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リリゼットは翌朝、朝食に半分死人のようになった兄とエドアールを見た。二人とも押し黙って濃く淹れた珈琲を飲んでいる。二人の前には柔らかくしたパンとミルクスープが置かれている。押し黙った二人を放置しリリゼットは自分に用意された朝食を黙々と食べている。ジュスティーヌ(姉)やジュリエット(義姉)とは言葉を交わす。今日は兄夫婦の子供たちは別室で朝食をとるようだ。元気いっぱいの子供たちの声は男二人には耐えがたく頭に響くらしい。
「では私は出かけます」
リリゼットが立ち上がると、半死人の二人はひらひらと手を振っている。ダンテス先生はどうするつもりなのかな、とリリゼットは思ったが口には出さない。
学園に到着するとリーゼから手紙が届いている。最近、二人は他愛ない事を手紙に認めやり取りしているのだ。誰が見ても大丈夫な内容で「今日は美味しいパイを食べた」だの「先日よい紅茶を手に入れたので今度お茶会をしましょう」など他愛のないものだったが、今朝の手紙はお昼休みにイネスと一緒に生徒会室に来てと言うものだった。既にイネスにも手紙を書いて渡している模様で、手紙を読んで視線を感じるとイネスがリリゼットを見て頷いて合図をしたのであった。
昼休みに生徒会室に行くと、リーゼは早々にリリゼットに謝った。
「エド叔父さんがごめんなさい。…べろべろに酔った文字で昨日の深夜、『ドルバック家に居る』とだけ書いた手紙が届いて」
リーゼの説明によると学生時代から定期的にリリゼットの実家にエドアールは居続けることがあったらしい。どうも、加護魔法が日常的に使われているので魔力がそこここに感じられるのが心地よくて家に帰らず居続けるらしい、と。
「ご一緒に住んでおられるのですか?」
リリゼットの問いにリーゼは頷いた。
「ええ。王都にいる間は我が家にいるので…。どうもエド叔父さん、日常生活が苦手らしくて。一人暮らしだと生活のペース崩すらしいの」
雑談をしているうちに学園の食堂からランチが運ばれてきた。なぜか5つ運ばれてきたのでリリゼットとイネスが顔を見合わせていると生徒会室に王太子とクレマンが入ってきた。王太子の手には袋が握られている。王太子はそれを侍従に渡す。侍従が奥にある小さなキッチンにそれを持って行った。
「我々もこちらで食べる」
王太子が言い訳のように口にするがリーゼもリリゼットも礼でそれを受ける。イネスも少し遅れて礼をする。クレマンが王太子に目線をおくると、王太子ははっとなって言う。
「堅苦しい事はよい。昼休みも時間はかぎられている。早速始めよう」
そういわれ皆が着席すると、王太子が昼の祈りの言葉を唱え始める。食事前の祈りの言葉はそこにいる人間で一番席次が高いものが唱えるものであった。
「糧に感謝を」
最後の言葉が唱えられ、和やかに昼食が始まった。侍従が王太子に耳打ちをする。
「またか」
王太子は小さく嘆息した。リーゼがにこやかに訪ねる。
「なんの話ですか?」
王太子は面倒くさそうに答える。
「コゼットが毎日弁当を持ってくるんだが………遅効性の媚薬がはいっててな」
リーゼも溜息をついた。
リリゼットは目を白黒していたが、イネスもクレマンも平気な顔であった。イネスもクレマンもリーゼが冷めている事、そして王太子殿下の事を『出来の悪い弟』扱いであることをよく知っていたからだった。クリストフは冷められてるのは認識していないが自分が弟扱いになっていることは認識しているし、婚約が決まった7つの時から一つ下のリーゼに迷惑をかけてきている。そしてそれが当たり前だと思っていた。
「では私は出かけます」
リリゼットが立ち上がると、半死人の二人はひらひらと手を振っている。ダンテス先生はどうするつもりなのかな、とリリゼットは思ったが口には出さない。
学園に到着するとリーゼから手紙が届いている。最近、二人は他愛ない事を手紙に認めやり取りしているのだ。誰が見ても大丈夫な内容で「今日は美味しいパイを食べた」だの「先日よい紅茶を手に入れたので今度お茶会をしましょう」など他愛のないものだったが、今朝の手紙はお昼休みにイネスと一緒に生徒会室に来てと言うものだった。既にイネスにも手紙を書いて渡している模様で、手紙を読んで視線を感じるとイネスがリリゼットを見て頷いて合図をしたのであった。
昼休みに生徒会室に行くと、リーゼは早々にリリゼットに謝った。
「エド叔父さんがごめんなさい。…べろべろに酔った文字で昨日の深夜、『ドルバック家に居る』とだけ書いた手紙が届いて」
リーゼの説明によると学生時代から定期的にリリゼットの実家にエドアールは居続けることがあったらしい。どうも、加護魔法が日常的に使われているので魔力がそこここに感じられるのが心地よくて家に帰らず居続けるらしい、と。
「ご一緒に住んでおられるのですか?」
リリゼットの問いにリーゼは頷いた。
「ええ。王都にいる間は我が家にいるので…。どうもエド叔父さん、日常生活が苦手らしくて。一人暮らしだと生活のペース崩すらしいの」
雑談をしているうちに学園の食堂からランチが運ばれてきた。なぜか5つ運ばれてきたのでリリゼットとイネスが顔を見合わせていると生徒会室に王太子とクレマンが入ってきた。王太子の手には袋が握られている。王太子はそれを侍従に渡す。侍従が奥にある小さなキッチンにそれを持って行った。
「我々もこちらで食べる」
王太子が言い訳のように口にするがリーゼもリリゼットも礼でそれを受ける。イネスも少し遅れて礼をする。クレマンが王太子に目線をおくると、王太子ははっとなって言う。
「堅苦しい事はよい。昼休みも時間はかぎられている。早速始めよう」
そういわれ皆が着席すると、王太子が昼の祈りの言葉を唱え始める。食事前の祈りの言葉はそこにいる人間で一番席次が高いものが唱えるものであった。
「糧に感謝を」
最後の言葉が唱えられ、和やかに昼食が始まった。侍従が王太子に耳打ちをする。
「またか」
王太子は小さく嘆息した。リーゼがにこやかに訪ねる。
「なんの話ですか?」
王太子は面倒くさそうに答える。
「コゼットが毎日弁当を持ってくるんだが………遅効性の媚薬がはいっててな」
リーゼも溜息をついた。
リリゼットは目を白黒していたが、イネスもクレマンも平気な顔であった。イネスもクレマンもリーゼが冷めている事、そして王太子殿下の事を『出来の悪い弟』扱いであることをよく知っていたからだった。クリストフは冷められてるのは認識していないが自分が弟扱いになっていることは認識しているし、婚約が決まった7つの時から一つ下のリーゼに迷惑をかけてきている。そしてそれが当たり前だと思っていた。
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