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八章 パリカー
四
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「アタシの誘いを断るなんて、面白い男……!!」
「つまんない男でいいから解放してくんねぇかなぁ!?」
ノーイの絶叫は黙殺される。娶りなさいという言葉の答えは当然いいえである。にも関わらず、大魔女はめげなかった。めげてほしかった。
「ますます気に入ったわ、新居は帝国にしましょうね」
「あ、王国に定住できないのはわかってるんだ」
「王家を総入れ替えしてもいいなら王国でもいいのだけれど」
「なーんにもよくねぇや!!」
もう笑うしかないノーイ。何言ってんだこの女、ただただ怖い。物理的に壊れた人間というのは多々見てきたし、精神的に壊れたジューダスはつい最近見たのだが、それらとは一線を画するぶっ飛び方をしている。
「じゃあ逆にアタシと結婚するにあたっての問題って何? 何もないでしょう?」
「全部かな……オレの意見とか全然聞かない感じ?」
「どうして聞かなきゃいけないの?」
「おっとそうきたか」
訂正、一線を画するなんて言葉じゃ足りなかった。当事者の意見って一番尊重されなきゃいけないものではなかろうか。ノーイはそう思ったが、大魔女はそうは思っていないらしい。どうして。
「アナタはただ黙って頷けばいいの」
「なーんにもよくねぇってさっきから言ってんだろ」
「どうして?」
「どうしてぇ?」
ノーイは困ってしまった。どうして勇者とその仲間たちは自分に迷惑しかかけないのか。これがモンスターと人間の間にあるという越え難き断絶というやつだろうか。でも人間の中にも魔物使いとかいう職業があったと思う。いつかきっと、モンスターと人間は理解し合えるはずだ。具体的に言うと今、大魔女に自分の意思が間違うことなく伝わってほしいと思っている。
「そしてこの契約書に名前を」
「書かねぇって筆記具持たすなって絶対に書かねぇから」
ぐいぐいくる。握らされた羽根をぺいっと放り投げたノーイは、もう殺してもいっかな……と思い始める。そりゃ大魔女は強くて、多分無傷では殺せないだろうけれど、絶対に殺せない訳ではない。ならばと死魔法の幾つかを頭の中に思い描いたその瞬間だった。
「あっ見つけたぞパリカー!!」
「お前、さっきから何の罪もない人々に向かって墜落し続けているだろう!!」
「いくら時魔法で怪我が治せるからといって他人を傷つけたことが罪にならない訳じゃないからな!!」
どだだだ、と街の方から走ってきた兵士たち。どうやらあの街を守っている人間たちらしい。そして大魔女がノーイに向かって墜落してきたのはどうやら故意的なことだったらしいと知る。もうそれ当たり屋じゃねぇか、とノーイは強く思った。
「ふっ……もういいのよ。アタシは運命の男を見つけたんだから!!」
「いやお前がよくても被害者はよくないんだって」
「ほら、話は詰め所で聞くからついてきなさい」
「逃げたら罪が重なるだけだからな」
「今更多少の傷害罪が重なっても問題ないわ!!」
「あるわ馬鹿か!!」
まぁ確かに、貴族の令息たちを再起不能(暗喩)にした罪から比べたら平民への加害なんて誤差の範疇だろう。大魔女は空中に浮かべていた箒を呼び、柄の先にぶら下げていた魔石を指で弾く。刹那、目を焼く閃光。
「今日の所は見逃してあげるわ!! けれど油断しないことね、アナタはアタシの運命の男……絶対に結婚するんだから!!」
「もうわけわかんねぇや!!」
目を閉じ、開けた先には箒に乗って逃亡態勢に入っている大魔女。兵士たちはそんな彼女を追いかけようとしているが、ノーイは一際大きな声で投げやりな声を上げ、考えることを放棄した。
「つまんない男でいいから解放してくんねぇかなぁ!?」
ノーイの絶叫は黙殺される。娶りなさいという言葉の答えは当然いいえである。にも関わらず、大魔女はめげなかった。めげてほしかった。
「ますます気に入ったわ、新居は帝国にしましょうね」
「あ、王国に定住できないのはわかってるんだ」
「王家を総入れ替えしてもいいなら王国でもいいのだけれど」
「なーんにもよくねぇや!!」
もう笑うしかないノーイ。何言ってんだこの女、ただただ怖い。物理的に壊れた人間というのは多々見てきたし、精神的に壊れたジューダスはつい最近見たのだが、それらとは一線を画するぶっ飛び方をしている。
「じゃあ逆にアタシと結婚するにあたっての問題って何? 何もないでしょう?」
「全部かな……オレの意見とか全然聞かない感じ?」
「どうして聞かなきゃいけないの?」
「おっとそうきたか」
訂正、一線を画するなんて言葉じゃ足りなかった。当事者の意見って一番尊重されなきゃいけないものではなかろうか。ノーイはそう思ったが、大魔女はそうは思っていないらしい。どうして。
「アナタはただ黙って頷けばいいの」
「なーんにもよくねぇってさっきから言ってんだろ」
「どうして?」
「どうしてぇ?」
ノーイは困ってしまった。どうして勇者とその仲間たちは自分に迷惑しかかけないのか。これがモンスターと人間の間にあるという越え難き断絶というやつだろうか。でも人間の中にも魔物使いとかいう職業があったと思う。いつかきっと、モンスターと人間は理解し合えるはずだ。具体的に言うと今、大魔女に自分の意思が間違うことなく伝わってほしいと思っている。
「そしてこの契約書に名前を」
「書かねぇって筆記具持たすなって絶対に書かねぇから」
ぐいぐいくる。握らされた羽根をぺいっと放り投げたノーイは、もう殺してもいっかな……と思い始める。そりゃ大魔女は強くて、多分無傷では殺せないだろうけれど、絶対に殺せない訳ではない。ならばと死魔法の幾つかを頭の中に思い描いたその瞬間だった。
「あっ見つけたぞパリカー!!」
「お前、さっきから何の罪もない人々に向かって墜落し続けているだろう!!」
「いくら時魔法で怪我が治せるからといって他人を傷つけたことが罪にならない訳じゃないからな!!」
どだだだ、と街の方から走ってきた兵士たち。どうやらあの街を守っている人間たちらしい。そして大魔女がノーイに向かって墜落してきたのはどうやら故意的なことだったらしいと知る。もうそれ当たり屋じゃねぇか、とノーイは強く思った。
「ふっ……もういいのよ。アタシは運命の男を見つけたんだから!!」
「いやお前がよくても被害者はよくないんだって」
「ほら、話は詰め所で聞くからついてきなさい」
「逃げたら罪が重なるだけだからな」
「今更多少の傷害罪が重なっても問題ないわ!!」
「あるわ馬鹿か!!」
まぁ確かに、貴族の令息たちを再起不能(暗喩)にした罪から比べたら平民への加害なんて誤差の範疇だろう。大魔女は空中に浮かべていた箒を呼び、柄の先にぶら下げていた魔石を指で弾く。刹那、目を焼く閃光。
「今日の所は見逃してあげるわ!! けれど油断しないことね、アナタはアタシの運命の男……絶対に結婚するんだから!!」
「もうわけわかんねぇや!!」
目を閉じ、開けた先には箒に乗って逃亡態勢に入っている大魔女。兵士たちはそんな彼女を追いかけようとしているが、ノーイは一際大きな声で投げやりな声を上げ、考えることを放棄した。
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