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白の記憶 十八
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そうして訪れたのは豊島君の殺害現場。そう、殺害だ。私は後ろ斜め上で浮かんでいる先生の方を見た。その視線の意味を理解したらしい先生が首を横に振る。
「オレじゃねェ」
「そう、なら誰?」
「さァ?」
斜めに一刀両断、ずんばらり、ってヤツだ。左肩から右脇腹へ……ということは、と考えながら架空の武器を握り、振ってみる。犯人は右利きだろうか。まぁ、どうでもいいが。
「これで生き残りは私と畜生と蘭君かな? モブ君はいる?」
「今この学校の中で生きてンのはお前を含めて三人。死んでンのでオレが把握してるのがオレ含めて三人。把握できねェのが……来た」
咄嗟に豊島君の上半身を掲げて初撃を防ぐ。とはいえ、そのまま重ねて四つなんて冗談じゃないので刃を受け止めた瞬間に手放してお別れしたのだけれど。うっわ……と先生が心底嫌そうな呻き声を漏らしているが知ったこっちゃない。
さて、距離を取って改めてはじめまして。あぁ、ダウンロードコンテンツで見た顔だ。返り血塗れの男子用制服に、右手の日本刀がなければ是非仲良くしたい。反語だよ、クソッタレ。裏ボス、鏡野有人のご登場だ。
「はじめまして、こんばんは。話は通じるかな? 日本語はわかる? できれば同じ倫理観や常識に基づいて話したいものだけど」
なんて話しかければ、裏ボス君はきょとんとしていた。有子が可愛い系だからか、その要素を引き継いでいる彼も顔だけは可愛いんだよな、顔だけは。中身がキリングマシーンって所が駄目だ。
「……はじめまして、こんばんは。貴方は僕の敵なのかな?」
「それは君の敵という言葉に対する思いによるかな。君は何をもって敵と敵以外を分けているの?」
「鏡野有子を傷つけるもの全てが敵だよ」
「おや、ならさっきの肉盾……んん、豊島君は敵だったから殺されてしまっていたのかな」
「豊島恵一に豊島恵子、岸祐樹と岸祐希、蘭尚に蘭尚美。この三人は何があろうと、何をしようと、敵以外の何者でもない」
あぁ、なるほど。男であれ成れの果……女体化であれ、彼等三人は絶対的な敵という訳か。だったら私に対する初撃の殺意の高さがおかしいだろうがふざけんな。いやまぁ、傷つけられる前に殺してしまえってのはある意味合理的ではあるけれども。
「私はここから出たいだけだよ、君の敵じゃない」
「そうなの?」
「後ろのコイツは知らない人ですね、誰ですか?」
「お前……!!」
手の平は返すためにあるというのがこの瞬間からの私の持論だ。信じられないと言わんばかりの顔をしている先生だけれど、アンタも私を殺しているからまぁそこはね、私怨マシマシってヤツだ。
「……でも、貴方は私と戦争をしたいのでしょう?」
あ、と思った瞬間には駆け出していた。最高のスタートダッシュを切れたと思う。有人がいるなら有子は引っ込んでろよこちとら一人しかいねぇんだぞふざけんな。なお先生は私の肩に手を置いていて、どうやらそうしていると磁石のように追随できるらしい。楽そうでいいな、交代してほしい。
とはいえ、何せ、裏ボスの影からラスボスこと有子、いや、タソガレアリスが湧いて出たので私としても混乱の極みなのだ。取り敢えずヘイトをなすりつけるための残機もとい畜生が近くにいないか探しつつ走り続ける。
「あっちもループ? 前の周回? 覚えてるみてェだな」
「聞かれていないと思って切った大見得がここで私を殺すことになるとはね」
「あッははは、バカみてェ」
「何笑ってやがる」
悪態をつきながらも階段は慎重に。有子も滑ってとんでもない目に遭った場所だ、気をつけて然るべきだろう。まぁ……半分は畜生の所業ではありますが……。
「日本刀とオカルトパワーの融合は駄目だろクリアさせる気がねぇ!!」
マスターキーで開けた部屋に飛び込み、鍵を閉める。有子はどうだか知らないが、有人は物理法則に従っているようだし、これで一息はつけるだろう。
「オレじゃねェ」
「そう、なら誰?」
「さァ?」
斜めに一刀両断、ずんばらり、ってヤツだ。左肩から右脇腹へ……ということは、と考えながら架空の武器を握り、振ってみる。犯人は右利きだろうか。まぁ、どうでもいいが。
「これで生き残りは私と畜生と蘭君かな? モブ君はいる?」
「今この学校の中で生きてンのはお前を含めて三人。死んでンのでオレが把握してるのがオレ含めて三人。把握できねェのが……来た」
咄嗟に豊島君の上半身を掲げて初撃を防ぐ。とはいえ、そのまま重ねて四つなんて冗談じゃないので刃を受け止めた瞬間に手放してお別れしたのだけれど。うっわ……と先生が心底嫌そうな呻き声を漏らしているが知ったこっちゃない。
さて、距離を取って改めてはじめまして。あぁ、ダウンロードコンテンツで見た顔だ。返り血塗れの男子用制服に、右手の日本刀がなければ是非仲良くしたい。反語だよ、クソッタレ。裏ボス、鏡野有人のご登場だ。
「はじめまして、こんばんは。話は通じるかな? 日本語はわかる? できれば同じ倫理観や常識に基づいて話したいものだけど」
なんて話しかければ、裏ボス君はきょとんとしていた。有子が可愛い系だからか、その要素を引き継いでいる彼も顔だけは可愛いんだよな、顔だけは。中身がキリングマシーンって所が駄目だ。
「……はじめまして、こんばんは。貴方は僕の敵なのかな?」
「それは君の敵という言葉に対する思いによるかな。君は何をもって敵と敵以外を分けているの?」
「鏡野有子を傷つけるもの全てが敵だよ」
「おや、ならさっきの肉盾……んん、豊島君は敵だったから殺されてしまっていたのかな」
「豊島恵一に豊島恵子、岸祐樹と岸祐希、蘭尚に蘭尚美。この三人は何があろうと、何をしようと、敵以外の何者でもない」
あぁ、なるほど。男であれ成れの果……女体化であれ、彼等三人は絶対的な敵という訳か。だったら私に対する初撃の殺意の高さがおかしいだろうがふざけんな。いやまぁ、傷つけられる前に殺してしまえってのはある意味合理的ではあるけれども。
「私はここから出たいだけだよ、君の敵じゃない」
「そうなの?」
「後ろのコイツは知らない人ですね、誰ですか?」
「お前……!!」
手の平は返すためにあるというのがこの瞬間からの私の持論だ。信じられないと言わんばかりの顔をしている先生だけれど、アンタも私を殺しているからまぁそこはね、私怨マシマシってヤツだ。
「……でも、貴方は私と戦争をしたいのでしょう?」
あ、と思った瞬間には駆け出していた。最高のスタートダッシュを切れたと思う。有人がいるなら有子は引っ込んでろよこちとら一人しかいねぇんだぞふざけんな。なお先生は私の肩に手を置いていて、どうやらそうしていると磁石のように追随できるらしい。楽そうでいいな、交代してほしい。
とはいえ、何せ、裏ボスの影からラスボスこと有子、いや、タソガレアリスが湧いて出たので私としても混乱の極みなのだ。取り敢えずヘイトをなすりつけるための残機もとい畜生が近くにいないか探しつつ走り続ける。
「あっちもループ? 前の周回? 覚えてるみてェだな」
「聞かれていないと思って切った大見得がここで私を殺すことになるとはね」
「あッははは、バカみてェ」
「何笑ってやがる」
悪態をつきながらも階段は慎重に。有子も滑ってとんでもない目に遭った場所だ、気をつけて然るべきだろう。まぁ……半分は畜生の所業ではありますが……。
「日本刀とオカルトパワーの融合は駄目だろクリアさせる気がねぇ!!」
マスターキーで開けた部屋に飛び込み、鍵を閉める。有子はどうだか知らないが、有人は物理法則に従っているようだし、これで一息はつけるだろう。
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