41 / 116
八章 パリカー
二
しおりを挟む
大魔女、パリカー。この国では勇者と共に魔王を討った英雄としてではなく、その後に起こした騒動の方が有名だ。彼女はこの国の貴族令息たちを何人も侍らせて、食い散らかした(暗喩)のだ。
確かに、国としての思惑はあった。英雄たちを国に留めることができれば、他国への牽制になるし、実際の戦力としても申し分ない。戦士長は元々国の騎士団長であったため問題ないが、最も留め置きたかった勇者ヴェルシエルが平和になった世界を見て回りたいと言い出して旅に出てしまったため、もう一人は何としてでも国に縛りつけたかったのだ。
だから、パリカーの相手として高位貴族の令息たち、その中でも特に見目の良い者たちを揃えて差し出した。この中の一人でも彼女を留め置く楔となればと。その結果、舞い上がってしまったパリカーが全員おいしくいただいてしまった(暗喩)のは誤算だった。パリカーは御歳百二十、魔女としてはまだまだ若く、力こそ強大なれど心がそれに追いついていなかった。
「いやそれにしたってバカじゃねぇの?」
とは、ノーイの素直な感想である。パリカーの婿探しの矛先は平民に向いたらしく、だがしかし平民たちとて彼女が考えているほど馬鹿ではなかった。大罪人、と先刻の男が漏らしかけたように、彼女がこの国で仕出かした蛮行(直喩)は有名に過ぎる。どれだけ美人だろうと、どれだけ強かろうと、高位貴族そして王族から睨まれている女と結婚しようと思う平民はいない。いや、そもそも平民の結婚相手にそんな望外の強さは不要である。普通に怖い。
「だよなぁ、兄ちゃんもそう思うよなぁ」
「何なの? 大魔女はおかしくなっちゃったの?」
「おいおい兄さん、様をつけねぇと大釜で煮込まれちまうぞ?」
「薬関係はからっきしでしょアイツは」
「アイツ?」
「や、知りませんけど……大魔女様っていうくらいだから薬作るよりばんばん魔法撃ってそうだなって……」
「ちげぇねぇや!!」
わはは、と掲示板の近くにいた男たちが笑う。ノーイも彼等の真似をしてわははと笑いながら冷や汗をかいていた。どうにも気が抜けて墓穴を掘りがちである。この比喩が比喩ではなくならないように気をつけねばならない。本当に。ノーイは改めて気を引き締めた、少なくとも本人の中ではそのようにした。
確かに、国としての思惑はあった。英雄たちを国に留めることができれば、他国への牽制になるし、実際の戦力としても申し分ない。戦士長は元々国の騎士団長であったため問題ないが、最も留め置きたかった勇者ヴェルシエルが平和になった世界を見て回りたいと言い出して旅に出てしまったため、もう一人は何としてでも国に縛りつけたかったのだ。
だから、パリカーの相手として高位貴族の令息たち、その中でも特に見目の良い者たちを揃えて差し出した。この中の一人でも彼女を留め置く楔となればと。その結果、舞い上がってしまったパリカーが全員おいしくいただいてしまった(暗喩)のは誤算だった。パリカーは御歳百二十、魔女としてはまだまだ若く、力こそ強大なれど心がそれに追いついていなかった。
「いやそれにしたってバカじゃねぇの?」
とは、ノーイの素直な感想である。パリカーの婿探しの矛先は平民に向いたらしく、だがしかし平民たちとて彼女が考えているほど馬鹿ではなかった。大罪人、と先刻の男が漏らしかけたように、彼女がこの国で仕出かした蛮行(直喩)は有名に過ぎる。どれだけ美人だろうと、どれだけ強かろうと、高位貴族そして王族から睨まれている女と結婚しようと思う平民はいない。いや、そもそも平民の結婚相手にそんな望外の強さは不要である。普通に怖い。
「だよなぁ、兄ちゃんもそう思うよなぁ」
「何なの? 大魔女はおかしくなっちゃったの?」
「おいおい兄さん、様をつけねぇと大釜で煮込まれちまうぞ?」
「薬関係はからっきしでしょアイツは」
「アイツ?」
「や、知りませんけど……大魔女様っていうくらいだから薬作るよりばんばん魔法撃ってそうだなって……」
「ちげぇねぇや!!」
わはは、と掲示板の近くにいた男たちが笑う。ノーイも彼等の真似をしてわははと笑いながら冷や汗をかいていた。どうにも気が抜けて墓穴を掘りがちである。この比喩が比喩ではなくならないように気をつけねばならない。本当に。ノーイは改めて気を引き締めた、少なくとも本人の中ではそのようにした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる