女神様の使い5歳からやってます

めのめむし

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第1章 出会編

第6話 またね

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 フィーナが説明するには

 これから行く世界には地球のような世界を指す名前はないらしい。
ただ、世界と呼ぶ。
人間と亜人がいて、どちらもレスフィーナを信仰している。
人間と亜人は仲が悪い。人間が一方的に奴隷にしている。
亜人の国にも多くないが人間の奴隷がいる場合もある。
この世界とは別の世界から来た邪神が支配している種族がいる。
それを魔族と呼ぶ。
モンスターは自然発生で生まれているため、魔族とは関係がない。
モンスターが最も生まれやすい場所はダンジョンと言われている。
モンスターとは別に邪神が生み出すデビルがいる。
デビルには様々な種類がいて、獣のようなものもいれば、人間の言葉を話す知能が高いものも少なくない。
この世界にいるものは全て魔力を持っているが、種族、個体によって大小は変わってくる。
人間は魔法が使えるものは多くない。
亜人の中には魔法が得意な種族もいる。
治癒魔法を使えるものは全体的に多くない。怪我した時はポーションを使うことが多い。
以前に超大国が存在していたことがあり、いまだにその時の通貨が使われているため、魔族の国以外では同じ通貨になっている。
武器は剣や槍が主体で、弓やボウガンなどがある。

 フィーナがここまで説明して、一旦区切る。

「ざっと、こんな感じかな。あとは自分で調べてみてね。分からなかったら、私に聞いて」
「うん」
「美羽ちゃんは魔力の他に神気も使えるよ。これは下界に使える人は誰もいないよ。美羽ちゃんだけの才能」
「神気は治癒に使えるから、どんどん使っていけばどんどん増えてくるからね。神気を使うから正確に言うと治癒魔法とは呼べないけどね。治癒魔法よりもずっと効果が高いよ。神気が増えたら、神界にも来れるから、いっぱい使ってね」
「うん、早く来れるように頑張るね」
「魔力は、美羽ちゃん元々すごい持ってるんだ」
「そうなの?」
「うん、でもそれを使うと美羽ちゃんの子供の体が、耐えられなくなっちゃうかもなの」
「え、怖い」
「だから、体が強くなるまでは、魔法を使う時、魔法を代行してくれるものが必要になるの」
「何? それ」
「魔法生物よ」
「魔法生物?」
「うん、魔法で作った人工生物。美羽ちゃんが作れば、美羽ちゃんの言うことを聞いてくれて、魔法を美羽ちゃんの代わりに使ってくれるの。だから、魔法を使う時はその魔法生物にお願いして、神気を使うときだけ、美羽ちゃんがやればいいんだよ」
「え、わたしが使ったら、すぐに死んじゃうの?」
「ううん、あまり強くないものなら大丈夫だよ。でも使ってると、どんどんエスカレートしちゃうからね。全部魔法生物に任せるくらいでいたほうがいいよ」
「そうなんだ」
「いい話し相手になるしね」
「わあ、楽しそう」
「そうでしょ。早速作ってみようか?」
「うん」

 フィーナが言うには、作りたい生物をイメージして、魔力で凝縮して作る。その時に骨格を神気にすれば、より能力が高いものが生まれるらしい。ただ、今の美羽では神界でないと作れない。しかし、神界には来れないから、当分新しい魔法生物は作れないと言うことになる。

「美羽ちゃん、補助するね」
「ありがとう、フィーナちゃん」
「それじゃあ、美羽ちゃんが親しみを持てる動物とか物は何かしら。みていて嬉しくなるものだったらなおいいわ」
「親しみを持てるもの……」

 美羽は美玲と美奈と一緒に行った金魚ちょうちん祭りを思い浮かべた。

(気持ち良さそうに泳いでいたよね)
「決まったよ」
「それじゃあ、それを強くイメージして。美羽ちゃんはイメージ力も上がっているから、はっきりイメージできるよ」

 美羽が金魚ちょうちんをイメージすると、それが胸の前にうっすらと透けた金魚が出てきた。

「うわあ、フィーナちゃん、出てきた」
「まだ、これからだよ。そこに骨組みを作ってあげるようにイメージして、神気を流して」
「神気はどうやって出すの?」
「ここは神気が出やすい場所だから、神気出ろっていうだけで出てくるよ」
「神気出ろ」

 そういうと、桜色の光が出て、金魚に集まっていく。
透けた金魚の内側に、骨組みが生まれる。

「できたよ、フィーナちゃん」
「すごいよ美羽ちゃん! 次は、肉付けね。ありったけの魔力を込めて」
「どうやって魔力を込めるの?」
「お腹の下側に魔力が多く溜まっているから、そこの魔力が手を通って、金魚に注ぎ込むイメージをしてみて。
ここでなら簡単なはずだよ」
「分かった」

(お腹の下、お腹の下……あった。これね。これが手を通って、金魚に……)

 美羽の手のひらから、銀色の光が金魚に流れ込んだ。
しかし、チョロチョロといった感じの量だった。

(もっと、もっと出ろ!)

 その瞬間、一気に大量の魔力が金魚に流れ込んだ。

「すごいすごい! 美羽ちゃん」
「わ、わ、わ、いっぱい出る」

 しばらくしたら、金魚が銀色に輝いた。

「あ、終わったみたい。美羽ちゃん、魔力を止めていいよ」
「どうやるんだろ。止まれ! あ、止まった。」

 金魚がまだ銀色に光っているが、徐々に光がおさまってきた。

 光が完全に消えたら、赤と白のフォルムが現れた。

 金魚はくるっと一回りして、美羽に目を合わせてきた。

「初めまして、マスター。魔法生物です。マスターの思いを実現するため、そしてお守りするために生まれました。
良かったら、名前をつけていただけないでしょうか?」
「初めまして、私の名前は大山……小桜美羽よ。よろしくね。うーん、名前ね。じゃあ、きんちゃんで」
「ププ」

 フィーナが吹き出した。

「何? フィーナちゃん?」
「ううん、美羽ちゃんは可愛いなって思ったの」
「そうなの?」

 美羽は釈然としない様子で、金魚に向き直る。

「どう? きんちゃんでいい?」
「はい、ありがとうございます。私は今からきんちゃんです」
「何をしてもらうか、説明した方がいいかな?」
「いえ、私はマスターの記憶を引き継いでいます。そして、女神様にそのほかの情報をいただきました。
すぐにでも、役目につくことができます」
「すごいね、きんちゃん」
「ありがとうございます」
「きんちゃん、私のことは美羽って呼んで」
「それでは美羽様と呼ばせていただきます」
「ええ、様はちょっと」
「いえ、そこは譲れません」

 そこで、フィーナが声をかけてくる。

「ねえねえ、美羽ちゃん。小桜美羽って名前にしたんでしょ」
「うん」
「それなら、せっかくだから、髪の色と瞳の色も桜色にしない? 名前に合うし、私とお揃いよ。それに桜色だと神気も使いやすくなるし、私の御使いっていう証明にもなるわ。この世界では桜色は女神の色だからね」
「ええ、すごい。やってやって」

 すると、フィーナが抱きついてきて桜色に光った。

「きゃっ。フィーナちゃん?」
「そのままじっとしてて」
「うん」

それが落ち着くと美羽の髪と瞳の色が桜色になっていた。
フィーナが鏡のようなものを空中に浮かべる。

「ほら」
「きゃー、すごい。可愛いよ」
「うん、美羽ちゃんすっごく可愛いよ」
「フィーナちゃんとお揃い嬉しいな」
「私も嬉しい~」

 喜びが溢れて、二人は抱き合う。

「フィーナちゃんはこうして抱き合うだけで、私の髪と目の色を変えたんだねぇ」
「え? 抱き合わなくてもできたよ」
「? じゃあ、なんでさっき抱きついてきたの?」
「美羽ちゃんに抱きつきたかっただけー」

 さらにフィーナが強く抱きついてきた。

「きゃー、もう、フィーナちゃんったらぁ」

 フィーナが美羽のネックレスに気がつく。

「美羽ちゃん、これは?」
「これはママがくれたの。ローズクウォーツだって」
「形見なのね。うん、これなら」

 フィーナがネックレスの石を掌にのせると、石が桜色に光った。
その光は強く、美羽が目を開けていられないほどだったがやがて収まった。

「これで、美羽ちゃんの神気を際限なく封入できるようになったよ。毎日余った神気とか、修行で神気を消耗させるためにとか、ここに神気を込めてね。込めたものは色々使えるから。最初は私の神気を少し入れておいたからね。
これがあれば、何かあった時に神気が使えるし、ピンチの時に役に立ってくれるはず」
「うん、分かった。ありがとうね」
「あとは、地球で集めた情報とこれからの世界で生きるのに必要な知識を頭に詰め込んでおくからね。
意識すると思い出せるような感じだから」

 そういって、フィーナは美羽の額にキスをした。

「ここでは痛くないけど、地上に行ったら、頭が痛むから気をつけてね」
「ええ、痛いのはやだなぁ」
「でも、大事な情報だから。美羽ちゃんは計算もできるようになっているよ」
「ええ、すごい! ありがとう!!」
「これで、とりあえず伝えることは終わりかな。あとはまた教会に来たりしたら、必要に応じて教えるね」
「じゃあ、これでもうここにいる用は無くなったのかな」

 美羽が寂しそうな顔でフィーナを見る。

「美羽ちゃん、そんな顔しないで。私も悲しくなっちゃうよぉ」
「ごめんね、フィーナちゃん。笑顔でいかないとね」
「街に転移させるからね。慣れてないから、しばらく転移酔いと記憶に混濁があるかもしれない。目もあまり見えないし。
すぐに治るけどね。
それとね、今は神界だから、一度泣いただけでもう悲しさとかトラウマとか出てこないけど、地上に行ったら寂しかったり悲しかったりトラウマが出てくるから気をつけてね」
(ごめんね、治すこともできるんだけど、美羽ちゃんが乗り越えないといけないことだから、治さなかったの)
「分かった。私頑張るね」
「うん。応援してるね」
「……やっぱり、フィーナちゃんと離れるの寂しいよぉ」
「私も寂しいよぉ」

 二人は抱き合って泣いてしまう。
やはり笑顔になれなかった。
せっかくできた友達なのだ。気もすごく合う。
短い時間だが、ずっと前から友達のような気がしていた。

 そこにきんちゃんが口を挟む。

「あの、お別れが寂しいのはわかるのですが、そろそろ行かないと美羽様の体が持ちません」

 そう言われて、二人はハッという顔になる。

「そうだね。きんちゃん。行かないと」
「……じゃあ、送るね」
「うん、またね、フィーナちゃん」
「またね、美羽ちゃん」

 美羽が徐々に消えていく。
フィーナは思わず手を伸ばすが、そこにはもう何もなかった。

「美羽ちゃん……」

 精神が幼児になっている女神は寂しくてしばらく落ち込んだ。

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