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五章 ルサールカ
四
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勇者がいない今、大魔女が生きていようが死んでいようが、ノーイにはあまり関係がない。が、しかし、ノーイの生存に関わってくるならば、行動不能にするか殺すか――後者は難しいだろうとノーイは舌打ちした。
生死を司るのは死魔法だが、生を繋ぐ魔法は幾つもある。確か大魔女は、その内の何個かを修得していたはずだ。ここで死魔法を放つのは簡単だが、外した場合のあれこれを考えると気が進まない。
「で、どうするのじゃ? 我々が手助けしてやっても良いが……次期魔王様には自力で乗り越えてほしいものじゃなぁ」
「あ、だから殺さなかった感じ?」
「まぁそれもある。後は、ヴォジャノーイがいるならば、万が一は起こらないであろう?」
「……そうでもないってぇ」
がしがしと頭を掻いてぼやくノーイ。そうして、はぁ、と大きな溜め息を一つ漏らし――詠唱を始める。
「『聞け、死者の都に棲む亡者。汝の怨恨、今此処で晴らしてやろう。起き上がれ、起き上がれ、這い出よ、這い出よ。今より此処は死者の都、我が治める絶望の都』」
短縮しても長い、上級死魔法の呪文。ほぼ破級に近いそれは、死者の残像を顕現するためのもの。大量の魔力がノーイに集まり、それを察したダンジョンの主人と大魔女が彼を認識する。
「逃げてなかったのか!?」
「お前はっ……生きてたの!?」
流石に姿形の保持に回す意識はなく、魔王の右腕と呼ばれていた頃の姿を晒しているノーイを見た二者の反応は顕著。ノーイは、驚いているらしいダンジョンの主人に向かって、ひらりと片手を振った。
「あんたが死んだら困るからな」
この言葉、真意としては「あんたが死んだら(現状大魔女を何とかできる手立てが一つ減る、真名を握られているから死に際に何をされるか判らなくて怖い、そしてペインちゃんが次期魔王として可愛がっているダンジョンの主人をペインちゃんの見ている前で見捨てたとしたら色んな意味でオレが)困るからな」である。
しかし、真意を伏せて状況だけを見れば、大層な忠義者である。主人を追い詰めようとしていた相手に対して、己の最大の(とはいえノーイは自身の生存のためにまだいくつかの切り札を隠している)力で抗うその姿。ペインはノーイの次期魔王への献身に感激し、大魔女は先代魔王の右腕であったノーイがそこまでして守るこの相手こそ次代の魔王だと確信した。
「ノーイ……」
「良いわ、ここでもう一度――ッ!?」
どかん、と派手な音がして、大魔女が吹き飛ばされる。辛うじて墜落直前に体勢を整え、再び浮かび上がった大魔女だが、その目は驚愕によって大きく見開かれた。
『オデヲゴロジダ!! オデノダデヲゴワジダ!! ゴロズ、ゴロズ、オデノダデェェエエエ!!』
それは、首の断面から闇色を溢す大鬼。大魔女が勇者と共に過ごした日々、その中でも屈辱な、思い出したくもない記憶――あの日あの時、手も足も出なかった相手の残像が、そこに在った。
生死を司るのは死魔法だが、生を繋ぐ魔法は幾つもある。確か大魔女は、その内の何個かを修得していたはずだ。ここで死魔法を放つのは簡単だが、外した場合のあれこれを考えると気が進まない。
「で、どうするのじゃ? 我々が手助けしてやっても良いが……次期魔王様には自力で乗り越えてほしいものじゃなぁ」
「あ、だから殺さなかった感じ?」
「まぁそれもある。後は、ヴォジャノーイがいるならば、万が一は起こらないであろう?」
「……そうでもないってぇ」
がしがしと頭を掻いてぼやくノーイ。そうして、はぁ、と大きな溜め息を一つ漏らし――詠唱を始める。
「『聞け、死者の都に棲む亡者。汝の怨恨、今此処で晴らしてやろう。起き上がれ、起き上がれ、這い出よ、這い出よ。今より此処は死者の都、我が治める絶望の都』」
短縮しても長い、上級死魔法の呪文。ほぼ破級に近いそれは、死者の残像を顕現するためのもの。大量の魔力がノーイに集まり、それを察したダンジョンの主人と大魔女が彼を認識する。
「逃げてなかったのか!?」
「お前はっ……生きてたの!?」
流石に姿形の保持に回す意識はなく、魔王の右腕と呼ばれていた頃の姿を晒しているノーイを見た二者の反応は顕著。ノーイは、驚いているらしいダンジョンの主人に向かって、ひらりと片手を振った。
「あんたが死んだら困るからな」
この言葉、真意としては「あんたが死んだら(現状大魔女を何とかできる手立てが一つ減る、真名を握られているから死に際に何をされるか判らなくて怖い、そしてペインちゃんが次期魔王として可愛がっているダンジョンの主人をペインちゃんの見ている前で見捨てたとしたら色んな意味でオレが)困るからな」である。
しかし、真意を伏せて状況だけを見れば、大層な忠義者である。主人を追い詰めようとしていた相手に対して、己の最大の(とはいえノーイは自身の生存のためにまだいくつかの切り札を隠している)力で抗うその姿。ペインはノーイの次期魔王への献身に感激し、大魔女は先代魔王の右腕であったノーイがそこまでして守るこの相手こそ次代の魔王だと確信した。
「ノーイ……」
「良いわ、ここでもう一度――ッ!?」
どかん、と派手な音がして、大魔女が吹き飛ばされる。辛うじて墜落直前に体勢を整え、再び浮かび上がった大魔女だが、その目は驚愕によって大きく見開かれた。
『オデヲゴロジダ!! オデノダデヲゴワジダ!! ゴロズ、ゴロズ、オデノダデェェエエエ!!』
それは、首の断面から闇色を溢す大鬼。大魔女が勇者と共に過ごした日々、その中でも屈辱な、思い出したくもない記憶――あの日あの時、手も足も出なかった相手の残像が、そこに在った。
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