だろう。

「我流で嗜むなんて素晴らしいですわ。向上心がおありですのね」

 いや、どうしてそうなる?
 しかも、何故か顔を赤らめてキラキラした目で俺を見てくるし。

「しかも、先ほどの様にわたくしを助けてくれる様な男らしさ。素敵ですわ」
「あ、あの九条さん?」
「そんな他人行儀な。若宮様、できれば雪奈と呼んでいただければ嬉しいですわ」

 いや、俺と九条さんは他人行儀も何も他人でしょう?
 助けを求める様に綾華の方を見ると、何故か綾華はすねた様にそっぽを向いてしまった。
 ここは助けてよ綾華さん。

「いや、九条さん。いきなり名前で呼ぶのは色々とよろしくないんじゃ???」
「わたくしの親しい友人たちは、雪奈と呼びますので若宮様もお気になさらないでくださいませ」

 俺と九条さんは親しくないし、九条さんが気にしなくても俺が気にするし。
 ちょっと顔を近づけすぎじゃないでしょうか九条さん。
 そんな心の抵抗もむなしく、白菊女学園の校門が見えてきた頃には雪奈と呼ぶ様に押し切られてしまった。
 校門での別れ際に、綾華の微笑みが心なしか冷たかったのは気のせいだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...