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八章 パリカー
五
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「……っていうことがあってさぁ」
「それは大変でしたねぇ」
「張っ倒すぞお前のせいなんだよ」
「ここに彼女が来たのは百歩譲って私のせいだとしても、今回は違うのではないでしょうか?」
ノーイはぐうの音も出なかった。
大魔女の襲撃(直喩)から数日後、エロトラップダンジョンの最上階にて愚痴っているのは女踊り子の姿をしているノーイと、平神官の服を纏うシェムハザであった。シェムハザはそんなノーイを膝に乗せようとしたが、ノーイが断固として拒否したためテーブルを挟んでの会話である。
「で、しばらくはその姿でいることにした、と……彼女には感謝しなければなりませんね」
瞬間、ノーイの瞳孔がきゅいと獣のように細まった。ぐるる、と喉から剣呑な唸り声が漏れる。冗談ですよ、と微笑むシェムハザから少しばかり距離を取りながら、ノーイは女剣士の姿へと変化する。
「あ、その方は駄目ですよ。私でも知っています」
「え、そうなの?」
「行方知れずと聞いていましたが、納得しました。白百合騎士団長、百合剣のホワイトリリー、ですよね?」
「名前は知らないけど、上司から姫さんをさら……あー、姫さんに会いたいって言われた時に会ったからそうじゃねぇかなぁ」
その姿がさらにぐにゃりと歪み、いつもの中年男性冒険者の姿に変わる。やれやれ、と肩を竦めたノーイは自分で適当に淹れた茶を口にした。どうにも渋味が強くて眉間に皺が寄る。
「あぁ、そう言えばかの国の姫は魔王に拐かされて……」
「言うほど酷い扱いはしてなかったぜ? 何か、魔王が姫を……えーと、姫に会いたがるのは様式美? とか何とか。ちゃんと生かして帰したのに、姫を殺したのはあの国の王じゃん?」
「おっと、人間側に伝わる話と違いますね。姫は魔王によって凌辱されて惨殺された、その亡骸は冒涜的な状態で王城前に放り出されていたとか」
「魔王にさらわれ、んーと、魔王の顔を見たからには他国へ嫁がせるのも自分の国の貴族に下げ渡すのも問題がある? とかで……ま、オレはオレにとって安全なら約束を守る方だから、ちょーっと色々やったけどさ」
「結局あの国は魔王に呪われたとか滅ぼされたとか……」
そんなノーイの姿がまたしても歪み、妙齢の淑女、それこそ高貴さが滲み出すような貴族子女へと変わる。この姿はあんまり使えないからなぁ、なんて笑うノーイに、シェムハザが少しばかり思考する。
「そのままちょっと私の膝の上に座ったりしませんか?」
「お断りですわ」
にべもなく断ったノーイ。だがしかしどうしてだろうか、淑女然とした口調と声のはずなのに、ガラの悪いチンピラのように聞こえるのだった。
「それは大変でしたねぇ」
「張っ倒すぞお前のせいなんだよ」
「ここに彼女が来たのは百歩譲って私のせいだとしても、今回は違うのではないでしょうか?」
ノーイはぐうの音も出なかった。
大魔女の襲撃(直喩)から数日後、エロトラップダンジョンの最上階にて愚痴っているのは女踊り子の姿をしているノーイと、平神官の服を纏うシェムハザであった。シェムハザはそんなノーイを膝に乗せようとしたが、ノーイが断固として拒否したためテーブルを挟んでの会話である。
「で、しばらくはその姿でいることにした、と……彼女には感謝しなければなりませんね」
瞬間、ノーイの瞳孔がきゅいと獣のように細まった。ぐるる、と喉から剣呑な唸り声が漏れる。冗談ですよ、と微笑むシェムハザから少しばかり距離を取りながら、ノーイは女剣士の姿へと変化する。
「あ、その方は駄目ですよ。私でも知っています」
「え、そうなの?」
「行方知れずと聞いていましたが、納得しました。白百合騎士団長、百合剣のホワイトリリー、ですよね?」
「名前は知らないけど、上司から姫さんをさら……あー、姫さんに会いたいって言われた時に会ったからそうじゃねぇかなぁ」
その姿がさらにぐにゃりと歪み、いつもの中年男性冒険者の姿に変わる。やれやれ、と肩を竦めたノーイは自分で適当に淹れた茶を口にした。どうにも渋味が強くて眉間に皺が寄る。
「あぁ、そう言えばかの国の姫は魔王に拐かされて……」
「言うほど酷い扱いはしてなかったぜ? 何か、魔王が姫を……えーと、姫に会いたがるのは様式美? とか何とか。ちゃんと生かして帰したのに、姫を殺したのはあの国の王じゃん?」
「おっと、人間側に伝わる話と違いますね。姫は魔王によって凌辱されて惨殺された、その亡骸は冒涜的な状態で王城前に放り出されていたとか」
「魔王にさらわれ、んーと、魔王の顔を見たからには他国へ嫁がせるのも自分の国の貴族に下げ渡すのも問題がある? とかで……ま、オレはオレにとって安全なら約束を守る方だから、ちょーっと色々やったけどさ」
「結局あの国は魔王に呪われたとか滅ぼされたとか……」
そんなノーイの姿がまたしても歪み、妙齢の淑女、それこそ高貴さが滲み出すような貴族子女へと変わる。この姿はあんまり使えないからなぁ、なんて笑うノーイに、シェムハザが少しばかり思考する。
「そのままちょっと私の膝の上に座ったりしませんか?」
「お断りですわ」
にべもなく断ったノーイ。だがしかしどうしてだろうか、淑女然とした口調と声のはずなのに、ガラの悪いチンピラのように聞こえるのだった。
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