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おっさん、暇を貰う
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クリスマス礼拝の翌日、俺は一週間ぐらい暇を貰えないかと四条総裁に頼んだ。
理由は実家からの電話だ。
電話の主はお袋からで、一週間ぐらい実家を手伝ってもらえないかということだった。
どうも親父の体調が良くないらしい。持病は特に無いはずだが、親父も高齢だ。
身体に無理がたたっていても不思議ではない。
四条家から綾華の教育係として給料を貰い居候している以上、雇い主である四条総裁には話を通さなきゃいけない。
実家が温泉旅館を営んでおり、人手が必要なことも伝えた。
「事情が事情だ、問題ないよ。ただ、綾華が何と言うかだけ心配だね。物分かりの悪い子ではないが、若宮君が絡むとね……」
四条総裁は苦笑しながら電話で綾華を呼び出し、事情を話すと案の定、目に涙を浮かべ崩れ落ちた。
慌てて、綾華を支えて椅子に座らす。四条総裁の手前、綾華に親し気に触れるのはどうかと思ったが、むしろ俺の役目で当然という雰囲気を四条総裁は出していた。
「……そんな……若宮様が……一週間も……いらっしゃらないなんて……」
口元を押さえ、涙を滝の様に流しながら綾華は身体を震わす。
そんな綾華の背中を優しく撫でながら、俺は思った。
別に今生の別れじゃないのだから、そんなに悲しまなくても。
全く泣き止まない綾華を前に、四条総裁は困った顔で俺を見てきた。
「あー、若宮君。こういうのはどうだろう。綾華が君の実家に同行するというのは」
「は?」
おい、何を言い出すんだこのおっさん。
だが、その言葉を聞いた途端に綾華が泣き止み、「その手があったのですね!」という目で俺を見てきた。
「日頃、若宮君には綾華が世話になっているし、お礼を言う意味でも綾華を遣わしてもいいと思う。それに若宮君の実家が温泉旅館ともなれば、綾華にとっても良い社会勉強になるだろう」
いや、強引すぎるだろその理屈。冷静に考えて中年のおっさんが美少女を連れて長旅とかありえないし。
端から見れば完全に職質案件だわ。
流石に反論しようと思った矢先に袖が軽く引っ張られる。
見なくても分かる。てか、見たら負けだ。
俺はあえて気づかないふりをして四条総裁の方を見ると苦笑して頷いている。
いや、貴方のせいでしょう総裁。
執拗にクイックイッと引っ張られる袖。
諦めて袖を引っ張っている綾華を見ると、目を輝かせながら何度も頷いている。
その目が「誰が何といっても、わたくしは同行いたしますわ!」と訴えている。
これはもう詰んだな。
「一応、聞きますが親として娘の身が心配じゃないんですか? 仮にも独身男と可愛い娘が旅をするんですよ。娘の身に何かあったらとか不安ではないんですか?」
「まあ、可愛いだなんて。それに若宮様にならわたくしは何をされても問題ありませんわ」
うん、君は少し黙ってようか綾華君。
頬を赤らめながら自分の世界に入っている綾華を尻目に四条総裁を見た。
「若宮君の事は信頼しているからね。それに君の実家までは四条家が責任もって送るから大丈夫だ」
「と、いいますと?」
「我が家のヘリで君の実家の近くまで送らせてもらうよ。我が家のヘリポートから飛んで行けば新幹線を乗り継いで行くよりも早い」
マジで? いや、確かに新幹線に乗らずに直線移動の方が楽だし旅費が浮いて有難いけどさ。
観念するしかないか。この状態の綾華を再度どうにかするなんて不可能だろうし。
「分かりました。綾華さんを責任もってお預かりします」
「そんな、責任を持っていただけるなんて……」
だから、黙ってようか綾華君?
理由は実家からの電話だ。
電話の主はお袋からで、一週間ぐらい実家を手伝ってもらえないかということだった。
どうも親父の体調が良くないらしい。持病は特に無いはずだが、親父も高齢だ。
身体に無理がたたっていても不思議ではない。
四条家から綾華の教育係として給料を貰い居候している以上、雇い主である四条総裁には話を通さなきゃいけない。
実家が温泉旅館を営んでおり、人手が必要なことも伝えた。
「事情が事情だ、問題ないよ。ただ、綾華が何と言うかだけ心配だね。物分かりの悪い子ではないが、若宮君が絡むとね……」
四条総裁は苦笑しながら電話で綾華を呼び出し、事情を話すと案の定、目に涙を浮かべ崩れ落ちた。
慌てて、綾華を支えて椅子に座らす。四条総裁の手前、綾華に親し気に触れるのはどうかと思ったが、むしろ俺の役目で当然という雰囲気を四条総裁は出していた。
「……そんな……若宮様が……一週間も……いらっしゃらないなんて……」
口元を押さえ、涙を滝の様に流しながら綾華は身体を震わす。
そんな綾華の背中を優しく撫でながら、俺は思った。
別に今生の別れじゃないのだから、そんなに悲しまなくても。
全く泣き止まない綾華を前に、四条総裁は困った顔で俺を見てきた。
「あー、若宮君。こういうのはどうだろう。綾華が君の実家に同行するというのは」
「は?」
おい、何を言い出すんだこのおっさん。
だが、その言葉を聞いた途端に綾華が泣き止み、「その手があったのですね!」という目で俺を見てきた。
「日頃、若宮君には綾華が世話になっているし、お礼を言う意味でも綾華を遣わしてもいいと思う。それに若宮君の実家が温泉旅館ともなれば、綾華にとっても良い社会勉強になるだろう」
いや、強引すぎるだろその理屈。冷静に考えて中年のおっさんが美少女を連れて長旅とかありえないし。
端から見れば完全に職質案件だわ。
流石に反論しようと思った矢先に袖が軽く引っ張られる。
見なくても分かる。てか、見たら負けだ。
俺はあえて気づかないふりをして四条総裁の方を見ると苦笑して頷いている。
いや、貴方のせいでしょう総裁。
執拗にクイックイッと引っ張られる袖。
諦めて袖を引っ張っている綾華を見ると、目を輝かせながら何度も頷いている。
その目が「誰が何といっても、わたくしは同行いたしますわ!」と訴えている。
これはもう詰んだな。
「一応、聞きますが親として娘の身が心配じゃないんですか? 仮にも独身男と可愛い娘が旅をするんですよ。娘の身に何かあったらとか不安ではないんですか?」
「まあ、可愛いだなんて。それに若宮様にならわたくしは何をされても問題ありませんわ」
うん、君は少し黙ってようか綾華君。
頬を赤らめながら自分の世界に入っている綾華を尻目に四条総裁を見た。
「若宮君の事は信頼しているからね。それに君の実家までは四条家が責任もって送るから大丈夫だ」
「と、いいますと?」
「我が家のヘリで君の実家の近くまで送らせてもらうよ。我が家のヘリポートから飛んで行けば新幹線を乗り継いで行くよりも早い」
マジで? いや、確かに新幹線に乗らずに直線移動の方が楽だし旅費が浮いて有難いけどさ。
観念するしかないか。この状態の綾華を再度どうにかするなんて不可能だろうし。
「分かりました。綾華さんを責任もってお預かりします」
「そんな、責任を持っていただけるなんて……」
だから、黙ってようか綾華君?
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