悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

文字の大きさ
121 / 212
第三章

ジェラール、枯渇

しおりを挟む
 樹の周りには神殿の騎士達が数人いた。聖なる樹で出来た棺桶のような四角い箱に元アレンだった何かを詰める。蠢いてはいるので生きてはいるようだった。この四角い箱の四隅と箱の蓋には聖銀で飾りが着けられている。アンデッドや魔物除けの模様らしい。

 アルはロゼに守護者からの礼を伝えた。

「なんだか薄く張っていた靄を祓ってもらえたのが良かったみたいで。風の精霊にも礼をしたいな」

「そういうときはフロランに頼むといいよ」

ウージェーヌが首と肩をこきこき言わせている。

「エリク……よりジェラールがへばってるか。あるけるか?」

「ゆっくりならな」

ジェラールは地面の上で寝ころんでいる。

「いやぁ、ジェラールの魔力は吸いやすすぎて貰いすぎたか」

そんな事を言っているエリクも疲労の色が濃い。

「しょうがないからいいところに連れてってやる。……守護者殿はフロランと連絡取れるかな」

ウージェーヌはしっかりアルの掌を見ている。アルが訊ねると長すぎないなら大丈夫だというのでフロランに馬車と壺を用意させて持ってこさせる。

「オヤジ、……確かにこの樹にはいいかもな」

「運んで来たら湯も冷めるだろ?」

「たしかにね。……マリアンヌは大人しく寝てる。というか……寝かせている」



 ウージェーヌ、ジェラール、エリク、アルはフロランに連れられて温泉に向かう。エディとロゼは屋敷の方へ戻った。エディはアルにこそっと耳打ちする。

「ちょっと男ばっかでの裸の付き合いはぞっとしねぇ」

ロゼは呆れた顔でエディを見ていた。マリアンヌを心配するクロードもエディ達と戻った。

 温泉ではジェラールが一番効果があったようでかさついた感じになっていたジェラールもつやつやと生気を取り戻していた。

「アル殿下も元気になってますね。ぶっ倒れた時はジェラールレベルでかさついてましたから」

エリクが笑いながら言う。

「とりあえず応急手当はできたな。さっさと帰らないと」

「わかった。馬車には勝手に帰ってもらってくれ。羊皮紙は持ってるから」

エリクが言う。

「飛べるだけの余力があるってことか」

「そう。帰ったらMPポーションもあるだろ?」

エリクはウージェーヌに訊ねる。ウージェーヌは頷いて肯定した。ウージェーヌは馬車に温泉水の入った壺をいくつか積んだ。どうも先ほど使った聖水の入っていた壺らしい。
 馬車には帰るように指示をする。馬車がみえなくなるとエリクは魔法陣に力を流し家に
戻った。

「うわぁ、急に現れられると心臓に悪い」

クロードとフロランが言う。客間だった。

「マリアンヌは?」

「マドレーヌと母さんとおばあ様がついてる」

クロードはエリクに向き直った。

「神官長様、……女の子たちいれた結界解かないままでしたね?」

エリクがやべぇという顔になった。

「女の子たち、持ちませんでしたよ。恥ずかしくて泣いてて」

「すまん」

「ルカがなんとか穴をあけてくれて。そこから濡れた服とか引っ張り出して着替えてもらって。今はルカが忘却の眠りをかけてくれて皆寝てます」

「……ルカありがとう」

エリクがクロードから眼を逸らしルカの方を見る。ルカはあきれ顔だ。

「……あとでなにか贈る」

ルカか口を挟んだ。

「なら淫魔除けのチャームかなにかを」

「わかった。サンキャッチャーで部屋を守れるようにしよう」

「うちの女性たち全員にな」

ウージェーヌが決定と締めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

特技は有効利用しよう。

庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。 …………。 どうしてくれよう……。 婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。 この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

生贄公爵と蛇の王

荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
 妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。 「お願いします、私と結婚してください!」 「はあ?」  幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。  そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。  しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。

レイブン領の面倒姫

庭にハニワ
ファンタジー
兄の学院卒業にかこつけて、初めて王都に行きました。 初対面の人に、いきなり婚約破棄されました。 私はまだ婚約などしていないのですが、ね。 あなた方、いったい何なんですか? 初投稿です。 ヨロシクお願い致します~。

いつか優しく終わらせてあげるために。

イチイ アキラ
恋愛
 初夜の最中。王子は死んだ。  犯人は誰なのか。  妃となった妹を虐げていた姉か。それとも……。  12話くらいからが本編です。そこに至るまでもじっくりお楽しみください。

処理中です...