ETDの雑用係

とりい とうか

文字の大きさ
48 / 116
九章 アーク

しおりを挟む
 ジューダスが作ったスープは、普段自分が作るスープよりもなぜかおいしくて、何となく気に入らなかったノーイである。とはいえ、おいしいに越したことはない。実際、アークはハフハフガツガツと獣のような勢いでスープを飲み黒いパンをかじっている……黒いパンはそのまま食べるには硬すぎるため、スープに浸して柔らかくしてから食べるものなのだが。

「神様!!」
「うーん宗旨替えが単純」
「ですよね、ノーイさんは神です」
「お前は今自分をどう定義してるの?」

 自分においしいものを食べさせてくれた者は神様らしい。きらきらした目でノーイを見詰めるアークと、そんなアークにしみじみと頷いてみせるジューダス。ここには正気の人間、かどうかは若干こう本人にも微妙な所ではあるのだが、取り敢えず正気を保っている者は自分しかいないらしいとノーイは天を仰いだ。洞窟なので岩壁しか見えなかったが。

「神様についていきます!! 何したらいいですか? 敵対勢力の秘密を教えましょうか? それとも大きな商店の見張りが一番気を抜いている時を教えたらいいですか?」
「前半はまぁ納得できるとして後半が純粋に犯罪をそそのかしてない?」
「違いますよ!! そんな風に気を抜いていたら危ないよって実地で教えてあげるのは親切じゃないですか!!」
「コイツ、思いの外したたかというか、悪いヤツだな……?」

 訝し気に目を細めたノーイが呟く。アークは細っこくてちんまりしていて、ノーイが上から押さえたらくしゃっと潰れてしまいそうな見た目でいて、結構しぶとく生き残りそうな感じだ。もう首を取るとか何とかはどうでもいいから、この場に放置して帰ろうかな、と思うくらいには。

「でも、この子を仲間にするのはいいことですよ」
「え?」
「巫女は神託が一番目立った技ですけど、普通に魔法使いとして優秀ですし、何ならこの子を通じて他の巫女も引き込めるじゃないですか。一教団の抱える巫女なんてそう多くないですし、それらを抱え込むことによる利点と欠点を比べても利点の方が大きいですし」
「急に賢くなられたら対処に困るんだけど」
「僕は賢者なので、そんな気がしているので」
「あ、なるほど賢い時間なのね今は……」

 自己の崩壊によって万能性を手に入れたのだろうか。ジューダスのこの汎用性というか、何なのか、普通に怖い。ノーイはコイツが敵に回ろうとしたらなるべく速やかに殺そうという決意を新たにしつつ、賢者であるらしいジューダスに向かって首を傾げた。

「利点と欠点って?」
「利点は言わずもがな、魔力貯蓄庫としての」
「これ以上アイツらにひどいことしないで!! 何でここまでの話を聞いててそんなの利点って言い切れるの!? この人でなし!!」
「俺はモンスターだった……?」
「あ、それは素直になれないんだ」
「モンスターでなければ神では……?」
「さっきオレのこと神様とか言ってなかった?」
「じゃあ私は神官です」
「じゃあって言っちゃってる時点でもうね」

 話が盛大に逸れた。

「えぇと、その他の利点としては巫女としての能力ですね。知りたいと思ったことは何でもすぐに知ることができるというのは、諜報員泣かせの能力ですよ。情報は力です、情報さえあれば劣勢でも巻き返せます、そう、情報を制する者が世界を制するのです!! ノーイさんが世界征服を志すならば」
「待て待て待て志さない志してない話を元に戻して」
「欠点としては食い扶持が増えることですけど、それは俺たちが稼げば何とかなりますし、最悪、芋と野菜のスープを与えておけば」
「だからさぁ!! アイツらにそういうことすんなって!! 引っ叩くぞ!!」
「なら、ダンジョン内のアイテムを売ってお金にするとか?」
「それはオレに言われてもな……ダンジョンの主の管轄じゃん」
「じゃあまずはそちらとの交渉ですね。もしもし?」
「遠隔会話のレアアイテム……!!」

 さらっとジューダスの懐から取り出されたそれに仰け反るノーイ。どうやらエロトラップダンジョンの主と直通で会話できるらしい。ジューダスはしばらくもそもそと何事かを話していたようだが、比較的短時間で切り上げてノーイへと向き直る。

「ありだそうです」
「何が!?」
「アークとアリーシャとアルカディア、三人まとめて連れてこいと」
「即断即決!!」
「神様について行ってもいいんですか!? やったぁ!!」
「その呼び方は改めてね!!」
「じゃあノーイ様?」
「そうね名前はもう知ってるよねコイツがほいほい呼んでたもんね!!」

 ついに我慢し切れなくなってジューダスの頭を引っ叩いたノーイ。ジューダスは間の抜けた声であいたと呟き、へらっと笑ってみせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

処理中です...