ETDの雑用係

とりい とうか

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序章

序章

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「お前、私のダンジョンの雑用係になれ」


 そんな言葉を、今の主人からかけられて、四つの季節が一巡り。ノーイは、こんなはずじゃあなかったんだけどなぁ、と内心でぼやきながら、触手の巣穴に落ちて堕ちた冒険者を引き上げた。冒険者の素肌にまとわりついている触手たちは、魔除けの霧吹きを一吹きすれば退散する。
 粘液まみれの冒険者は男だったらしく、とはいえ鼻の穴から口に出しては言えない穴まで隈なく触手たちに弄ばれて瀕死の状態。このままでは安全地帯まで運ぶ間に死にそうなので、取り敢えずは床に横たえて顎を上げた。

「あー……『貫け雷』」

 ばちんと弾けたのは初級雷魔法。ノーイにはその理屈が解らないのだが、心臓が止まっている人間に雷魔法をかければ高確率で心臓が再び動き出すと教わった。その教えの通り、数回雷魔法をかければ倒れていた男の心臓は再び動き出す。

「よしよし……『吹け風』」

 次に初級風魔法。これもまたノーイにはいまいち解っていないのだが、人間は心臓と呼吸が止まってしまうと簡単に死んでしまうので、風魔法で体の中の空気を入れ替えてやらないといけないとのことだった。そうしてしばらく魔法をかけ続ければ、男が激しく咳き込み始める。

「おーい、見えてるか? 聞こえてるか?」

 ノーイは魔法を止め、涙ぐみながら荒い呼吸を繰り返す男の目の前で手を振る。男は、体を強張らせて逃げようとしたが、腰が抜けていて動けずにいた。

「ん、よし、生きてるな。これ飲めるか? 駄目なら口に入れるだけでもいいんだけど……」

 力が入らない体でそれでも暴れようとする男の目の前に、ノーイが差し出したのは冒険者ギルドでお馴染みの体力回復用ポーション。その冒険者ギルドの紋章を見た男は、暴れるのを止めて泣き始めた。
 死ぬかと思っていた所に、同じギルドに所属している助っ人が来たという安堵。感情が振り切れてしまった男は、泣きながらポーションを受け取り、口の端からこぼしながらも飲み下す。

「いい子だな、こっちも飲めるか? 飲み終わったら安全地帯まで行って、脱出用の魔法書があるから、それを使って帰ったらいい」

 今度は魔力回復用ポーションを差し出され、素直に飲み始める男。ノーイはそんな男を励まし続けながら、男の視界に入らないように手指を動かした。

 サンバンツウロ コマ ワナ ゼンブ テッシュウ

 ノーイの影から伸びた手が、手信号を送っていたノーイの指先に触れる。ノーイは、伸びた手が影の中に戻ったのを確認してから立ち上がった。

「肩を貸して……あぁ、脚を怪我してるんだろう? 大丈夫、大丈夫、俺は魔法が使えるんだ。片手が塞がってたって、遅れは取らないさ」

 命の恩人を危険にさらす訳には、と固辞しようとする男を担ぐようにして立たせ、歩き出すノーイ。そうして二人は安全地帯まで撤退し、ダンジョンの入口まで魔法書を使って転移した。
 必ずやこの恩は返します、と何度も何度も頭を下げて帰路についた冒険者を見送りながら、ノーイは思う。やっぱり、俺はこんなことをするはずじゃあなかったんだけどなぁ、と。何故ノーイがこんなことをしているのか、その理由を知るには、季節を四つ遡る必要があった。
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