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第三章
みえる二人
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エリクはふーと息を吐いた。フロランと並んで歩く。
「もしかしてあのさっき来た人苦手ですか?」
「得意とは言い難いな」
フロランは不思議そうだった。
「貴方はそういうの気軽にいなす人かと思ってた」
フロランの不思議そうな顔にエリクは苦笑いで答えた。
「どうにもウマが合わない人間はいるのさ。学園に居た頃は陛下の恋人、あ、本物のね、があいつが原因で別れたりとかあったよ。学園の間だけは本気のつもりの子供の恋愛で俺達がその子の親と話して対処しようと思って見守ってたけど……。あいつは陛下にも平気でずけずけ言ってさ」
ここで図書室に着きふたりはぐるっと図書室を見回す。お互い何も言わず。7冊の本を持ってきた紙で巻く。黒くてところどころ赤かったり桃色だったりする独特の靄が本にまとわりついているのだ。
「紙で巻く時は本の開く方に紙の真ん中を当ててな、一応」
エリクがやってみせながら指示をした。
図書室の中はこの七冊以外に怪しい本はなかった。
「他にもある感じだね、この枚数見ると」
フロランとエリクが色々な部屋を走り回る。使用人の部屋には怪しいものはなかったがアレンやアランが泊まった部屋や食堂、また厨房など雑多な所、雑多な小物に夢魔の痕跡があった。
「あいつら兄弟改造されてたって?」
「うん。呪いとかに耐性が強くてそういう悪いものを運べるように、ね。その辺りを祖父の代から続けてたみたいだね。ただアレンは現伯爵が妻の目を盗んでそうしてたから偽の記憶を沢山植え付けられてるかもしれない。……解明は明日以降だな。アランはあの家では不憫な子扱いだったけど……、家から離れてる間がもっと不憫だったようだよ。乳母に幼児の頃から性的に『仕込まれ』てたみたいだしね。……一、二度アランと遊んだ事ある元令嬢の修道女とか見習いの子なんかの聞き取りだと性技が上手かったらしい」
こんな雑談をしながら本丸のマリアンヌの部屋に着く。マリアンヌは意識を取り戻しているようだった。
「ヒールは良く効いたようだね」
エリクがそう言ってる間にフロランは部屋を見渡す。小物がかなりある。暫く考えていたが母親に声をかける。
「母さん、この紙でいつもの箱折って」
「……いいけど」
ジョアンは不思議そうな顔で箱を折る。
「あと、魔法師団長が来てるよ」
「え。大変。……マリアンヌ、少し外しますね。お義母さま、マドレーヌよろしくお願い」
マドレーヌの祖母とマドレーヌは頷いた。
「マドレーヌ嬢、クッションを多めにメイドに頼んで持ってきてもらっていいかな」
エリクがにこやかに言う。美形のエリクのこういう問いかけに大抵の令嬢は顔を赤くし恥じらったりするがマドレーヌは顔色一つかえない。そう、父親のウージェーヌが同じレベルで美しい分慣れてしまっているのだ。それはマリアンヌも同じだった。
「体を起こせるまで、ヒールをかけるね。どこか熱いとか痛い所があったら教えてね」
エリクはマドレーヌの腹部に癒しの力を這わせる。そして徐々に体の中に力を伸ばしていく。エリクは少し安心したが頭部と腹部はかなり夢魔に侵されていた。頭部、心を侵されているという事はその事しか考えられなくするため、だった。
エリクは『間一髪だったかも』と考えながらマリアンヌの体から夢魔の痕跡を抜いていく。淫魔とはよく言ったものだ、とエリクは自分の中に夢魔の痕跡を溜めている。フロランが精霊になにか言われたようで祖母に持っていた紙で蓋つきの箱を折って貰っている。この間にマドレーヌとメイドは部屋の小テーブルにこんもりとおかれていた。
「あんたが手に入れたそれ、あの箱なら保持できるって。精霊が言ってる」
エリクは試しにその箱に少し『痕跡』を落すと箱の中でそれは蠢いているが箱の外には出られないようなのでマリアンヌの中にあった夢魔の痕跡を全て箱の中に落とした。そして息を吐いた。フロランがそっとその箱に蓋をし、紐で箱を潰さない程度に縛る。
「これは全てアレンにもらったもの?」
エリクがフロランがもっていた箱を見て頷いた。その中に紙でぐるぐる巻きにされている棒状の物と手のひらサイズの日記帳が入っていた。
「それ……は」
クッションを使って体を起こしたマリアンヌは恥じらいと嫌悪の表情だった。
「これはアレンがくれたんだね?」
「ええ。……その日記もそれも、です。日記はその……交換日記で」
マリアンヌはぎゅっと目を瞑る。
「ソレはその……中にいれて着けておいて……自分の事考えててって」
マリアンヌは自分のしていた事を思い出し俯いていた。
「もしかしてあのさっき来た人苦手ですか?」
「得意とは言い難いな」
フロランは不思議そうだった。
「貴方はそういうの気軽にいなす人かと思ってた」
フロランの不思議そうな顔にエリクは苦笑いで答えた。
「どうにもウマが合わない人間はいるのさ。学園に居た頃は陛下の恋人、あ、本物のね、があいつが原因で別れたりとかあったよ。学園の間だけは本気のつもりの子供の恋愛で俺達がその子の親と話して対処しようと思って見守ってたけど……。あいつは陛下にも平気でずけずけ言ってさ」
ここで図書室に着きふたりはぐるっと図書室を見回す。お互い何も言わず。7冊の本を持ってきた紙で巻く。黒くてところどころ赤かったり桃色だったりする独特の靄が本にまとわりついているのだ。
「紙で巻く時は本の開く方に紙の真ん中を当ててな、一応」
エリクがやってみせながら指示をした。
図書室の中はこの七冊以外に怪しい本はなかった。
「他にもある感じだね、この枚数見ると」
フロランとエリクが色々な部屋を走り回る。使用人の部屋には怪しいものはなかったがアレンやアランが泊まった部屋や食堂、また厨房など雑多な所、雑多な小物に夢魔の痕跡があった。
「あいつら兄弟改造されてたって?」
「うん。呪いとかに耐性が強くてそういう悪いものを運べるように、ね。その辺りを祖父の代から続けてたみたいだね。ただアレンは現伯爵が妻の目を盗んでそうしてたから偽の記憶を沢山植え付けられてるかもしれない。……解明は明日以降だな。アランはあの家では不憫な子扱いだったけど……、家から離れてる間がもっと不憫だったようだよ。乳母に幼児の頃から性的に『仕込まれ』てたみたいだしね。……一、二度アランと遊んだ事ある元令嬢の修道女とか見習いの子なんかの聞き取りだと性技が上手かったらしい」
こんな雑談をしながら本丸のマリアンヌの部屋に着く。マリアンヌは意識を取り戻しているようだった。
「ヒールは良く効いたようだね」
エリクがそう言ってる間にフロランは部屋を見渡す。小物がかなりある。暫く考えていたが母親に声をかける。
「母さん、この紙でいつもの箱折って」
「……いいけど」
ジョアンは不思議そうな顔で箱を折る。
「あと、魔法師団長が来てるよ」
「え。大変。……マリアンヌ、少し外しますね。お義母さま、マドレーヌよろしくお願い」
マドレーヌの祖母とマドレーヌは頷いた。
「マドレーヌ嬢、クッションを多めにメイドに頼んで持ってきてもらっていいかな」
エリクがにこやかに言う。美形のエリクのこういう問いかけに大抵の令嬢は顔を赤くし恥じらったりするがマドレーヌは顔色一つかえない。そう、父親のウージェーヌが同じレベルで美しい分慣れてしまっているのだ。それはマリアンヌも同じだった。
「体を起こせるまで、ヒールをかけるね。どこか熱いとか痛い所があったら教えてね」
エリクはマドレーヌの腹部に癒しの力を這わせる。そして徐々に体の中に力を伸ばしていく。エリクは少し安心したが頭部と腹部はかなり夢魔に侵されていた。頭部、心を侵されているという事はその事しか考えられなくするため、だった。
エリクは『間一髪だったかも』と考えながらマリアンヌの体から夢魔の痕跡を抜いていく。淫魔とはよく言ったものだ、とエリクは自分の中に夢魔の痕跡を溜めている。フロランが精霊になにか言われたようで祖母に持っていた紙で蓋つきの箱を折って貰っている。この間にマドレーヌとメイドは部屋の小テーブルにこんもりとおかれていた。
「あんたが手に入れたそれ、あの箱なら保持できるって。精霊が言ってる」
エリクは試しにその箱に少し『痕跡』を落すと箱の中でそれは蠢いているが箱の外には出られないようなのでマリアンヌの中にあった夢魔の痕跡を全て箱の中に落とした。そして息を吐いた。フロランがそっとその箱に蓋をし、紐で箱を潰さない程度に縛る。
「これは全てアレンにもらったもの?」
エリクがフロランがもっていた箱を見て頷いた。その中に紙でぐるぐる巻きにされている棒状の物と手のひらサイズの日記帳が入っていた。
「それ……は」
クッションを使って体を起こしたマリアンヌは恥じらいと嫌悪の表情だった。
「これはアレンがくれたんだね?」
「ええ。……その日記もそれも、です。日記はその……交換日記で」
マリアンヌはぎゅっと目を瞑る。
「ソレはその……中にいれて着けておいて……自分の事考えててって」
マリアンヌは自分のしていた事を思い出し俯いていた。
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