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入学式
龍星1
しおりを挟む「あれ?あそこにいるの姫ちゃんじゃねーの?・・・うわぁ、流石にデカくなって可愛くなくなったなぁ!」
オレの名前は貴志 龍星(きし りゅうせい)。今日は高校の入学式だ。先のセリフを吐いた同じバスケ部の友人、菊池 友哉(きくち ゆうや)の視線の先にいたのは、小学生時代の友人、市姫 叶和(いちひめ とわ)だった。
オレは姫(市姫の愛称)と同じ小学校を卒業した後、ユウヤと一緒にバスケの強い中学校に通っていたので姫に会うのは三年ぶりだ。
その中学からのスポーツ推薦で、オレとユウヤはこの高校に入る事が出来たんだ。じゃないと偏差値が全然足りない。
小学生の姫は幼いながらも顔が整っており、小柄で本当に可愛かった。忘れられないのは、卒業間近にあった保護者を招いての謝恩会。その中での男子有志(女子によって無理矢理選抜)による女装大会での、姫のぶっちぎり一位・・同級生の女子なんかより全然可愛い超絶美少女っぷりに正直惚れそうになった。保護者票もほぼ姫に入っていたな。
しかし、こいつ性格は可愛くないんだよ。頭が良くてキレッキレのツッコミをする小賢しいタイプ。おまけに口も悪い。だがオレはそんな姫を気に入っていたし、姫もオレを脳筋だと笑いながらも気に入ってくれていたと思う。
所属するグループは違うのに妙に気が合って、二人で遊ぶ事も多かったんだ。
ユウヤの言う通り、確かに姫の背はあの頃より二十センチ以上伸びてはいるが・・オレたちより十センチ、いや、もっと?低いし・・・何より今もむちゃくちゃ可愛いよねぇっ??!!!ユウヤどこ見て言ってんの???
今は教室に入って担任から入学式の手順を聞いているところ。出席番号順に座っているので、貴志龍星のオレの前が菊池友哉ってわけ。
で、オレたちの列の前から二番目に市姫叶和が座っているんだ。
そのまま並んで入学式が行われる体育館へと入場。ぞろぞろと連なって歩く間も、入学式の最中も、オレはずっと姫の後ろ姿を見ていた。
そしてまたぞろぞろと列をなして退場し、教室に戻って明日以降の予定を聞く。早く姫に話しかけたいのに、なかなか話が終わらない担任に殺意が芽生えて来た頃、やっと終わりのチャイムが鳴り解放の時間となった。
オレは一目散に姫の元へと向かう。後ろからユウヤが何か言いながらついて来ているが、無視だ無視。
「姫っ!!」
「んあっ?あぁっ?!!」
一瞬ビックリして、目をまん丸にして見返す姫・・うん・・・やっぱり可愛いっ!!!
「うっわぁ~?!!リューセーにユウヤじゃねぇか!!お前らよくここに入れたな。で、相変わらず無駄にデカいな。」
小学生の頃と同じく、オレの名前をカタカナっぽく呼ぶ姫に安堵する。で、マジで可愛いんだけどっ??!
「姫ちゃ~ん。おれらスポーツ推薦なんだわ。だから入れたの。
姫ちゃん背伸びたねー。昔はあんなに可愛かったのに・・・」
「うるせぇっあほユウヤ!!ちゃん付けするんじゃね・・・」
「ひっ、姫は今もめちゃくちゃ可愛いよっ!!姫が可愛くないはずがないっ!!!」
・・姫の言葉に被せて思わず大声で叫んでしまった・・・
「・・お、おぅ・・・・」
ヤバいっ!姫がドン引きしてるぅっ!!
しかも教室が静まりかえっている・・・
オレは気付いていなかった。
クラスの数人の女子がギラギラとした目で、食い入るようにこっちを見ていた事に・・・
そして知らなかった。
この学校は昔から同性愛に対して寛容な校風で、それを目当てに受験する同性愛者や腐女子なみなさまが多いという事を。
だがそんな腐女子なみなさまが、今後、オレにとって非常に頼もしい味方になるなんて。
全く思ってもみなかったんだ。
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