助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

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おっさん、綾華に妬かれる

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 流石に校内はまずいよ、綾華さん。
 この前の送迎場での時もそうだったけど、外でもナチュラルに手を繋ぐようになったよね、綾華さん。
 そんな俺の内心を知ってか知らずか、幸せそうに俺の顔を見てくる。

 初めて見る綾華の化粧顔。先ほどは遠めだったが、今は至近距離。
 普段はスッピンであどけなさの残る顔立ちなのに薄化粧でこうも雰囲気が変わるのか。
 大学や社会人になれば、一気に社交界の注目の的だろう。
 何故か、俺の心臓が早鐘の様に鳴っている。
 おかしいな、今までこんな事はなかったし、見つめられるのは四条家で慣れているはずなのに。

 そんな事を考えていると綾華が顔を寄せ、俺の耳元で囁いてきた。

「若宮様、遅かったですわ」

 薄い暗い講堂の中で女性が男性の耳元に顔を寄せているなど、周りから見ればカップルがいちゃついていると思われてもしょうがない。当の綾華には特にそういう意識はないのだろうが。
 やむえず、周りを気にしつつ俺も綾華の耳元で囁き返す。

「悪い、ちょっと奥様に……」

 変に意識しているせいか、普段は慣れている綾華の香りを変に意識してしまい鼓動が倍速である。
 そんな俺の内心を知らず、再び耳元に口を寄せてくる。
 待って、綾華さん、今の状態で耳元に吐息は刺激が強い……

「えぇ、お母様と桜庭さんにお洋服を選んでいただいたのでしょう?」
「なんで、分かった? まさかテレパシー!?」
「テレパシー? 講堂で準備していた時に桜庭さんから連絡がきましたの。ですから、遅れる事は分かっていたのですけど、なかなかお見えにならず心配いたしましたわ」
「あぁ、ちょっと講堂の位置が分からなくてな。偶然会った西園寺さんに案内してもらった」

 本当は偶然ではないのだか、言えば要らぬ波風を起こすことになりそうなので、真実は伏せておいた。
 俺の手を握る綾華の手に少し力が入り、顔も心なしか動揺した様に見える。
 俺から視線を少し離し、下を向いたかと思えばまた視線を上げてくる。

「どうした?」
「若宮様が西園寺様と一緒に校内を歩いているのを想像したらちょっと悲しくなりましたの」
「いや、ただ案内してもらっただけだぞ?」
「それは分かっておりますわ。でも、最初に若宮様と校内を歩くのはわたくしだと思っておりましたのに」

 だったら、事前に講堂の場所を分かり易く説明してね、綾華さん。

 麗奈も初めての人が講堂にたどり着くのは難しいって言っていたし、あなたは大きい建物としか情報くれなかったじゃないですか。
 そんなことを綾華に愚痴っても逆効果なので、言葉をぐっと飲みこんだ。

「ごめんな、じゃあ、後で校内を案内してくれ。西園寺さんには中庭から講堂まで連れてきてもらっただけだし」
「えぇ、後ほどご案内差し上げますわ」
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