5 / 5
メシ問題人間版、解決
しおりを挟む
「そうだ! 晩御飯まだですよねぇ、出前でも取りますか? なんでもいいですよぉ」
「……ピザと、天丼、どっちがいいですか」
「どっちも頼みましょう!」
四十路手前の胃袋じゃねぇってこの人。
「ゴチになります!!」
俺は二十代だから全然食うけどな。イモムシの食いっぷり見てたら腹減った。
「じゃあ、ピザLと天丼特盛でいきますよ」
スマホ取り出して注文アプリを立ち上げると、横から教授が画面を覗き込んできた。
「いいですねぇ、チーズ増量も忘れずにぃ。あと天丼は、お味噌汁つけてくださいねぇ」
「……はいはい」
健啖家がすぎる。注文確定してから、ちらと段ボール箱を覗く。イモムシはまた一枚の葉っぱを半分ほど食い終えて、新しい葉先に頭をもに、と寄せていた。葉脈の透け具合が、食痕の新しさを物語ってる。いい食いっぷりだ……こっちまで腹が鳴るわけだよな。
隣で教授はのっそり座布団に座り込み、ゆったりした姿勢でイモムシの食事風景を眺めていた。
「いやぁ、ほんと癒やされますねぇ……あぁ、ボクこういうのに囲まれて生きていきたいなぁ。巨大種はいいですよぉ、ちゃんと意思のやり取りもできるし、情も通じるし。あっ、花畑くんも名前つけたくなってるでしょぉ?」
「まだつけません。仮だから」
「ふふふ、そうやってるうちに、もう“おうちの子”になりますよぉ」
ふと見れば、イモムシがまたこっちに黒い目を向けていた。きょとんとした顔で、角ぴこぴこ……くそ、あざといな。人慣れがすぎんだろ。拾った相手が俺じゃなかったら、ほんとにどうなってたか。
しばらく二人して虫の食事を見守っていたところに、出前が届いた。ピザと天丼、どちらもなかなかのボリュームだ。ちゃぶ台に紙皿並べて、準備万端。教授はさっそくピザの箱を開けて、顔をほころばせた。
「いただきまぁす!」
「……いただきます」
イモムシのしゃりしゃりに合わせて、俺もピザを一切れ頬張る。チーズとトマトの濃厚な味が胃に染みる。天丼もすぐに箸を伸ばした。サクサクの衣に甘辛いタレ、飯が進む。うまい。イモムシもさっきより勢いがついてきたのか、さらに葉を抱えてもにもにしている。人間二人と一匹、黙々と食うこの光景、なんかもう変な満足感すらある。
「いいですねぇ、食べるって、生きるってことですからねぇ」
「……たしかに」
うん、腹が満たされてくると、変に納得してしまう。俺もこの子も教授も、食って生きてんだ。拾った時はぐったりしてたこいつが、今はこんなに元気に食べてんだから、そりゃあ、悪くねぇ気分になるさ。
天丼の器を置きながら、俺はそっと、段ボールの中のイモムシに目をやった。きっと、こいつを羽化するまで世話する。教授が嬉しそうにピザの箱に手を伸ばすのを横目に、俺はちょっとだけ、笑った。
「……ピザと、天丼、どっちがいいですか」
「どっちも頼みましょう!」
四十路手前の胃袋じゃねぇってこの人。
「ゴチになります!!」
俺は二十代だから全然食うけどな。イモムシの食いっぷり見てたら腹減った。
「じゃあ、ピザLと天丼特盛でいきますよ」
スマホ取り出して注文アプリを立ち上げると、横から教授が画面を覗き込んできた。
「いいですねぇ、チーズ増量も忘れずにぃ。あと天丼は、お味噌汁つけてくださいねぇ」
「……はいはい」
健啖家がすぎる。注文確定してから、ちらと段ボール箱を覗く。イモムシはまた一枚の葉っぱを半分ほど食い終えて、新しい葉先に頭をもに、と寄せていた。葉脈の透け具合が、食痕の新しさを物語ってる。いい食いっぷりだ……こっちまで腹が鳴るわけだよな。
隣で教授はのっそり座布団に座り込み、ゆったりした姿勢でイモムシの食事風景を眺めていた。
「いやぁ、ほんと癒やされますねぇ……あぁ、ボクこういうのに囲まれて生きていきたいなぁ。巨大種はいいですよぉ、ちゃんと意思のやり取りもできるし、情も通じるし。あっ、花畑くんも名前つけたくなってるでしょぉ?」
「まだつけません。仮だから」
「ふふふ、そうやってるうちに、もう“おうちの子”になりますよぉ」
ふと見れば、イモムシがまたこっちに黒い目を向けていた。きょとんとした顔で、角ぴこぴこ……くそ、あざといな。人慣れがすぎんだろ。拾った相手が俺じゃなかったら、ほんとにどうなってたか。
しばらく二人して虫の食事を見守っていたところに、出前が届いた。ピザと天丼、どちらもなかなかのボリュームだ。ちゃぶ台に紙皿並べて、準備万端。教授はさっそくピザの箱を開けて、顔をほころばせた。
「いただきまぁす!」
「……いただきます」
イモムシのしゃりしゃりに合わせて、俺もピザを一切れ頬張る。チーズとトマトの濃厚な味が胃に染みる。天丼もすぐに箸を伸ばした。サクサクの衣に甘辛いタレ、飯が進む。うまい。イモムシもさっきより勢いがついてきたのか、さらに葉を抱えてもにもにしている。人間二人と一匹、黙々と食うこの光景、なんかもう変な満足感すらある。
「いいですねぇ、食べるって、生きるってことですからねぇ」
「……たしかに」
うん、腹が満たされてくると、変に納得してしまう。俺もこの子も教授も、食って生きてんだ。拾った時はぐったりしてたこいつが、今はこんなに元気に食べてんだから、そりゃあ、悪くねぇ気分になるさ。
天丼の器を置きながら、俺はそっと、段ボールの中のイモムシに目をやった。きっと、こいつを羽化するまで世話する。教授が嬉しそうにピザの箱に手を伸ばすのを横目に、俺はちょっとだけ、笑った。
2
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
ネタバレ含む
あなたにおすすめの小説
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
虐げられた令息の第二の人生はスローライフ
りまり
BL
僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。
僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。
だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。
救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。
お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
チョコレートがつなぐ二つの世界
一ノ瀬麻紀
BL
憧れの先輩に渡せなかったチョコレートを持ったまま、異世界に転移した天音(アマネ)
突然知らない世界に迷い込んだ天音に手を差し伸べてくれたのは、流れの冒険者のアランだった。
初めは戸惑っていた天音も、アランのおかげでこの不思議な世界にも慣れ、充実した日々を過ごしていた。
けど、そんな平和な日々は突然終わりを告げた。
突如として現れた光に包まれ、天音は気づいたら元の世界に戻っていた――。
チョコレートがつなぐ、二人の物語です。
Xにツイノベとして公開したものを改稿しました。
結構変わっているので、ツイノベで読んだ方にも楽しんでもらえると思います。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。