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九章 アーク
四
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ジューダスが作ったスープは、普段自分が作るスープよりもなぜかおいしくて、何となく気に入らなかったノーイである。とはいえ、おいしいに越したことはない。実際、アークはハフハフガツガツと獣のような勢いでスープを飲み黒いパンをかじっている……黒いパンはそのまま食べるには硬すぎるため、スープに浸して柔らかくしてから食べるものなのだが。
「神様!!」
「うーん宗旨替えが単純」
「ですよね、ノーイさんは神です」
「お前は今自分をどう定義してるの?」
自分においしいものを食べさせてくれた者は神様らしい。きらきらした目でノーイを見詰めるアークと、そんなアークにしみじみと頷いてみせるジューダス。ここには正気の人間、かどうかは若干こう本人にも微妙な所ではあるのだが、取り敢えず正気を保っている者は自分しかいないらしいとノーイは天を仰いだ。洞窟なので岩壁しか見えなかったが。
「神様についていきます!! 何したらいいですか? 敵対勢力の秘密を教えましょうか? それとも大きな商店の見張りが一番気を抜いている時を教えたらいいですか?」
「前半はまぁ納得できるとして後半が純粋に犯罪をそそのかしてない?」
「違いますよ!! そんな風に気を抜いていたら危ないよって実地で教えてあげるのは親切じゃないですか!!」
「コイツ、思いの外したたかというか、悪いヤツだな……?」
訝し気に目を細めたノーイが呟く。アークは細っこくてちんまりしていて、ノーイが上から押さえたらくしゃっと潰れてしまいそうな見た目でいて、結構しぶとく生き残りそうな感じだ。もう首を取るとか何とかはどうでもいいから、この場に放置して帰ろうかな、と思うくらいには。
「でも、この子を仲間にするのはいいことですよ」
「え?」
「巫女は神託が一番目立った技ですけど、普通に魔法使いとして優秀ですし、何ならこの子を通じて他の巫女も引き込めるじゃないですか。一教団の抱える巫女なんてそう多くないですし、それらを抱え込むことによる利点と欠点を比べても利点の方が大きいですし」
「急に賢くなられたら対処に困るんだけど」
「僕は賢者なので、そんな気がしているので」
「あ、なるほど賢い時間なのね今は……」
自己の崩壊によって万能性を手に入れたのだろうか。ジューダスのこの汎用性というか、何なのか、普通に怖い。ノーイはコイツが敵に回ろうとしたらなるべく速やかに殺そうという決意を新たにしつつ、賢者であるらしいジューダスに向かって首を傾げた。
「利点と欠点って?」
「利点は言わずもがな、魔力貯蓄庫としての」
「これ以上アイツらにひどいことしないで!! 何でここまでの話を聞いててそんなの利点って言い切れるの!? この人でなし!!」
「俺はモンスターだった……?」
「あ、それは素直になれないんだ」
「モンスターでなければ神では……?」
「さっきオレのこと神様とか言ってなかった?」
「じゃあ私は神官です」
「じゃあって言っちゃってる時点でもうね」
話が盛大に逸れた。
「えぇと、その他の利点としては巫女としての能力ですね。知りたいと思ったことは何でもすぐに知ることができるというのは、諜報員泣かせの能力ですよ。情報は力です、情報さえあれば劣勢でも巻き返せます、そう、情報を制する者が世界を制するのです!! ノーイさんが世界征服を志すならば」
「待て待て待て志さない志してない話を元に戻して」
「欠点としては食い扶持が増えることですけど、それは俺たちが稼げば何とかなりますし、最悪、芋と野菜のスープを与えておけば」
「だからさぁ!! アイツらにそういうことすんなって!! 引っ叩くぞ!!」
「なら、ダンジョン内のアイテムを売ってお金にするとか?」
「それはオレに言われてもな……ダンジョンの主の管轄じゃん」
「じゃあまずはそちらとの交渉ですね。もしもし?」
「遠隔会話のレアアイテム……!!」
さらっとジューダスの懐から取り出されたそれに仰け反るノーイ。どうやらエロトラップダンジョンの主と直通で会話できるらしい。ジューダスはしばらくもそもそと何事かを話していたようだが、比較的短時間で切り上げてノーイへと向き直る。
「ありだそうです」
「何が!?」
「アークとアリーシャとアルカディア、三人まとめて連れてこいと」
「即断即決!!」
「神様について行ってもいいんですか!? やったぁ!!」
「その呼び方は改めてね!!」
「じゃあノーイ様?」
「そうね名前はもう知ってるよねコイツがほいほい呼んでたもんね!!」
ついに我慢し切れなくなってジューダスの頭を引っ叩いたノーイ。ジューダスは間の抜けた声であいたと呟き、へらっと笑ってみせた。
「神様!!」
「うーん宗旨替えが単純」
「ですよね、ノーイさんは神です」
「お前は今自分をどう定義してるの?」
自分においしいものを食べさせてくれた者は神様らしい。きらきらした目でノーイを見詰めるアークと、そんなアークにしみじみと頷いてみせるジューダス。ここには正気の人間、かどうかは若干こう本人にも微妙な所ではあるのだが、取り敢えず正気を保っている者は自分しかいないらしいとノーイは天を仰いだ。洞窟なので岩壁しか見えなかったが。
「神様についていきます!! 何したらいいですか? 敵対勢力の秘密を教えましょうか? それとも大きな商店の見張りが一番気を抜いている時を教えたらいいですか?」
「前半はまぁ納得できるとして後半が純粋に犯罪をそそのかしてない?」
「違いますよ!! そんな風に気を抜いていたら危ないよって実地で教えてあげるのは親切じゃないですか!!」
「コイツ、思いの外したたかというか、悪いヤツだな……?」
訝し気に目を細めたノーイが呟く。アークは細っこくてちんまりしていて、ノーイが上から押さえたらくしゃっと潰れてしまいそうな見た目でいて、結構しぶとく生き残りそうな感じだ。もう首を取るとか何とかはどうでもいいから、この場に放置して帰ろうかな、と思うくらいには。
「でも、この子を仲間にするのはいいことですよ」
「え?」
「巫女は神託が一番目立った技ですけど、普通に魔法使いとして優秀ですし、何ならこの子を通じて他の巫女も引き込めるじゃないですか。一教団の抱える巫女なんてそう多くないですし、それらを抱え込むことによる利点と欠点を比べても利点の方が大きいですし」
「急に賢くなられたら対処に困るんだけど」
「僕は賢者なので、そんな気がしているので」
「あ、なるほど賢い時間なのね今は……」
自己の崩壊によって万能性を手に入れたのだろうか。ジューダスのこの汎用性というか、何なのか、普通に怖い。ノーイはコイツが敵に回ろうとしたらなるべく速やかに殺そうという決意を新たにしつつ、賢者であるらしいジューダスに向かって首を傾げた。
「利点と欠点って?」
「利点は言わずもがな、魔力貯蓄庫としての」
「これ以上アイツらにひどいことしないで!! 何でここまでの話を聞いててそんなの利点って言い切れるの!? この人でなし!!」
「俺はモンスターだった……?」
「あ、それは素直になれないんだ」
「モンスターでなければ神では……?」
「さっきオレのこと神様とか言ってなかった?」
「じゃあ私は神官です」
「じゃあって言っちゃってる時点でもうね」
話が盛大に逸れた。
「えぇと、その他の利点としては巫女としての能力ですね。知りたいと思ったことは何でもすぐに知ることができるというのは、諜報員泣かせの能力ですよ。情報は力です、情報さえあれば劣勢でも巻き返せます、そう、情報を制する者が世界を制するのです!! ノーイさんが世界征服を志すならば」
「待て待て待て志さない志してない話を元に戻して」
「欠点としては食い扶持が増えることですけど、それは俺たちが稼げば何とかなりますし、最悪、芋と野菜のスープを与えておけば」
「だからさぁ!! アイツらにそういうことすんなって!! 引っ叩くぞ!!」
「なら、ダンジョン内のアイテムを売ってお金にするとか?」
「それはオレに言われてもな……ダンジョンの主の管轄じゃん」
「じゃあまずはそちらとの交渉ですね。もしもし?」
「遠隔会話のレアアイテム……!!」
さらっとジューダスの懐から取り出されたそれに仰け反るノーイ。どうやらエロトラップダンジョンの主と直通で会話できるらしい。ジューダスはしばらくもそもそと何事かを話していたようだが、比較的短時間で切り上げてノーイへと向き直る。
「ありだそうです」
「何が!?」
「アークとアリーシャとアルカディア、三人まとめて連れてこいと」
「即断即決!!」
「神様について行ってもいいんですか!? やったぁ!!」
「その呼び方は改めてね!!」
「じゃあノーイ様?」
「そうね名前はもう知ってるよねコイツがほいほい呼んでたもんね!!」
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