19 / 41
虹の賢者の遺産1
しおりを挟む
王都を離れ、アインベルクへ戻る馬車の中で、エリアナは窓の外を眺めていた。
謁見の間での出来事が、まだ心の中で渦巻いている。家族の驚愕した顔、レオンハルトの青ざめた表情、そして王からの称号。
「蒼炎の魔導士、か」
エリアナは小さく呟いた。
「気に入らないか?」
向かいに座っているレイヴンが尋ねる。
「いえ、そんなことは。ただ…不思議な感じです」
「何が?」
「数ヶ月前まで、私は出来損ないと呼ばれていた。それが今では、王から称号を授かるなんて」
エリアナは自分の手を見つめた。
「全部、レイヴンさんのおかげです」
「いや、お前自身の力だ」
レイヴンは首を横に振った。
「俺はただ、正しい道を示しただけだ。歩いたのはお前自身だ」
エリアナは微笑んだ。レイヴンはいつもそう言う。自分の功績を認めず、彼女を立ててくれる。
「レイヴンさん」
エリアナは真剣な表情になった。
「約束してください。私の本当の母のこと、全て教えてください」
レイヴンは深く息を吸い込んだ。
「ああ。アインベルクに戻ったら、全て話そう」
馬車は街道を進み、夕方にはアインベルクに到着した。
見慣れた街並み。ここに来てから、まだ三ヶ月しか経っていないが、エリアナにとっては故郷のように感じられる。
二人は宿屋に部屋を取り、夕食を終えた後、レイヴンの部屋に集まった。
「さて」
レイヴンは椅子に座り、エリアナに向き直った。
「何から話すべきか…」
「最初から、お願いします」
エリアナも椅子に座る。
「私の本当の母、セレスティアのこと」
「分かった」
レイヴンは窓の外を見つめながら語り始めた。
「セレスティア・エル・ルミナス。『虹の賢者』と呼ばれた伝説の魔法使いだ」
「セレスティアは、今から約二十年前に現れた」
レイヴンの声は、どこか遠くを見つめるようだった。
「彼女は全属性を操る力を持ち、その魔力は計り知れないものだった。まるで、魔法そのものが人の姿を取ったかのように」
「それが…私の母…」
「ああ。彼女は各国を旅し、困っている人々を助け、魔物を討伐し、多くの冒険者たちを導いた」
レイヴンは一度言葉を切った。
「俺も、その一人だった」
「え?」
エリアナは驚いた。
「レイヴンさん、母と会ったことがあるんですか?」
「ああ」
レイヴンの目に、懐かしさと悲しみが混じった表情が浮かぶ。
「俺が十五歳の時だ。当時の俺は、お前と同じだった」
「同じ…?」
「魔力が強すぎて制御できなかった。周囲からは危険視され、家からも追い出された」
エリアナは息を呑んだ。
「レイヴンさんも…」
「ああ。絶望していた俺を救ってくれたのが、セレスティアだった」
レイヴンは手のひらに小さな炎を灯した。
「彼女は俺に魔法の制御方法を教えてくれた。魔力は敵じゃない、友達だと。お前に教えたことと、全く同じことをな」
「それで、レイヴンさんは私を…」
「ああ。お前を見た時、昔の俺を見ているようだった」
レイヴンは炎を消した。
「だから、放っておけなかった」
エリアナの目に涙が浮かんだ。
「レイヴンさん…」
「泣くな」
レイヴンは少し照れくさそうに言った。
「まだ話は続きがある」
謁見の間での出来事が、まだ心の中で渦巻いている。家族の驚愕した顔、レオンハルトの青ざめた表情、そして王からの称号。
「蒼炎の魔導士、か」
エリアナは小さく呟いた。
「気に入らないか?」
向かいに座っているレイヴンが尋ねる。
「いえ、そんなことは。ただ…不思議な感じです」
「何が?」
「数ヶ月前まで、私は出来損ないと呼ばれていた。それが今では、王から称号を授かるなんて」
エリアナは自分の手を見つめた。
「全部、レイヴンさんのおかげです」
「いや、お前自身の力だ」
レイヴンは首を横に振った。
「俺はただ、正しい道を示しただけだ。歩いたのはお前自身だ」
エリアナは微笑んだ。レイヴンはいつもそう言う。自分の功績を認めず、彼女を立ててくれる。
「レイヴンさん」
エリアナは真剣な表情になった。
「約束してください。私の本当の母のこと、全て教えてください」
レイヴンは深く息を吸い込んだ。
「ああ。アインベルクに戻ったら、全て話そう」
馬車は街道を進み、夕方にはアインベルクに到着した。
見慣れた街並み。ここに来てから、まだ三ヶ月しか経っていないが、エリアナにとっては故郷のように感じられる。
二人は宿屋に部屋を取り、夕食を終えた後、レイヴンの部屋に集まった。
「さて」
レイヴンは椅子に座り、エリアナに向き直った。
「何から話すべきか…」
「最初から、お願いします」
エリアナも椅子に座る。
「私の本当の母、セレスティアのこと」
「分かった」
レイヴンは窓の外を見つめながら語り始めた。
「セレスティア・エル・ルミナス。『虹の賢者』と呼ばれた伝説の魔法使いだ」
「セレスティアは、今から約二十年前に現れた」
レイヴンの声は、どこか遠くを見つめるようだった。
「彼女は全属性を操る力を持ち、その魔力は計り知れないものだった。まるで、魔法そのものが人の姿を取ったかのように」
「それが…私の母…」
「ああ。彼女は各国を旅し、困っている人々を助け、魔物を討伐し、多くの冒険者たちを導いた」
レイヴンは一度言葉を切った。
「俺も、その一人だった」
「え?」
エリアナは驚いた。
「レイヴンさん、母と会ったことがあるんですか?」
「ああ」
レイヴンの目に、懐かしさと悲しみが混じった表情が浮かぶ。
「俺が十五歳の時だ。当時の俺は、お前と同じだった」
「同じ…?」
「魔力が強すぎて制御できなかった。周囲からは危険視され、家からも追い出された」
エリアナは息を呑んだ。
「レイヴンさんも…」
「ああ。絶望していた俺を救ってくれたのが、セレスティアだった」
レイヴンは手のひらに小さな炎を灯した。
「彼女は俺に魔法の制御方法を教えてくれた。魔力は敵じゃない、友達だと。お前に教えたことと、全く同じことをな」
「それで、レイヴンさんは私を…」
「ああ。お前を見た時、昔の俺を見ているようだった」
レイヴンは炎を消した。
「だから、放っておけなかった」
エリアナの目に涙が浮かんだ。
「レイヴンさん…」
「泣くな」
レイヴンは少し照れくさそうに言った。
「まだ話は続きがある」
5
あなたにおすすめの小説
• 『社交界の華は、影に咲く毒。〜私を捨てた世界、すべてお返しいたします〜』
YOLCA(ヨルカ)
ファンタジー
「その黄金の瞳……なんて気持ち悪いの。我が家に化け物は必要ないわ」
名門伯爵家の娘として生まれたエレーナ。しかし、彼女に宿った未知の能力を恐れた継母イザベラは、実父の留守中を狙い、幼い彼女を雪の降る町に捨て去った。
死を覚悟した彼女を拾ったのは、帝国の裏社会を支配する「皇帝の弟」ヴィンセント公爵。
彼はエレーナの力を「至宝」と呼び、彼女を公爵家の実の娘として迎え入れた。
それから数年。
エレーナは、二人の過保護な兄と、五人の精鋭部下に囲まれ、美しくも最強の工作員へと成長していた。
すべてを暴く『黄金の瞳』、すべてを操る『魅了』、そして伝説の師匠たちから授かった至高の淑女教育を武器に。
一方、継母イザベラは父を捨て、さらなる権力を手に入れるため、悪名高い侯爵の妻として社交界の頂点に君臨していた。
「お久しぶりです、お母様。……化け物と呼ばれた私からの、お返しを受け取ってくださいね」
捨てられた少女による、優雅で残酷な復讐劇。
今、その幕が上がる。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?
mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。
乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか?
前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる