蒼炎の公爵令嬢 〜追放された私は、最強冒険者と共に真実の力に目覚める〜

雛月 らん

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真実の覚醒3

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 洞窟を出ると、魔法騎士団が待っていた。

「古代竜は…?」

 騎士団長が尋ねる。

「討伐完了」

 レイヴンが答えると、騎士たちから歓声が上がった。

「さすがはS級冒険者!」

「王国が救われた!」

 だが、レイヴンは手を上げて静かにさせた。

「俺じゃない。エリアナが倒した」

 騎士たちが、驚きの表情でエリアナを見た。

「まさか…あの古代竜を?」

「信じられん…」

 王都に戻ると、王が二人を迎えた。

 謁見の間には、多くの貴族たちが集まっていた。その中に——アルトハイム公爵一家の姿もあった。
 
 そして、その隣には見覚えのある金髪の青年、レオンハルト・シュタインベルクの姿も。

 彼のそばには、若い女性が寄り添っている。

「よくやってくれた、レイヴン」

 王は満面の笑みを浮かべた。

「古代竜は討伐できたのか?」

「はい。討伐完了しました」

「さすがだ!では、約束通り金貨一万枚を——」

「陛下」

 レイヴンが王の言葉を遮った。

「訂正があります。古代竜を討伐したのは、俺ではありません」

「何?」

 謁見の間がざわついた。

「では、誰が...」

「俺のパーティーメンバーです」

 レイヴンはエリアナに視線を向けた。

「エリアナ、フードを取れ」

 エリアナは深呼吸をして、フードを外した。

 栗色の長い髪が現れ、整った顔立ちが露わになる。

「ま、まさか...」

「エリアナ...!?」

 アルトハイム家の面々が、驚愕の表情で立ち上がった。

「あの出来損ないが...」

 ディートリヒが呆然と呟く。
 
 レオンハルトの顔が、見る見る青ざめていく。

「え...エリアナ...!?まさか、お前が...」

 彼のそばの女性が、不安そうにレオンハルトの腕を掴んだ。
 
 王も目を見開いた。

「エリアナ・フォン・アルトハイム...確か、魔法が使えないと...」

「それは誤解でした、陛下」

 レイヴンが言った。

「彼女は魔法が使えないのではなく、強すぎる魔力を制御できなかっただけです」

「強すぎる...?」

「はい。実際、彼女は全属性を持つ魔法使いです」

「全属性...!?」

 謁見の間が騒然となった。

「そんな馬鹿な!」

 ディートリヒが叫んだ。

「エリアナは魔法の訓練でいつも失敗していた!制御もできずに——」

「それは、お前たちに教える力がなかっただけだ」

 レイヴンの冷たい声が、謁見の間に響いた。

「彼女の才能を見抜けず、出来損ないと決めつけた。そして、家から追い出した」

「それは...」

 ヴェルナー公爵が言葉に詰まる。
 
 レオンハルトが震える声で言った。

「待ってくれ...エリアナが全属性だと?S級魔物を討伐したと?そんな...」

 エリアナは冷ややかな視線を元婚約者に向けた。

「あなたは私を『魔法も使えない出来損ない』と呼んで婚約を破棄しましたね」

「それは...その...」

 レオンハルトは言葉に詰まった。隣の女性が不安そうに彼を見上げている。
 
「エリアナ...」

 イザベラが震える声で娘の名を呼んだ。

「本当に…あなたが古代竜を…?」

「はい、お母様」

 エリアナは冷静に答えた。

「S級魔物、古代竜アンシエントドラゴンを討伐しました」

 カタリーナが顔を青くした。天才と呼ばれた自分でさえ、D級魔物を倒すのがやっとなのに。

 王は立ち上がり、エリアナに近づいた。

「エリアナ嬢…いや」

 王は自ら訂正した。

「冒険者エリアナ。あなたこそが、真の勇者だ。この国は、あなたに救われた」

 謁見の間がざわついた。

 王が自ら「エリアナ嬢」という呼び方を訂正し、「冒険者エリアナ」と呼んだ。

 それは、彼女がもう貴族ではなく、一人の冒険者として認められたということだ。

 王は剣を取り、エリアナの肩に置いた。

「今日より、あなたを『蒼炎の魔導士』と呼ぼう」

 謁見の間に拍手が響く。

 だが、アルトハイム家の面々とレオンハルトは、ただ呆然と立ち尽くしていた。

「エリアナ」

 ヴェルナー公爵が、ようやく口を開いた。

「私は…間違っていた」

「…お父様」

 エリアナは冷静に答えた。

「でも、もう関係ありません。私はアルトハイム家の者ではなく、冒険者エリアナですから」

「エリアナ、待ってくれ——」

「失礼します、お父様」

 エリアナは深く礼をして、踵を返した。

「ま、待ってくれ、エリアナ!」

 レオンハルトが叫んだ。

「俺は...あの時は...」

 エリアナは立ち止まり、振り返った。その表情には、何の感情も浮かんでいない。

「レオンハルト様…いえ、シュタインベルク様。あなたが選んだ道は、あなたの自由です」

 そして、レオンハルトの隣の女性に視線を向けた。

「どうか、お幸せに」

 その言葉には、皮肉も恨みも込められていなかった。
 
 ただ、本当に心からどうでもよくなっている、そんな無関心さだけがあった。

 レオンハルトは、その冷たさに言葉を失った。

 イザベラが崩れ落ちそうになるのを、ヴェルナーが支える。

 ディートリヒは拳を握りしめ、カタリーナは唇を噛んでいた。

 レオンハルトは、隣の女性の手を握りながら、ただ立ち尽くしていた。

 謁見の間を出る前に、エリアナは一度だけ振り返った。

「ポール」

 端に控えていた老執事が、涙を流しながら頭を下げた。

「お嬢様...おめでとうございます」

「ありがとう」

 エリアナは優しく微笑んだ。

「あなただけは、いつも私を信じてくれた。その恩は忘れません」

 ポールは顔を上げ、レイヴンを見つめた。

 その瞳には、感謝と安堵が溢れていた。

 レイヴンは静かに頷いた。

 そして、レイヴンと共に謁見の間を後にした。

 残されたアルトハイム家の面々とレオンハルトは、ただ呆然と彼女の後ろ姿を見送ることしかできなかった。

「蒼炎の魔導士、か」

 レイヴンが呟いた。

「いい称号だな」

「レイヴンさん」

 エリアナは立ち止まった。

「私の母のこと、もっと教えてください」

 レイヴンは少し考えてからうなずいた。

「ああ。だが、ここでは話せない」

「では、どこで?」

「隣国に戻ってからだ。それまで待て」

 エリアナは頷いた。

 真実を知る時が、近づいている。
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