公爵令嬢姉妹の対照的な日々 【完結】

あくの

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ヴォロディーヌ家

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 「お父様は?」

ヴィクトリア達を出迎えた執事は性急なクロエの言葉に恭しく答える。

「執務室でございます」

「ではすぐに話があるので伺いたいと伝えて」

「仰せのままに」

執事の横にいたメイドが滑るように動き執務室へ向かった。一旦クロエの部屋に向かいヴィクトリアとクロエの荷物を置く。

「トリア、それ以外の本は自宅に送ったの?」

「いえ、寮の方に」

「おつきの戦闘メイドは?」

「私と一緒に自宅に帰ってるアリーナを寮に戻してもらおうと思って。ヴォロテーヌ家でクロエと一緒ならめったなことはないし」

ミリエルを返したのはヴォロテーヌ家で何かが起こった場合はクロエ付きの戦闘メイドと戦闘バトラーが対処する、という事とアリーナを王太子とライザの側に置きたくなかったのでミリエルに動いてもらったのだ。



 王弟の執務室で書類は速やかに整えられる。

「では私と一緒にダニエルとトリア嬢は王宮に。それとクロエは宿下がりの延長の書類にサインを。期限は無期限でな。王宮は陛下と私がなんとかする。離縁は無理かもだが……バカ太子の側にいるのは危険だ。兄上陛下も対策をとっているが。王妃がこうもあからさまな手をつかうとはな」

王弟殿下は深くため息をついた。

 馬車の中で王弟殿下は王妃の事を教えてくれた。

「王妃はそもそもは準男爵の娘でな。育ちは平民と同じだ。それゆえにシャルル殿下の母親を『自分以下』の存在だという扱いをしていた。学力で学園に入った人だけに仕事の面では優秀なんだ。……残念な事にね。クロエが王太子の婚約者に決まったのは学院の中等部の2年の終わりでな。すぐにでも嫁げという王妃の圧を兄上が『学院は卒業しないと』と止めてくれたんだ。その一年で王太子妃として王宮に入ってからは手を抜け、と教えてて……」

王弟殿下はそこで深くため息をつく。

「すまなかったな、ヴィクトリア嬢。あのバカ太子がヴィクトリア嬢に粉をかけるとは」

「……あれ、口説いてるつもりだったんですかねぇ。自分の『功績』っぽいものを並べ立てて自分は偉いと言い続けて。だからどうしたいのかわからないので反応できなかったらライザ様が目くばせしてから『えー、王太子殿下すごぉい』とかやってて。……本当に何を求められてるのか謎なんです」

困惑した表情でヴィクトリアは言う。王弟殿下はこめかみに手を当てて首を横に振る。

バカ太子も子供の頃はもっと利発だったんだがな。……プロスペール殿下が出来すぎな方だったから。……あの方を自分の味方にできなかったのが王太子殿下というか王妃様の損失だな」

ダニエルはちょんと座って黙っている。ヴィクトリアは少し緊張しているようだ。

「ところで、うちのダニエルと本当に結婚する事になったらどうするつもりだ」

ヴィクトリアは不思議そうな顔で返す。

「婚約ってそういうことですし。別にダニエル様の事は嫌いではないです。……クロエ様の弟ですし」

ダニエルは少しほほ笑む。

「僕は12歳ですけど……子供なりにちゃんとヴィクトリア嬢の事好きです」

ダニエルはヴィクトリアの手をとって言う。

「少しでもこの婚約の事を前向きに考えてくださって嬉しいです」
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