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クロエ

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 「トリアのおうちは元第六王子とも縁があるしプロスペール殿下も気を遣ってくださるだろうけど」

ヴィクトリアは真剣な顔になる。

「クロエ、あなたは早々にプロスペール殿下の元に行くべきだわ。計画が動いた時にこの国にいないことが肝よ。あなたは王太子たちの計画に加担してなかった、もしくはそれを知って隣国へ助けを求めた、という体裁を作るといいと思う。プロスペール殿下ならその状態を利用して罠をかけるなりすると思うので」

ダニエルはヴィクトリアのプロスペール評を正しいと感じながらも自分よりも評価されるなぁと思って少しつまらなかった。

「そうね、ダニエルも逃げておかないと罪をなすりつけられるわ。今日はこのまま私の家に。クロエもね?」

クロエはふわりと笑う。

「大丈夫。今回の宿下り、父にもこの話をするためにもお願いしてたの。どこをどうしたのかプロスペール殿下が滞っていたお話を通してくださった、だけよ?」

冷めかけた紅茶を一口飲み一口大のカップケーキをクロエは口にした。

「王太子妃の離婚なんて前代未聞だから、私このままではよくて離宮に軟禁なのよねぇ」

クロエは思案顔だ。

「私を離宮に追い込んで、トリアを側妃として手に入れるって感じ?あのバカ太子の考えてる事は」

クロエは指先を合わせて口を尖らせる。

「王妃はトリアからの絡め手でサヴェージ様が欲しいらしいの。確定ではないのよ?侍女の噂話程度だから」

ここでクロエがにっこり笑う。

「アルベール様達のお母様の所の侍女なんですけどね」

ヴィクトリアは溜息をつく。

「あの堅物になんの魅力が」

ダニエルは思わず笑ってしまう。

「外見。学生時代からかなり熱をあげてたみたい。親世代の事だからわからない事も多いけど。私は第三妃様、アルベール様達のお母様ね、から聞けるから」

ダニエルはサヴェージの事はあまり知らないが父親の所に来ている時に何度か挨拶をした記憶はある。

「確かにサヴェージ様は綺麗な顔の方ですよね」

ヴィクトリアは眉根に皺を寄せる。

「ほぼ自分と同じ顔の人間をそう褒められて同意するのもどうかと」

ヴィクトリアはダニエルの言葉にくそ真面目に答える。

「親世代の確執はそこで止めておいてほしいわ」

クロエが長く息を吐く。クロエがヴィクトリアに訊ねる。

「トリア、今日は自宅?」

少し外に出ていたミリエルがヴィクトリアに手紙を持ってきた。

「アリーナから?ちょっと開けていいかしら?」

クロエもダニエルも頷く。

「……お忍びで王太子が実家にいるらしいです。それも隠れてるっぽくて。実力行使に来たんではないかと」

アリーナの手紙には『帰ってくれば貞操の危機です』とはっきり書かれていた。

「今日は寮に帰るしかなさそうです」

「寮も手を回されてるかも。うちにいらっしゃいよ。『ダニエルの婚約者』さん」

クロエはいたずらっぽく笑う。

「うちの父親と陛下で謀って、ダニエルとの婚約の書類出しちゃおう。ポールさんは都合がいい事に王宮にいるし」

「そうね。どうせ出さなきゃいけない書類だしね」

「……ヴィクトリア嬢はそれでいいんですか?」

ダニエルはヴィクトリアを見つめる。

「約束しましたよね?クロエと合わせてくだされば婚約するって」

ヴィクトリアに迷いはなかった。
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