聖女は断罪する

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33. 王太子の仕事は

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 ジルが一人の自分たちと同年代か少し上の文官を連れてきた。その文官は当時王子付きの文官で、回ってくる仕事の仕訳をしていたという。

「当時、いけない事だとは思ってましたが……。エルシノア様が……その……王太子様の本物の印璽を持っておられて」

陛下の口がぱかっと空いた。

「……当時の王太子様、陛下から上がってくる印璽は全部偽物だったので、……再度こちらで精査して書類提出をしていました。申し訳ありませんでした。私のクビで」

「よくやった」

ヴィヴィアンヌが口を挟む。

「道理でまともな政策が通っていたわけだ。当時の書類は?」

「保管庫に……その、禁書コーナーの方に」

「あ、あの子が管理人か。厳密に管理されている事は疑いないね」

 禁書の管理人はエルフであった。はぐれエルフであり、十代程前の王が拾った子供であった。ヴィヴィアンヌはあの子、と呼ぶがヴィヴィアンヌよりは年上である。
 エルフとしての教育は受けておらず感覚は徹底的に「人」であった。名前は既に『書庫の主』で定着していてヴィヴィアンヌや温室のエミールくらいしか彼の事を『ウィル』と呼ぶ人間はいなかった。

「私は出勤だわ。……近日中にエルシーの所に顔をだすよ。当時の陛下が見てなかった側面を見てそうだからね」

ヴィヴィアンヌは立ち上がる。

「陛下、なにかあったらジルとテオと……エドワード、ライン公爵と話し合ってください。あ、フィールズ侯爵や王弟殿下もアリだと思います、エルシーも。貴方は一人じゃないんです。周りの側近は頼っていいとおもいます。……あと、あの小屋、偶に使わせてもらいますね」

「あ、俺もあそこ使いたい」

テオがヴィヴィアンヌに続いて言う。

「あの小屋だと、副教皇にバレずに元に戻れそう」

テオが笑う。ヴィヴィアンヌは軽く手を振り、一旦シルヴィの家に転移で戻る。料理長が心得て頼んでいた通りのメニューでヴィヴィアンヌの分とエミールの分の朝食をバスケットに用意していた。

「師匠、通学の馬車には?」

「乗るよ。馬車はレイラとのおしゃべりの時間だろ」

レイラは嬉しそうな顔になる。

「今日も師匠、朝から忙しそうだったし」

「それはそれ。レイラ、頼んでたものは出来たかな?」

「ええ。今日はすもも味、浄化の魔法もつかってポーション生成してみました。12本作ったんで」

「じゃ半分はテオの所に持って行くからその時会っておこうか」

レイラは今の痩躯のテオしかしらない。教会関係者なのは知っているが教皇であることも知らない。いつも魔法を使ってから元に戻る前にヴィヴィアンヌの所に来ていたのでレイラはその姿でテオを知っている。

「久しぶりにお会い出来ますね」

レイラはそれも嬉しそうであった。

「ついでにジルにもあっていこうかね、へ……アルバートもいるかもしれない」

レイラは宰相も陛下もプライベートしかしらないのであった。レイラと会わせる時にあの小屋を使おうとヴィヴィアンヌは思っていた。
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