2 / 116
一章 ヴォジャノーイ
一
しおりを挟む
そもそもノーイとは何なのかと言えば、少なくとも人間ではない。今は冴えない中年冒険者の姿を取っているが、生まれた時は影に潜み影を操る類いのモンスターだった。
それが、本能的な生き汚さで何とか生き残り続け、不定形だった体が獣そして人の形を取れるようになり、いくつかの魔法が使えるようになり、いつの間にか魔王軍の一角として祭り上げられていた。
やがて彼は魔王によって「ヴォジャノーイ」と名付けられ、沼地や暗闇に蔓延る存在を支配する権利を与えられた。本人は全く意図していないことであったが、他の四天王と異なり無暗に配下を虐げなかった、もとい配下に対して何もしなかったことから熱狂的な人気を誇るようになり、結果として更に魔王軍へ貢献することとなり。
気づけば魔王軍の第二位、魔王の右腕とまで呼ばれる存在へと成り果てていた。
ノーイは、そうなってしまってとても困っていた。ノーイはただ、楽をして生きていたいだけだった。なのに、魔王の右腕なんて呼ばれていたら、あの恐ろしい超越者、人間の中に在って人間から外れた者、そう、勇者に狙われてしまう。
そうして案の定、魔王を倒すために勇者がやって来た。ノーイの配下たちは魔王を、そしてノーイを守るために散っていった。勇者たちはその猛攻に傷つきはしたものの、そこらのモンスターが与えられる傷など掠り傷に等しい。
だから、ノーイはあっさりと決意した。逃げよう。魔王はノーイが勇者たちを始末すると期待していたようだが、そもそもノーイは魔王に立てる義理も何もない。名前をつけられたのだって、ノーイが望んだことではなかったのだ。
ノーイはそもそもが不定形であったため、見た目を変えるのは朝飯前だった。ノーイは、勇者の目を欺くために冒険者の男の姿に化けた。この冒険者というやつらは、利が得られるとあらばどこにだって涌いてくる、蛆虫のようなものなのだ。
ノーイは、モンスターに喉笛を食い千切られて死んだ冒険者を装って、魔王が根城としているラストダンジョンの片隅に倒れ伏した。実際、ここの低層にもこの手の冒険者が山といる。だからだろう、勇者たちはノーイが魔王の右腕たるヴォジャノーイとは気づかず、何なら勇者と共にやって来ていた大神官は、ノーイへ向かって死者への祈りまで捧げて行った。
こうなれば後は見つからないよう逃げるだけである。勇者たちが充分に離れてから、ノーイは元の姿に戻り、そのまま馬の姿に化けて駆け出した。人間の姿は紛れることこそ得意だが、走ることはそんなに得意ではない。そしてノーイは、見事に逃げ仰せた。
それが、本能的な生き汚さで何とか生き残り続け、不定形だった体が獣そして人の形を取れるようになり、いくつかの魔法が使えるようになり、いつの間にか魔王軍の一角として祭り上げられていた。
やがて彼は魔王によって「ヴォジャノーイ」と名付けられ、沼地や暗闇に蔓延る存在を支配する権利を与えられた。本人は全く意図していないことであったが、他の四天王と異なり無暗に配下を虐げなかった、もとい配下に対して何もしなかったことから熱狂的な人気を誇るようになり、結果として更に魔王軍へ貢献することとなり。
気づけば魔王軍の第二位、魔王の右腕とまで呼ばれる存在へと成り果てていた。
ノーイは、そうなってしまってとても困っていた。ノーイはただ、楽をして生きていたいだけだった。なのに、魔王の右腕なんて呼ばれていたら、あの恐ろしい超越者、人間の中に在って人間から外れた者、そう、勇者に狙われてしまう。
そうして案の定、魔王を倒すために勇者がやって来た。ノーイの配下たちは魔王を、そしてノーイを守るために散っていった。勇者たちはその猛攻に傷つきはしたものの、そこらのモンスターが与えられる傷など掠り傷に等しい。
だから、ノーイはあっさりと決意した。逃げよう。魔王はノーイが勇者たちを始末すると期待していたようだが、そもそもノーイは魔王に立てる義理も何もない。名前をつけられたのだって、ノーイが望んだことではなかったのだ。
ノーイはそもそもが不定形であったため、見た目を変えるのは朝飯前だった。ノーイは、勇者の目を欺くために冒険者の男の姿に化けた。この冒険者というやつらは、利が得られるとあらばどこにだって涌いてくる、蛆虫のようなものなのだ。
ノーイは、モンスターに喉笛を食い千切られて死んだ冒険者を装って、魔王が根城としているラストダンジョンの片隅に倒れ伏した。実際、ここの低層にもこの手の冒険者が山といる。だからだろう、勇者たちはノーイが魔王の右腕たるヴォジャノーイとは気づかず、何なら勇者と共にやって来ていた大神官は、ノーイへ向かって死者への祈りまで捧げて行った。
こうなれば後は見つからないよう逃げるだけである。勇者たちが充分に離れてから、ノーイは元の姿に戻り、そのまま馬の姿に化けて駆け出した。人間の姿は紛れることこそ得意だが、走ることはそんなに得意ではない。そしてノーイは、見事に逃げ仰せた。
0
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる