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ヴォロディーヌ家との見合い 3
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ダニエルはあざとい表情でヴィクトリアを下から見上げる。が、ヴィクトリアがそれに動かされた様子はない。ちらりとヴィクトリアのおつきのメイドを見たら真顔で見返される。なんだかいつもと様子が違う。あざと可愛い顔でお願いすれば大抵の女性は折れてくれるしデレてくれるのだがヴィクトリアもおつきのメイドも顔色一つ変えない。
それは、父親のサヴェージという美貌の男やプロスペール、そしてヴィクトリア自身の容貌を見慣れているので作ったかわいらしさや美しさに心は動かないのだ。
ダニエルはいつもの作戦ではだめだ、と悟る。ダニエルは女性にちやほやされ慣れ過ぎているのだ。……プロスペール殿下対応でいくか。正直に話しても自分はこれ以上追い詰められないし、とも考える。
ヴィクトリアはこの子は本来こういう表情の子か、と思う。ふてぶてしい、たくましい顔で先刻までの弱々しい子供の顔よりもしっくりした。
「僕は父親が好きじゃないです」
「そう」
「ええ。だから父親の影響の少ない家、バイユ公爵家に目を着けました」
それで?とヴィクトリアは目で先を促す。
「まず、ライザ姉様、貴方の義姉から取り入ろうと思ったのですが彼女は僕の敵についた。王太子と第二王子はプロスペール殿下に使った手を使おうとしましたが……声をかけた平民の騎士が直前でぶるって逃げました。子供を殺すのは嫌だ、と。その騎士はプロスペール殿下の元で、隣国に家族を呼んで暮らしてます」
ヴィクトリアは少しホッとした。まだ、この国にいるのならお祖父様に保護してもらわないと、と思ったからだ。
「ライザ姉様も本質的にはドレスに懐柔されてるだけで敵、王太子が狙ってるのが最終的には命、だとは気がついてません」
ヴィクトリアはダニエルに訊ねる。
「何故王太子様が貴方を狙ってるの?」
ダニエルは肩をすくめる。
「あっちが勝手に被害妄想というかなんというかを募らせてる感じ?王太子殿下と第二王子殿下はコンプレックスの塊なんですよ。プロスペール殿下や僕が王座を狙ってるって妄想してて」
ヴィクトリアは頷く。自分もそれを感じていたからだ。この数回の自宅でのお茶会で感じたのは有能な人材を使いこなす器はなく虚勢と傲慢さで他人を従わせようとしている、そんな事だった。
「それで僕が色々掻い潜るから余計に苛立っておられる感じですね」
「掻い潜らなければ?」
ヴィクトリアの言葉にダニエルはクスッと笑う。
「かかってるのが自分の命ですからね」
ダニエルは話を続ける。
「で、ここで貴方との婚約と僕が言い出したのは、卒業したら一度プロスペール殿下の国に一緒に行きませんか?その時に貴方の家の後ろ盾で動いた方が殿下の意図に沿うと思うのです。それに僕と婚約したら王太子殿下の側妃の件は立ち消えるはずです。クロエ姉様の義妹候補、そう正妃の義妹候補を側妃にはできないので」
一つの派閥から何人も妃を取ることはできない。バイユ公爵家はどこにも属してないのでヴィクトリアは娶れるが、ヴォロディーヌ家の息子の婚約者に手を出すのは政治的にまずい。王弟と王太子が表立って対立するのは王家にとって好ましくないからだ。
それと王は弟の王弟殿下をかなり可愛がっていて息子よりも大事にしているのが現状であった。
「ヴィクトリア嬢、僕と婚約しませんか?」
ダニエルはダニエルとしての顔でヴィクトリアに婚約を申し込んだ。
それは、父親のサヴェージという美貌の男やプロスペール、そしてヴィクトリア自身の容貌を見慣れているので作ったかわいらしさや美しさに心は動かないのだ。
ダニエルはいつもの作戦ではだめだ、と悟る。ダニエルは女性にちやほやされ慣れ過ぎているのだ。……プロスペール殿下対応でいくか。正直に話しても自分はこれ以上追い詰められないし、とも考える。
ヴィクトリアはこの子は本来こういう表情の子か、と思う。ふてぶてしい、たくましい顔で先刻までの弱々しい子供の顔よりもしっくりした。
「僕は父親が好きじゃないです」
「そう」
「ええ。だから父親の影響の少ない家、バイユ公爵家に目を着けました」
それで?とヴィクトリアは目で先を促す。
「まず、ライザ姉様、貴方の義姉から取り入ろうと思ったのですが彼女は僕の敵についた。王太子と第二王子はプロスペール殿下に使った手を使おうとしましたが……声をかけた平民の騎士が直前でぶるって逃げました。子供を殺すのは嫌だ、と。その騎士はプロスペール殿下の元で、隣国に家族を呼んで暮らしてます」
ヴィクトリアは少しホッとした。まだ、この国にいるのならお祖父様に保護してもらわないと、と思ったからだ。
「ライザ姉様も本質的にはドレスに懐柔されてるだけで敵、王太子が狙ってるのが最終的には命、だとは気がついてません」
ヴィクトリアはダニエルに訊ねる。
「何故王太子様が貴方を狙ってるの?」
ダニエルは肩をすくめる。
「あっちが勝手に被害妄想というかなんというかを募らせてる感じ?王太子殿下と第二王子殿下はコンプレックスの塊なんですよ。プロスペール殿下や僕が王座を狙ってるって妄想してて」
ヴィクトリアは頷く。自分もそれを感じていたからだ。この数回の自宅でのお茶会で感じたのは有能な人材を使いこなす器はなく虚勢と傲慢さで他人を従わせようとしている、そんな事だった。
「それで僕が色々掻い潜るから余計に苛立っておられる感じですね」
「掻い潜らなければ?」
ヴィクトリアの言葉にダニエルはクスッと笑う。
「かかってるのが自分の命ですからね」
ダニエルは話を続ける。
「で、ここで貴方との婚約と僕が言い出したのは、卒業したら一度プロスペール殿下の国に一緒に行きませんか?その時に貴方の家の後ろ盾で動いた方が殿下の意図に沿うと思うのです。それに僕と婚約したら王太子殿下の側妃の件は立ち消えるはずです。クロエ姉様の義妹候補、そう正妃の義妹候補を側妃にはできないので」
一つの派閥から何人も妃を取ることはできない。バイユ公爵家はどこにも属してないのでヴィクトリアは娶れるが、ヴォロディーヌ家の息子の婚約者に手を出すのは政治的にまずい。王弟と王太子が表立って対立するのは王家にとって好ましくないからだ。
それと王は弟の王弟殿下をかなり可愛がっていて息子よりも大事にしているのが現状であった。
「ヴィクトリア嬢、僕と婚約しませんか?」
ダニエルはダニエルとしての顔でヴィクトリアに婚約を申し込んだ。
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